17話 僕ら、ドラゴン討伐へ
何がどうしてこうなった。
ひとまず僕とリオスターは、討伐対象のドラゴンが住むという森までやってきた。
既に帰りたい。
「どうやら、既に何人もの討伐隊や冒険者がやられているそうだな!」
どうして、今ここで、それを言うのか。
デリカシーってものがないのか。なかったな。
「先人の犠牲があったからこそ、こうして武器が手に入ったわけだ。感謝しなければな!」
感謝の仕方が斜め上すぎて、ちょっと僕にはついていけない。
元気いっぱいのリオスターは剣とランタンを手にしている。
僕は、杖が一本とローブ。こんなお情けみたいな装備でも、ないよりはいい。ないよりは。
「……やっぱりゴブリンくらいの方がいいんじゃ……」
「はっはっは! 男に二言はない!」
生きるか死ぬかみたいな人だ。そうだ、こういうやつだった。
うっそうとした森を進むと、犠牲となった先人たちが作った獣道が見えてきた。
他の動物どころか、魔物の姿もない。森はシンと静まり返っていた。
え。不吉。
「いいか、今回のドラゴンの特性は光に弱く、音に敏感だ! 静かに進むぞ!!」
「しっ! 静かにしてくれよっ」
「もちろんだとも!」
デフォで声がデカいんだよ。
「しかし、ドラゴンに有効な装備のほとんどは失われたと言っていたなぁ」
まだ無駄口をたたくのか。
僕は少し迷ってから、小声で返した。
「最初は強い武器を討伐隊に持たせたって……」
「ああ、そう言っていたな! 装備と共に人が帰らなくなり、次第に有効な武器も品薄になったと」
なるほどなぁと頷いたリオスターは、不意に足を止めた。
正面には、ぽっかりと口を開いた洞窟。
右斜めには、洞窟の上へと続く斜面。
え、急な二択。
「うむ。さて、どうする?」
「え、えぇっとー……上、から、かな?」
光に弱いドラゴンの寝床は、たぶん洞窟が一番確かだろうけど。
だからといって、真正面からこの貧弱装備で突撃する気にならない。
何ならドラゴンが一匹だという保証もないじゃないか。巣だったらどうしてくれるんだ。
「なるほど、上だな!」
元気よく頷いたリオスターは、そのまま前へと進み始めた。
え?
「えっ!? なんでそっち──」
「む? エルドは上だろう? そちらは任せたぞ!」
思わず追いかけようとした僕は、途端に動けなくなった。
だって。
いや、だって。
二択じゃなくて、二手に分かれるなんて聞いてない!
途方に暮れる僕を置いて、リオスターはずんずんと洞窟内へと消えていった。




