第11話
「ところでパーティはどうするんデス?」
「俺はいつもソロだ」
「エッ?パーティでも誰も勝てないのにソロなんて絶対無理ですヨ!私の仲間を紹介しマス」
「おい、待て」
ルナはキリニティの制止を聞かず、少し時間が経ってからスノシュとリアスを連れてきた。
「よっ、キリ兄、ルナちゃんから話は聞いた。ソロ専なのは知ってるが今回は相手が悪いだろう。手伝うよ」
「スノシュ、お前か」
「迷宮に【気配察知】は便利だぜ。もちろん財宝は山分けな」
<名前>スノシュ
<種族能力>適応(LV1/D)
<覚醒能力>気配察知(-/-)
<先天能力>短剣格闘術(LV2/B)
「私も手伝うわ。属性魔法が効かないゴーレムでも減速魔法は効くかもしれない」
<名前>リアス
<種族能力>適応(LV2/B)
<覚醒能力>地魔法(LV1/F)
<先天能力>弓術(LV1/C)
<先天能力>減速魔法(-/-)
「リアス…すまん、恩に着る」
「成功したら酒場で祝杯でもあげましょう」
(意外とあっさり受け入れてくれましたネ。これで一安心デス)
「ところで能力をレンタルしたんだって?あの胡散臭い貼り紙本当だったんだな」
ルナが不機嫌そうにスノシュを睨む。
「あぁ、【水魔法】が使えるようになったようだ」
「【水魔法】!?一番使えない魔法じゃないか」
「一般的にはそう言われてるわね。でも水をぶつけて敵の体勢を崩したり、撒いて足場を悪くしたり、霧をかけて視界を悪くしたり、圧力をかけた水を操作して切ったりすることもできるらしいわ。それに冒険中に常に水を補給できるのは【水魔法】にしかない強みね」
「その通りだ。魔法は使い方次第だ」
「それにしてももっといい能力があったんじゃないか?やっぱり胡散臭いな。まぁ、無いよりはいいか」
「ところで、もちろんルナちゃんも一緒に行くんだよね?」
「エッ、私もデス?」
「その方が男女のバランスがいいじゃないか。ね?ルナちゃん」
「そのバランス、冒険に関係ありマス?」
「お前も来い」
「エェッ!?キリ兄さんまで?うーん、まぁ、言い出しっぺですし、わかりましたヨ」
(キリ兄さん、ソロで行こうとしてたのに結構強引ですネ)
「明後日の午前9時、輸送屋の前に集合でどうだ?魔石を買って魔法をいろいろ試しておきたい」
「わかったわ」
「了解」
「ハーイ」
後日、各自準備をして輸送屋の前に集まる。ルナは期待に胸を膨らませていた。
「ワタシ、輸送屋さん初めてなんですよネ」
「へぇ、ルナちゃん初めてか。ここのグリフォンは乗員を除いて二人までしか乗れない。俺は慣れてるから一緒に乗ろうね」
「ルナ、一緒に乗るわ」
「リアス、お願いネ」
「ありゃ、スルーかよ…」
【懐柔】系能力でグリフォンを手懐けている乗員の指示に従い、全員がグリフォンの背中に付けてある鞍に乗った。
「しっかり鞍と自分の体を固定するのよ」
「わかりマシタ。落ちたら怪我じゃ済まなそうですネ」
鞍についている革のベルトで下半身を固定し、鞍に固定されている持ち手を握ったことを乗員が確認する。確認が取れると乗員もグリフォンに乗り、手綱を握った。
「行き先はどちらですか?」
「富の迷宮まで頼む」
「かしこまりました」
グリフォンが大きくゆっくりと翼を羽ばたき、徐々に地面から離れていく。ある程度の高度に達すると目的地に向かい進みだした。
「高いけど思ったより怖くないですネ。どれくらいで着くんデス?」
「1時間程度かしら。歩いたら食事、休憩込みで8時間程度かかる距離ね。疲れたら隣町で休憩してから行きましょう」
「そんなに違うんですネ」
隣町で休憩後、富の迷宮についた一行は輸送屋へ料金を支払い、軽食を取ることにした。
「昼食にはまだ早いけど迷宮内での食事はできるだけ回避した方がいいわ」
「その通りだ。地図は持ってきたからB5Fまでは順調に進めば1~2時間程だろう」
「問題はその先か」
「あぁ。しかし、未完成だがB5Fの地図は買ってきた。ゴーレムに遭遇したという冒険者の話も聞いているからだいたいの予測はつく。地図は随時更新しながら進む」
「ハイ!財宝と名誉と祝杯が待っていマス。ワタシ達なら必ず達成できマス!」
(ルナちゃんの鼓舞、あんまり縁起よくないんだけどな)
「皆準備はいい?先頭はスノシュ、【気配察知】しながら罠にも気を付けて。最後尾はキリニティ、後方の警戒は任せるわ。私とルナは前方と後方の警戒補助に加え、壁、床、天井等も確認しながら進むわよ。探索済みの階層でも油断しないように」
「あぁ」
「今日も頼りになるねぇ」
「頑張りマス!」
一行は迷宮に入ると慎重に進んでいった。一階の途中でスノシュが足を止め、小声で話す。
「この通路の角を曲がった方向から、こちらに向かう気配がある」
「待ち伏せて迎撃しましょう。皆、配置について」
大人三人が並べるほどの幅の通路でスノシュとキリニティが前衛に立ち、リアスは弓矢を準備する。
「前衛のお二人の脚を強化しますネ」
ルナが手をかざすと【補助魔法】が発動し、身体能力が向上する。
(足音が聞こえてきた。……おそらくゴブリン…3…いや、4体か…)
スノシュは手や指の動作で小さな魔物が4体程度いることを全員に伝える。
(来るぞ)
予測通り、ゴブリンが姿を現した。
「はっ!」
スノシュが先頭のゴブリンを横蹴りで蹴り飛ばし、壁に叩きつけるとリアスの放った矢がその頭を貫く。
「うおぉぉぉ!」
それに一瞬目を奪われたゴブリン達にキリニティが斧で切りかかり、一匹を切り伏せる。が、その後隙を狙ってゴブリンが剣を振り下ろす。
「伊達流 流薙斧!!」
キリニティはゴブリンの方向へ両刃の斧の側面を向け、剣撃を防ぎつつ受け流す。返す斧でゴブリンの首を薙ぎ払った。
「ギェッ…!」
残った一匹のゴブリンにいつの間にかスノシュが距離を詰めていた。ゴブリンの膝を踵で踏み込むように蹴り、その足で続けざまに素早く剣を持つ手を蹴り飛ばす。ゴブリンの脚は本来曲がらない方向に曲がり、剣は吹き飛んだ。すぐに背後に回り込み片手で胴を掴み、短剣で首を切る。
「ギィ…ィエッ…」
首から血を吹き出すゴブリンを離すと同時に背中に掌底を打ち、壁に叩きつける。ゴブリンは血で壁を染めながら地面に倒れた。10秒にも満たない出来事だった。
「キリ兄さんすごいですネ!一瞬デシタ!」
「伊達流斧術の前にはゴブリンなど無力だ」
「ソロでやってるだけあるねぇ。ルナちゃん、魔法のおかげで動きやすかったよ。やっぱ俺とルナちゃんと同じで【補助魔法】と近接技は相性が抜群だね」
「目立たない【補助魔法】を褒めてくれるところだけはスノシュさんのいいところデス」
「だけはいらないんだよなぁ」
「魔素は温存できたわね。戦利品がないなら各自返り血を拭いて」
「もし怪我をしたら教えてくださいネ。自然治癒力強化の魔法と傷薬で治療しマス。【神聖魔法】や魔法薬と違って即効性があるわけじゃないですケド」
ルナは【補助魔法】LV1を所有、自然治癒力強化および弱化を使いこなすことができる。
【LV0】対象の身体能力の一部を強化できる
【LV1】補助魔法(身体能力全身強化および弱化、五感強化および弱化、武具の硬化および軟化、耐性および弱点付与(物理+8属性)、自然治癒力強化および弱化)のいずれか一つを使いこなせる
「わかった。助かる」
「わざと怪我しちゃおうかなぁ」
「その場合は弱化しますネ」
「げっ、いつまでも傷が治らないって恐ろしい…」
「さぁ、隊形を戻すわよ」
その後も大芋虫、歩行茸、大蛙等の魔物に遭遇するも適切に対処して順調に進む一行。B3Fの長い通路でリアスが異変に気付く。
「待って。ちょっとこの壁調べていいかしら」
「お?隠し扉か?お宝だといいねぇ。とりあえず生物の気配はないな」
石の壁をくまなく調べていると一箇所だけ石が動くところがあった。
「これね。開けるわよ」
石を押すと壁の一部が天井にゆっくりと吸い込まれていくように開いた。
「松明を使って確認しよう」
冒険者が多い洞窟や迷宮等では、探索済みの通路や部屋に照明を設置する依頼があり、探索済みの場所にはある程度の明かりがあることがほとんどである。そのため、隠し部屋や未開地等の未探索の場所は暗い場合が多い。
松明に火をつけ、足を踏み入れずに中を確認すると、6畳程の小さな部屋の奥に一つの宝箱がポツンと置かれていた。
「この配置は危険だ」
「えぇ、罠があるかもしれないわね」
「逆に貴重なお宝ってことかもな…俺が行く」
「私はこっちの通路を警戒するわ。キリニティは反対側を警戒、ルナはスノシュをサポートして」
「ハイ!」
スノシュは部屋の中に危険がないかを確認しながら宝箱の方へ進む。宝箱の前に到達すると宝箱とその周辺を念入りに確認する。
「ルナちゃん、脚に強化魔法をかけてくれる?」
「ハイ、罠があった時に逃げやすくなるようにですネ。身体強化魔法!」
「ありがとう。じゃあ開けるぞ」
部屋の外にいる3人はスノシュの言葉に小さく頷く。
カチッ
宝箱を開けると部屋の壁に複数の穴が開いた。15cm間隔で並んだ横5列の穴は入り口から宝箱の方まで続いており、その全てから同時に矢が放たれた。
「スノシュさん!」




