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第15話

 全員の治療を終え、しばらく休んでリアスに体の不調がないことを確認すると、一行はゴーレムが守っていた扉を開け、部屋の中を確認する。部屋の中は明るく、大きな机があった。その上に三冊の書物と小さな袋が無造作に置いてあった。スノシュが書物を手に取って確認する。


「これは…能力書物(スキルブック)か!?」

「わかるの?私は噂でしか聞いたことがないわ」


 リアスとキリニティも別の書物を手に取り、ルナは小さな袋の中を確認する。


「確かに能力書物(スキルブック)のようだ。説明が書いてあるな」

「袋の中には魔法薬(ポーション)、金貨…オー、魔封石もありますネ」


能力書物(スキルブック)は特定の能力を習得、またはLVを上げることができるようね。一度使うと使えなくなるらしいわ。ちなみにこれは【適応】と書いてるわね」

「覚えた能力スキルは先天能力(スキル)扱いらしいな。これは【罠】だ」

「これは【水魔法】だ。魔法まで習得できるのか」

「キリ兄さんにぴったりですネ!もう【水魔法】無しのキリ兄さんはキリ兄さんじゃありまセン」

「ふん、なんだそれは」


「他に目ぼしいものは無さそうね。とりあえず帰ってから分配しましょう」

「ゴーレムの表面の鉱石も持って帰りマス?キリ兄さんが破壊して破片になった部分なら持って帰れそうデス」

「確かに!あの鉱石で武具を作れれば役に立つこと間違いなしだ。さすがルナちゃんしっかりしてるねぇ」

「それはいい案だな」

「もっと褒めてくだサイ!ふるふる」


 ゴーレムと戦った広場で破片を回収する一行。


「これで短剣を作って今まで以上に活躍すればルナちゃんの心もだいぶ傾きそうだねぇ」

手袋(グローブ)の打撃部位にこれをつければ破壊力がだいぶ増しそうデス。スノシュさんの顔もグチャグチャにできますネ」

「引いた。いくらルナちゃんでも今のはさすがに引いた」


「この部屋はさっきの戦いで魔素濃度が高くなってるはずよ。回収してる間に魔石内の魔素を少し補充できると思うわ」

「なんで魔素が濃くなってるってわかるんデス?」

「キリニティがあんなに大量の水を作ったのに、その水が一切残ってないでしょ?【水魔法】が魔素に戻った証拠よ」

「へー!…ん?じゃあ【水魔法】で作った水を飲むとどうなるんデス?」

「普通に作った水は体内で魔素に戻って、体外に放出されていくでしょうね」

「水を補給できるのが【水魔法】の強みだって言ってたようナ…」

「その通りよ。生成した水を魔素に戻さないように作ることもできるの。これを”魔法の固定化”と言うわ。固定化には少し時間がかかるから、特別な狙いがない限り戦闘中は固定化しないのが一般的よ」

「フムフム。…ん?他の魔法でもできるんデス?」

「できるわよ。私の【地魔法】を固定化すれば魔素に戻らない石や土が作れるわ。…今言ってて気付いたけど、さっきのゴーレムには矢じりを固定化してから撃てばよかったわね。どうせ効かなかったでしょうけど、私もまだまだね」

「風とか雷はどうなるんデス?」

「さぁ?能力スキル所有者に聞いてみたらわかるかもしれないわね」

「神聖、光、闇…謎だらけデス」


(もしかしてスギルならわかるカモ?今度聞いてみようカナ)


「こんなところね。そろそろ引き上げるわよ」

「あぁ」

「地上までもうひと頑張りか」

「迷宮を出てからも町まで歩かないとですネ。足が棒になりそうデス」


 一行が広間から出ると一人の男が広間に現れた。スギルである。


(このゴーレムの鉱石、ちょっと貰おうかな。他の冒険者も取りにくるかもしれないから、足一本分だけ…)


 ゴーレムの足を【空間魔法】で別空間にしまうと一行が広間に戻ってきた。慌てて光学迷彩ステルスで姿を消すスギル。


「ルナちゃん、お宝忘れるとか笑えないよー」

「ごめんなサイ!ゴーレムの破片を集める時に置いて、そのままでした…ってアレ!?」

「ゴーレムの足が消えてるわ」

「これも富の迷宮(ウェルスラビリンス)の謎の一つ…なのか?」


(うん、それがいい。そういうことにしておこう)




 富の迷宮(ウェルスラビリンス)最下層で何者かが会話をしている。


「B5Fのゴーレムを突破したやつがついに現れたねー」

「そうだな。なかなか見応えのある戦いだった」

「あのパーティ、また来るといいなー」

「楽しみが一つ増えたな。気長に待とう。時間はいくらでもある」


 彼らは何者なのか。スギルですら知らない謎の存在は多数いるのかもしれない。




 迷宮から無事帰還した一行は隣町で1泊した後、歩いてタストの町に帰った。ギルドに長い間貼られていたB5Fの完成地図納品の依頼もついでに受け、報酬を受け取った。キリニティはレンタル期限前に能力スキルを返却し、その夜は約束通り皆で祝杯を挙げた。


「カンパーイ!」


 ルナの乾杯で始まった祝宴だったが、冒険を共にした三人はある共通の疑問を抱いていた。


「なんでレンタル屋の宣伝をした子供がいるんだ」

「キリ兄さん、子供じゃないデス。ワタシのかわいい弟、モティなんデス!」

「…呼ばれて強引に連れてこられました」

「あなた…たしかワイズ君じゃなかった?ギルドの依頼こなしてるわよね?」


 リアスの言葉にワイズの表情がぱーっと明るくなる。


「はい!僕はワイズです!僕の名前はワイ――」

「――モティ、お姉ちゃんがお魚の骨取ってあげるね」

「…は、はい」


 何かを察した二人。不機嫌そうなスノシュが口を挟む。


「それより問題はこいつだ。【隠密】能力スキル持ちの怪しい奴をここに呼んだのは誰だよ」


 ワイズの隣には、スギルが笑顔で座っていた。


「俺はワイ…モティに招待されて来たんですけどお邪魔でした?」

「邪魔じゃねぇと思ってんのか?【隠密】能力スキルは空気まで読めなくなっちまうんだな」

「以前、スギルさんにお酒を奢る約束をしてて、それがまだだったのでちょうどいいなと思って。勝手に呼んですみません。僕が悪いんです」

「モティは謝らなくていいのヨ。スノシュさん?グチャグチャになりたいんデス?」

「うっ…だって、これは祝杯だよね?関係ない人がいるのはどうなのかなーと…」

「ン?関係ナイ?ワタシとモティが…?一心同体であるモティが関係…ナイ…?」

「あっ…いやっ…」


 ただならぬ迫力に押しつぶされそうになり、言葉がでないスノシュ。他のメンバーも目がイッてるルナを止める勇気はなかった。この危機的状況を収められるのは一人しかいないと考えたスギルが【伝心】でワイズに話しかける。


『ワイズ、俺だ。スギルだ。説明している時間はない。このままでは祝杯が献杯になってしまう!早くルナを止めてくれ!』

『えっ?スギルさんの声?わ、わかりました。やってみます!』


 拳を強く握りしめ近づくルナ、青ざめた表情で冷や汗を流すスノシュ。


「お、お姉ちゃん!このパスタ美味しいけど、お姉ちゃんのパスタにはさすがに敵わないね」


 ズキュウウウン!


「久しぶりデス…その響き…。そう、アイアムお姉ちゃんデス!お姉ちゃんがお皿に取ってあげるネ!」

「う、うん、お願い、お姉ちゃん」


 ズキュウウウン!


『これで平和は保たれた。君の犠牲は無駄にはしない』

『ぎ、犠牲ってなんですか!?』


 ルナは皿に取り分けたパスタをフォークに絡めてワイズの口に運ぶ。


「ハイ、モティ、あーん」

「え、いや…」


『諦めろワイズ』


「…ぁ…あ…あーん」

「ちゃんとモグモグするんだヨ?美味しいネー」


 ペリペティア王国では15歳で成人とされる。彼は12歳で、今年13歳を迎える。


『この歳になってこんなことを…』

『よくやったワイズ』

『頭がどうにかなりそうでした…可愛がられるだとか、愛されるだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてありません。もっと恐ろしいものの片鱗を味わいました…』


 その後も凌辱され続けるワイズに感謝しつつも助けることのできないスノシュは、ルナを除く仲間と今回の冒険を振り返りながら酒を酌み交わした。スギルはその空間と酒を存分に楽しんでいる。




「ところでキリ兄、能力書物(スキルブック)の分配はどうする?ルナちゃんは魔封石でいいって言ってたよな」

「そうね。キリニティ、あなたが最初に決めるべきよ」

「そうだな。俺はやはり【水魔法】にする」

「それがいい。上手く使いこなしてたからな。あんな使い方もできるなんて【水魔法】のことを見くびっていたぜ」

「魔法は貴重で有用、魔法能力(スキル)を所有していないのなら尚更。当然の選択だわ」

「スノシュは【適応】と【罠】どっちにするんだ」

「俺はタイプ的に【罠】の方が合ってるかな。【適応】もリアスの方が恩恵が大きいだろう」

「そうね。私もその方がいいと思うわ」


 キリニティは盃に入っている酒を飲み干してから再び話し出した。


「…今回は本当に助かった。二人ともありがとう。俺一人じゃ成し遂げられなかった」

「なんだよ、キリ兄、改まって。酔いが回ってきたか?」

「そうよ。困ってる時は助け合う。冒険者の常識よ。冒険者じゃなくても、そうあるべきだわ…」


 キリニティにはリアスの想い、強い願いが聞こえたような気がした。


「リアス!」

「な、何?」 

「俺と…いや…、俺は…この国で一番の冒険者を目指す…!」

「…そう。いい目標ね。応援するわ」

「あぁ、その名を世界に轟かせるほど、強く、頼られる存在になってみせる」

「ますます男らしさに磨きがかかるわね」

「そうだ。だから、それができたら……」


 キリニティは息を落ち着かせてから言葉を続けた。


「革命軍の将軍を任せてくれないか」

「――!!…そんなこと考えてたのね。…でも…、ありがとう」


(感謝するのはこっちの方だ。俺と出会ってくれてありがとう。…革命が成功したら、その時こそ堂々と言おう…)


 スノシュはその光景を温かく見守り、微笑みながら酒を一口飲んだ。この祝宴は日が変わっても終わることはなかった。




 後日、能力書物(スキルブック)を使用した彼らは新たな力を手に入れた。


<名前>スノシュ

<種族能力(スキル)>適応(LV1/D)

<覚醒能力(スキル)>気配察知(-/-)

<先天能力(スキル)>短剣格闘術(LV2/B)

<先天能力(スキル)>罠(LV1/D)


【LV0】単純罠の発見、識別、解除、設置ができる

【LV1】連動罠の発見、識別、解除、設置ができる


単純罠(落とし穴やトラバサミ等の罠本体と作動機構が同一の場所に設置されているもの)

連動罠(作動機構と罠本体が別の場所に設置されているもの)


<名前>リアス

<種族能力(スキル)>適応(LV3/B)

<覚醒能力(スキル)>地魔法(LV1/E)

<先天能力(スキル)>弓術(LV1/B)

<先天能力(スキル)>減速魔法(-/-)


・適応能力(スキル)

【LV0】先天能力(スキル)の才能がGにならない

【LV1】所有能力(スキル)のうち一つだけ、才能が1段階伸びる

【LV2】所有能力(スキル)のうち一つだけ、能力スキルレベルが1段階上がる

【LV3】全ての所有能力(スキル)の才能が1段階伸びる(適応能力(スキル)は除く)


<名前>キリニティ

<種族能力(スキル)>適応(LV1/E)

<覚醒能力(スキル)>水耐性貫通(LV1/F)

<先天能力(スキル)>斧術(LV2/C)

<先天能力(スキル)>水魔法(LV0/A)


・水魔法能力(スキル)

【LV0】魔素を水に変換できない、または少量の水しか出せない




 さらに後日、ギルド内での会話。


「キリ兄、水魔法LV0だったって本当か?」

「ぐっ、なぜそれを…」

「リアスから聞いたぜ。王国一の冒険者への道は遠そうだな、はっはっは」

「いいじゃない。才能はAなのよね?訓練すればすぐ上がるわよ」

「そ、その通りだ」

「じゃあ訓練付き合うぜ。ほら、この樽を水いっぱいにするところから」

「あ、あぁ、わかった」


 キリニティは樽に向かって手をかざした。


水塊鎚ウォーターハンマー!」


 手のひら程度の大きさの水の塊が樽にぽとりと落ちた。


「あーはっは!あのゴーレムを倒した魔法とは思えねー!」

「ふっ…うふふ」

「くっ…!リアスまで…!」


 今回も楽しいレンタルだった。やっぱり魔法能力(スキル)は強い。魔素さえあれば他の能力スキルとは比べ物にならない程の強さを発揮する。ソロだったらもっと時間はかかっただろうけど、攻略はできていたかもしれない。次のお客さんはどんな人だろう。

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― 新着の感想 ―
[良い点] リアスとキリニティの人間性がとても魅力的です。今後の2人の関係が楽しみです! [一言] 更新が楽しみです。Twitterの企画も随時チェックしますね!
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