3話 僕ら、捕まる
フルチンで宿から出てしまった僕らは、二歩ほど歩いてすぐに取り押さえられた。
当たり前である。
そして、街の治安を守る兵士に拘束され、牢獄に放り込まれた。
当たり前である。
「──おいっ、ここから出せ! 俺は勇者だぞ!」
説得力皆無の怒号が響く牢獄は最悪の環境だ。
いや、水もあってベッドも二つあって、トイレも窓もあって椅子もあった。
そこそこ快適だ。人道的な処遇だ。
だから、そういう物理的な環境ではない。
兵士たちの、何ともいえない冷たい目に晒されているせいだ。
ついでに本当に肌寒いです。
「裸で街をうろつく勇者がいて堪るか!!」
「勇者だというのなら、証拠のひとつでも見せてみろ」
「全く、常識というものがないのか」
兵士たちが牢獄の外から言葉を浴びせてくる。
ごもっともすぎて、ぐうの音も出ない。
「裸の勇者が証明などできるはずがないだろう!!」
リオスターは怒り過ぎて我を忘れているらしい。
そもそも、裸の勇者ってなんだ。
そしてそれを、人は逆切れって言うんだぞ。
僕は一番奥の隅っこで膝を抱えていることしかできない。
なんて情けないんだ。
でも、リオスターのように大声で主張したって仕方がない。
僕はパーティを追放された身だし、主張できるような地位も称号も持っていない。
詰んだ。最悪だ。裸でうろついた罪で処されたくない。
嫌だ。そんなまぬけ罪は嫌だ。それなら窃盗の方がずっとマシだ。
「酔っ払いか? こんな昼間から……」
「上に報告するまでもないな。身元引受人を募るか?」
「旅人だろ。宿に通達でもするか」
騒ぐリオスターを無視して、兵士たちが交わす言葉が聞こえてくる。
身元引受人。
まぁ、宿前で随分と大騒ぎになったから、メンバーだって気が付いているはずだ。
でも迎えに来るとしても、僕じゃない。リオスターだけだ。
どうしよう。
身元を証明するものも、責任をもって僕を引き取ってくれる人も、この街にはいない。
このままじゃ、本当に不名誉極まりない罪で裁かれかねない。
嫌だ。そんな人生最悪だ。どうしてくれるんだリオスター。
「最悪だな! なんて扱いだ!」
ガシャンッと鉄格子を叩いたリオスターは、とうとう怒って腕を組んだ。
どうして、仁王立ちなんだ。
ここでその男らしさはいったい何なんだ。
勇気EXだったりするのか、この人。
鉄格子越しに見張りを睨みつけるリオスターの姿は勇ましい。
裸でさえなければ、確かに勇者の風格だった。
逞しい二の腕も引き締まった腰もガッシリとした脚も格好良い。
裸でさえなければ。
しばらくして、牢屋の外が騒がしくなった。
パーティメンバーが到着したらしい。