9.幼児のお風呂や着替えを見せていた教育番組の意義とは
「やだ! やだってば! いーやー!!」
肩に担ぎ上げたヴィラが、陸に揚げられたシャケみたいにビチビチしている。
「いてっ、うるさい静かにしろ。こんなケモノ臭させてる奴を人里になんて連れて行けるかっつうの!」
「じゃあここで留守番してる! おまえだけ行ってくればいいんだ!」
体は軽いから落とす心配はないが、いかんせん力だけは強い。
家の犬を狂犬病の予防接種に連れて行く時も、よくこんな風に暴れたっけ。中型犬だから、こいつよりはまだ楽に運べたけど。
それにしても……ええい尻尾を顔に巻きつけるな! 見えん! しゃべれん!
やはりこのままここにこいつを置いて、俺一人で行った方が楽だろうか。
しかし、この場にあった作業小屋がそれなりの大きさだったってことは、寝泊まりもしていたのだろう。
つまり人里まではそれなりの距離がある、と考えられる。
どれだけ行けば人里に行き着けるのかも確実ではないのに、こいつをここに放り出しておいて、俺一人で動き回って、そしてまたここまで戻ってくる? いったい何日かかる? そもそも迷わずここまで戻ってこれるのか?
そんなの非効率を通り越して非現実的すぎる。
そんな事をつらつら考えていたら、いつのまにか少女の身体からは力が抜けて、おとなしくなっていた。
うねうねと尻尾を動かして、小さくイヤイヤしてくる。
「やっぱり離れるのやだぁ……いっしょに飛んで行ったらダメなのか? だってアイツももうどこかへ行っちゃって、近くにはいないでしょ……?」
……あのな、そもそもの、ドラゴンの姿では騒ぎになるから人になって、人の姿で行くなら身体をきれいにしなきゃって前提を、全部まるっとすっ飛ばしてるんじゃないよ。
しかしまあ、それはそれとして。
もちろん飛べるなら、それが一番手っ取り早いんだけど、ねぇ。
ちらりと目を川の上流の方向に向ける。
鬱蒼とした梢に遮られて見えないが、この森の向こうには、あの赤いドラゴンに追いかけ回された盆地を囲む山々がすぐに見えるはずだ。
アイツが襲ってきた理由は、縄張り争いとかではなくヴィラ個人の掃討らしい。そしてその目的は、未だ果たされていない。
そんな状況でアイツが“もうどこかへ行っちゃって”いるなんて、そんな事があるだろうか。
さらに言えば、こいつらドラゴンの移動速度と、そこから推測できる活動範囲を考えたら、ここだって全く安全な場所なんかではない。早急に移動したほうがいい、それも飛ばずに歩いて。
俺は巻き付いているヴィラの尻尾を解いて、首を振って見せた。
「歩いて人里に出るしかないんだ。俺たち二人で一緒に」
「ううぅ……」
ここはとっくに人の手が入っている領域であり、ヴィラの目的地もやはり人の住む街の向こうなのだ。順当に考えるなら、街道を通って行った方が早い。というか、街道を避けて旅をする方が逆に難しいだろう。
つまり何にせよ、他の人間との接触は避けられないわけで――。
「――だから諦めて、身体を洗え」
「ぐるるるるるうぅ……」
※
そんなやり取りをしているうちに、川のほとりに着いた。
晴れ上がった薄緑の空の下、川は昨日と違ってきれいに澄んでいた。
岸近くの川底には、イワナくらいの大きさの魚が泳ぐのが見える。
焼いて食ったら美味いだろうなと思ったとたんに、腹の虫が鳴った。
だが残念なことに俺には魚を取る道具も知識もない。こんなところで無駄な体力を使ってないで、人里へ向かう用意を急いだ方が建設的だろう。
「よし、じゃあ昨日と違って岩を抱いたり全身つかったりする必要は無いから、腰まで……いや、足まで入ればいいから。それくらいなら平気だろ?」
そう言いながらヴィラを肩から下ろすと、なんだか殺されそうな目で威嚇された。
思わず背筋がぞくりとする。
こいつの殺気は本物だ。小さくなってもさすがはドラゴンか。
視線が本気で怖い、見られているだけで周囲の情景が歪んでくるように思える。
なんとか気にしてないフリをした。
「ええと……髪と背中は洗ってあげるから、前は自分で洗ってくれる? 全身を水で濡らしてからこれを、こうやってこすりつけて」
「……なんだこの灰色の粉は」
「そのまま灰だけど。昨日の小屋を燃やしたやつ」
石鹸の洗浄成分というのは要するにアルカリで、灰を水に浸してアルカリを抽出した灰汁も、石鹸と同様に強い洗浄力を発揮する――ってのは中学でpHを学ぶ過程でちょろっと習った。
しかし灰汁は強アルカリでそのままだとお肌に良くないから、人体に使うにはかなり薄めなければならないらしい。
じゃあわざわざ抽出しないで灰のままでも使えるんじゃね? となったわけだ。
正しいかどうかは知らんけど、男は度胸、何でも試してみるのさ。
「じぶんでやれぇ!」
「わぷっ! やめろ、繋がってもいない俺の心を読むなっての! だから投げるなって!」
「なんでこんな灰なんて塗らなきゃいけないんだ!!」
「大丈夫だから、ちゃんと軽く篩っておいたし、毒でもなんでもないから。ほら、こうやって……」
「まったく……意味わかんないっ!!」
灰を少量の水で練るしぐさをしてみせてから手渡すと、ヴィラは諦めたような捨てゼリフを残して、水に入っていった。
前傾姿勢でバランスを取りながら、尻尾だけが別の生き物みたいに水面から少し浮いてゆらゆら揺れている。
そんなに水に触れるのがイヤなのかね。
膝ほどのところで立ち止まり、振り向いてこちらに上目遣いの暗い目を向ける。
うつむいて垂れた前髪が顔を覆い、隙間から赤く見える瞳だけが光を放っていた。陽光の元でなければちょっと、いやかなりホラーチックな光景だ。
「うう……咬みちぎってやりたい……」
「どこを? やめて!? そのかっこで言われると、冗談に聞こえないから!」
返事は、刺すような視線だった。両手を上げてみせる。
「はいはい、冗談ではないと。そんなに水を嫌がるのは、誇りの問題だっけ?」
「そうだぞ。水の中って、本当に何もわからないんだから……」
ぶつぶつ言いつつも少女は全身を水で濡らし、身体を洗い始めた。
「……おまえも一度、目も耳も尻尾も、羽すらも塞がれて好き勝手されてみたらいいんだ。少しは自尊心という言葉の意味を理解できると思うぞ」
「昨日も今日も必要だからやっているだけで、別にお前を好き勝手したかったわけじゃないからね。そこら辺は理解してくれ。頼むから」
俺も裸足になってズボンを膝上までめくり、ヴィラの髪を洗ってやるために川に足を進める。水は昨日ほどには冷たくなかった。
両手で水を掬ってヴィラの髪に含ませつつ、背後からおとがいに軽く手を添えて上体を反らせ、顔を上に向けさせる。
「はい、目ぇ閉じて。灰が目に入ったら痛いからね」
「うぅ……べつに尻尾あるから視界くらい……いいもん」
「いや、だから別にね?」
ああもう、勝手に俺の視界でも見とけよ!
俺はそれ以上の有無は言わせずに、髪を洗い始めた。
ヴィラの髪は一見サラサラだが、それは細かい砂やら何かやらでコーティングされた結果であり、指を櫛入れてみると結構ザラザラと引っ掛かる。それを解すように、水で練った灰をそっと馴染ませていく。目に入れないように気を使いながら。
……洞窟の中で出会った最初の時に、髪から光る粒が零れてたけど、まさかあれって燐光に照らし出された砂粒じゃないよな?
いやまあ、いいんだけど。
ヴィラもそれ以降は何も言わず、静かに目を閉じて為されるがままになっていた。
とはいえ、手の先から流れ込んでくる少女の思考まで静かだったかといえば、そういうわけでは決してなかった。
もっとも、思ったより気持ちがいいとか、本当にわたしがこんな事をしてていいのかとか、単語や感情の断片が曖昧に行きかっているだけで、何か主体的に意味のある潮流は存在しなかったが。
無意識なのか、段々と垂れ下がっていく尻尾が水面に触れる度に、ぴくんと跳ね上がって、また徐々に力なく垂れ下がっていく。そしてまた、ぴくん。
見ていてちょっと面白い光景だったが、ヘタに笑って気を散らしてしまわないように、黙って洗髪に専念することにした。
……しかし、どれだけ灰水を馴染ませようとしても全然指滑り良くならないんですが。なんだろうこの髪は。
生まれて初めての洗髪なのはわかるけど、灰がもう全部水に流れて無くなってしまいそうな勢いだ。抽出してない灰自体のアルカリ分って意外と弱いのかもな、これはもっと持ってきておけばよかったか。
「あのな? そういえば、なんだけど……」
頑固な髪が何とか手梳きできるようになってきた頃、ヴィラの思考もようやく方向性を持って明確化してきたのか、ふっと薄く目を開いて俺を見上げてきた。
ぼんやり気味に言葉を紡ぐ。
「……わたしはもう、おまえさえ居てくれるなら、世界の情勢とか、滅亡とか、世界が敵だとか、全部どうでもいいんだけど……おまえはどうするんだ?」
「はあ? っつか、どうって、なにが? あ、まだ目は閉じててくれよ?」
「うん。――えーと、悪魔って、やっぱりにんげんどもを征服して支配下に置いて、思うさまに操りたいんでしょ?」
「はいぃ?」
いきなり最初に言っていた前提条件を崩してきたヴィラに焦って、思わず指先が滑りかける。
というか、俺がこの世界を支配したいって下りはどこから来たんだ。
おっと、あやうく目の周りを灰水だらけにするところだった。
「あのな、ヴィラ。俺は突然お前に連れてこられて、この世界の事なんて何も知らないんだ。それは分かるよな?」
「うん」
「で、なにも知らない相手を、いきなり欲しいってなるか?」
「……ん? わたしはおまえを見た瞬間に、“欲しい!”ってなったけど?」
「いや……お前の場合は、必要に迫られたからであって……」
「じゃあなんで?」
「……ん?」
何が“なんで”なのかと訝る間もなく、ヴィラは目を瞑ったまま、尻尾をぶんと振って、その勢いのままに俺に正対してきた。
尻尾の“触覚”があるから、視覚を使わなくとも動くのに不都合はないらしい。やっぱりちょっと便利だな、この尻尾。
そしてヴィラはへにょりと首をかしげて。
「なんで悪魔は必ず人間の姿で召喚されるんだ? 我々“------”がわざわざ人化式を用意しなきゃならないくらいに」
「いや、そんなこと俺に聞かれても……」
「つまりそれって、悪魔はそれだけ人界に執着があるって事じゃないのか? 現に、おまえだってこんなに人界に潜りこみたがってるでしょ」
いやいや、そもそもその状況で、なんで喚び出されているのが悪魔ではなく普通の人間であると考えられないのかね。
……しかし、つまるところ。
やっぱり居るんですね、俺以外にもこの世界に召喚されてる人たちが。
「ま、まあ、そこら辺は良くは分からんけどさ。ともかく、俺自身としては、世界征服にはこれっぽっちも興味ありませんから」
「そうなのか?」
「あと、お前らの召喚式についてだけど、それで喚び出されてくるのって、多分みんなただの人間だぞ。俺みたいな、な?」
「……そして結局、そこに持っていきたいのか」
目を閉じたまま器用に眉をあげて、呆れたように、はふんと息をつくヴィラ。
「それならあの完全な精霊無効技術は何なんだ? おまえがただの人間なら、今ここにいるわけないでしょ。アイツの探知炎に飲み込まれたんだぞ!」
「そんなの俺に聞かれても知らんって。異世界の人間は精霊サマとやらにでも嫌われてるんじゃないのか」
「それなら、魔界には海を陸地に変えたり、太陽を地上に出現させて森一つを一瞬で消滅させたり、空の向こうの星まで行ったりする、ものすごい制御術式があるという話も、全部嘘なのか?」
「あ、いや……全部可能っちゃ、可能だけど――」
埋め立てに、水爆に、ロケット技術って所か。よく知ってんなこいつ。
「――でも、それは魔法でも精霊でもない。機械を使って、ものすごい人数と期間をかけてやるものだぞ?」
「ふうん?」
俺の「ぶっちゃけ個人じゃ無理ですよ」というニュアンスをどう受け取ったのか、ヴィラはわが意を得たりとばかりに満足げに頷く。
「なるほど! 悪魔は“きかい”という使い魔を使役して、そいつらに精霊を使役させるんだな!」
……はぁ。
思わずため息が出る。
どこまで行っても悪魔ってところは曲がんないのな。
もう違うってツっこむのもめんどくさくなってきた……それでいいわもう。
いやまて、それじゃ機械を召喚すればいいとか、その技術教えろって言われるのがオチだ。釘だけは刺しておかないとまずい。
「あのな、この世界には機械なんて存在しないんだろ? そもそも俺は学生っていう、修行中の身なんだよ。大した知識は持ってないから、教えるのだってちょっと無理だからな?」
「んー……まあ、そういうのはこれから徐々にでいいの。とりあえずは、おまえはわたしの身体を好き勝手していればいいんだから」
「言い方っ!!」
叫んで、有無を言わさず少女をしゃがみこませて、頭の灰をわしゃわしゃと洗い落とした。
「やっ、やっ! へんなとこまさぐるなぁ!」
「まさぐってない!! ヘンな所でもない! 髪濯いでるだけだけでしょうが!!」
※
なんとかそうやって、ヴィラの全身を綺麗にしてみた訳だが。
次の問題は当然のように、すぐにやってきた。
まあ、なんとなく想像はついてたワケだが……。
「“ふく”って、付ける意味がわからないんだけど。なんで悪魔や人間は、こんな薄っぺらいヒラヒラを身に付けたがるんだ?」
……まさか嫌がるより先に、服の存在意義への異議申し立てから始まるとは思ってもみなかった。
なにごとにもいちいち理由付けしないと納得できないタチなのだろうか。めんどくさい奴だなまったく。
「あー、元々は環境に対応するためだったんだろうな。寒さとか、枝に引っ掛けてのケガとか。お前だって人型になった今は鱗も無いし、傷つきやすそうな肌だろ」
「うん、やわらかくておいしそうだと思う。知ってるか、イノシシも毛だけ焼くと、中はこんな感じなんだ。結構おいしいぞ?」
「お、おう……」
自分の腕を見て「おいしく焼く火力の調整が難しいんだー」と物欲しそうに舌なめずりする少女という、ハタから見てもぞっとしない図だったので、説明を続けることで丁重にスルーさせてもらう事にした。
「……ええと、話を続けるけど、それがそのうち、着てる奴の方が強い偉いってなって、みんなこぞって着るようになって、今では着てるのが当然になったんじゃないかな」
「なるほど、孔雀の羽とか鹿の角と同じようなモノか。自分を立派に見せるための手段なんだな」
「今だって実用性がメインではあるとは思うんだけどね……」
適当に作った理由で言いくるめてみたが、意外にすんなり通じたようだ。
若干ヘンな誤解が混じった気がしないでもないが、あまり気にしない事にする。
「まあなんにせよ、納得いったならよかった。だから、人間に見られたいなら、服は我慢して着てくれ」
「そういう理由なら理解も評価もできる。しょうがないけど、水に入るよりは全然マシだな。おまえの望みどおりに飾られてやる」
はい、付けて。と少女は全裸で偉そうに、無い胸を張る。
とはいえ、服は俺の一着分だけなので、なんとか分けて二人分の体を覆い隠すしかない。
俺はTシャツとズボン。足元は靴下の上に、そこら辺の木から剥いだ――ヴィラに爪で剥いでもらった――木の皮でも巻きつけて、簡易靴にすればいいか。日中ともなればそんなに寒くもないし、十分だろう。
ヴィラにはフランネルのシャツを羽織らせて擬似裸ワイシャツに――じゃなくて、ええと、腰の辺りを木のツルなんかで結わえてワンピースっぽく見えることを期待しようかな、なんて。
「んー、これ知覚の邪魔になるだけだから、やっぱりいらない」
なんて思ってたら、いきなりの裸族宣言なんですがそれは……。
「だって! 羽も尻尾も隠れちゃうでしょ!」
「……だからさぁ?」
いやいやと身を捩りつつじりじりと逃げ退る全裸の少女に、ひきつった半笑いでシャツを持って両手で迫る不審者というこの構図。
うーん、シャレにならん。
俺の理性が、はやくしろっ!! と叫ぶ。
間にあわなくなってもしらんぞー!
「ええとな、ヴィラ? 人の居るとこまで出たら、どっちにしろ全部隠す必要があるんだけど、分かってる? ツノも羽も尻尾も全部」
「でも……じゃ、じゃあ、人の領域に着いたらでいいでしょ!」
「もうここは人の領域だって、昨夜言ってたの、お前じゃなかったっけ?」
「う? うううぅぅ……ぐるるるるるうぅぅぅーっ!」
そんな可愛く唸られても恐くなかったので、無理やり着せておくことにした。
ちょうどいい木のツルが無かったので、ただの裸ワイシャツモドキになってしまったが、まあそこは我慢しよう。
つか、前ボタンは掛けてほしいんですけど……。
※
まあ、そして、靴だ。
裸足では可哀想だからと、俺のスニーカーを履いてもらおうと手渡すと、鼻を近づけにおいを嗅ぐドラゴンの化身。
「……これはなんだ? これで足を覆うのか……うえぇ」
顔をしかめやがった。
「犬か! 嗅ぐなよ! 何だその顔。臭いのかフレーメン反応なのかどっちだ!!」
「おまえこそこんなの付けろなんて! わたしににおい付けする気満々でしょ!」
「ねえよ!! ただの足の保護だよ!」
「なんでだ! おまえはわたしににおい付けしない気なの!?」
「されたいのか、されたくないのか、どっちだよ!?」
まったくもう、とかぶちぶちいいながら履く少女。
あれだけ色々言っておいて履くのかよ!
こっちがまったくもうだわ! 履くなら始めから文句言わずに履けっつうの。
ごたごたしつつも、これで何とか全部着せ終わった。
安堵のため息と共に、着付けを確認する。
「見た目はともかく、人として大事なところは隠せた……よな?」
「なんで疑問系なんだ?」
「“人として”以外の部分がロクに隠れてないからだよ! ツノとか尻尾とか特にその辺りがな!!」
とりあえず“人外として”ではなく“人として”の、黒塗りとかぼかし処理とかモザイク修正が入りそうな箇所はどうにか隠せたんだから、今はこれでいいとしておこう。
これ以上はどうしようもないんだから、これでいいの!
人の気も知ってくれない少女は、興味深そうに自分の姿を確認すると「それで、これらはわたしのものか?」と、問うてきた。
「ああ? あげるのはいいけど、どうせ後でもう少しマシな格好に着替えなきゃならないからね?」
「そっかー……」
嫌がってたくせに、なんでそんなに残念そうなんだろう。
結局、出発できた頃には、陽はほぼ真上になっていた。
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