14話 僕、始末されかける
「……俺には何とも言えん」
戦士ケビンは眉を寄せながら重々しく首を振った。
対して、リオスターも重々しく頷いた。
待てよ。お前それ本当に信託と仲間の話なんだよな?
「パーティに戻ってはいただけないということですか」
聖女アーリィが口を挟んだ。
すごいな。さすがロリ顔巨乳だよ。関係ないけど。
「男に二言はない。エルドがパーティから抜けた以上、俺も戻る気はないぞ!」
僕は自分で抜けたわけじゃないんだけどな。
はあ、とため息をついたアーリィが僕を見た。
正直に言うと、ここまでこじれてしまったら、僕を嘘でもいいから仲間に入れ直せばいいのに。
そうしたくない理由が神託だというのなら、現時点で勇者がパーティを抜けているのだからおじゃんだ。
「エルドさんがパーティに戻らない以上、リオスターさんも戻らないと」
「そうだとも!」
「つまり、エルドさんがパーティに戻れなくなったら、何の足枷もなくなると」
「そうだとも! ……ん?」
んん?
さすがのリオスターも違和感に気が付いたらしい。
僕も思わず首を傾げてしまった。
「分かりました。では──」
アーリィがゆっくりと僕を示した。
「──エルドさんが旅を続けられなくなればいいと、そういうことです」
あまりの物騒さに僕は目を見開いた。
いやいやそんな。え、本気なのか、この人。
後ずさると、リオスターが僕を振り返った。
そして、すぐにアーリィを見る。
「待てアーリィ! エルドに何かするつもりかッ!?」
「そう聞こえましたか」
「君はまるで神託に憑りつかれているようだな!! みんな来てくれ!」
リオスターが大声を上げると、あちらこちらからガサガサと音がした。
見れば、早朝にもかかわらず村人たちが農具──もとい武器を手に僕らを取り込んでいた。
ひぇっ。
「黙って聞いてりゃあ、おかしなことばっか言いやがって」
「リオスターさんが困ってんだろ」
「エルドさんに何かするつもりか」
「そこの旅人さん、ちょっとおかしいんじゃねえかい?」
村の男たちが口々に責め立てると、戦士と女剣士は戸惑いを見せた。
だが、アーリィは、聖女アーリィだけは意に介した様子もない。
「──神託は絶対です。神託に従うためには、不要なものを取り除くことも厭いません」
アーリィの腕が持ち上がる。
あ、だめだ。本気だ。
僕は足裏から一気に寒気と震えに襲われた。
アーリィは僕と違って、魔法を使う際に詠唱を必要としない。
攻撃系の魔法はほとんど使えないけど、応用力はすさまじい。
「待ってアーリィ! そこまでしなくていいだろ!?」
叫んだのは、女剣士ダリルだった。
だけど、アーリィは聞いてもいない。
僕の足元の地面がボコボコと割れて盛り上がってくる。
あ、だめだもう。
そう思った時。
「やめろぉおおおっ!!!」
眉を寄せて必死に叫んだリオスターがアーリィとの距離を詰める。
それと同時に僕の周囲を取り囲むように、大量の蔦が地面から出てきた。
その蔦のひとつに引っ掛かったリオスターが盛大に転んで──
「──ッ!?」
「うぉおおっ!?」
ズササーッと全裸で地面を滑った。
そして、アーリィの足元で止まる。
ふわり。
アーリィの可憐な白いスカートが揺れた。
「うむ!! 黒とは意外だな!!」
最悪最低なリオスターの発言の直後、アーリィの悲鳴が響き渡った。




