表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はい、こちらスグル錬金店です  作者: 萱野 雲樹
11/13

香油作り その2

はい、予定通り6日に投稿出来ました(すっとぼけ)

香油作りはもう1話くらいで終わりそうですかねぇ。

 あの後、正気に戻った俺は再びスタンダル通りのアリエッタおばちゃんの店へと向かった。事情を話して、追加のアブーラの実を仕入れる必要があったためである。

 ドン引きしているおばちゃんとの交渉の結果、他のお客さん用にもある程度残さないといけないということで、追加で9籠分のアブーラの実を購入することに成功。

 営業終了後におばちゃんの息子さんと一緒に店へと配達してくれるということで、手間賃を含めた料金を支払いそのままふらついた足取りで別の店へと向かう。

 向かった先はリリーナ園芸店という花屋だ。もしやと思い、店に在庫にあったリデルベルグ周辺に自生している、“リデルリリー”という花から香り付け用の精油を抽出してみたのだが、これも非常に極僅かの量しか採ることが出来ず、全然足りないことが判明したため急遽大量に仕入れる必要が出てきたのだ。


「……すんませーん」

「はーい! ――えっと、大丈夫ですか? 何やら、死にそうな顔色ですけど」

「……あ、うん。気にしないでくれ。――すまない、ちょっと、相談なんだが」

「は、はぁ」


 店主のリリーナさんは若い女性だった。多分、同じくらいの年齢と思われる。アリスやクレアとは違った、大人の雰囲気で一瞬見惚れそうになったが、なんとか意識を切り替える。

 俺は今、香油作りを行おうとしていること、香り付け用の花を探していること、なんとか格安で花を買わせてほしいことを伝えたのだが、リリーナさんの反応はやっぱりというか渋いものだった。


「――なるほど。失礼ですが、香油作りの経験は?」

「今回が初めてだ……正直、無謀だったと後悔しているところだよ」

「……でしょう、ねぇ」


 リリーナさんが頬に手を当ててため息をつく。なんとか営業スマイルは崩さないものの、呆れているという様子がひしひしと感じられる。

 正直、俺も他人事の話だったら同じ感想になると思う。むしろ馬鹿じゃねーのってはっきりと言う。


「一応、サンプルの方を拝見させていただいてもよろしいですか?」

「ん、ああ……まだ混ぜてないオイルと精油で良かったら」


 おばちゃんとの交渉の為に持ち込んでいたスクワランオイルとリデルリリーの花から抽出した精油が入った小瓶をリリーナさんに渡す。

 何度か光にかざしてみたり、小瓶を振ったりしていたのだが、精油が入った小瓶の蓋を開いた瞬間リリーナさんの目の色が変わる。


「――これは、驚きました。この僅かな量で、これだけしっかりと香る精油は見たことがありません。本当に香油作りは初めてでいらっしゃいますか? 一体どのようにして? 他にも作る予定はおありでしょうか? 一回に作れる量は? 販売を検討している店はおありですか? 価格はいかほどで? 詳しくお聞かせください。今、直ぐに!」

「ちょっ、ちょちょちょちょ!?」


 ズイっと顔を近づいてくるリリーナさんの勢いというか、迫力というか、半端じゃない圧力に思わず後ずさりしてしまう。

 リリーナさん、美人だし良い匂いがするしで心臓がバクバクいってるのだが、これは果たして恥ずかしさからなのだろうか、それとも恐怖からなのだろうか……。


「――し、失礼しました」

「いや、うん。驚いただけだから。気にしないでください」


 リリーナさんも我に返ったのか、離れてくれた。本音を言うとちょっと残念だと思わなくもないが、心の準備がいるな、これは。


「正直に申しますと、これほどの上質なものは見たことがありません。私も趣味で香油を作ることはあるのですが……どのようにしてお作りになられたのですか?」

「ああ、俺は錬金術師なんで。……まぁ錬金術で、ちゃちゃっと」

「……今、見せていただいても?」


 リリーナさんが店に並べている花から一株取り、手渡してくる。見覚えのある、リデルリリーの花だ。

 俺はリデルリリーを受け取り、いつものように錬金術のスキルを発動する。リデルリリーから成分が抽出され、リリーナさんの手の甲へと抽出された成分が零れ落ちる。

 リリーナさんはほんの一滴にも満たない精油を、愛おしそうに眺め、ゆっくりと嗅ぐと頬を赤くする。


「――はぅ。ず、ずるい。錬金術なんてそんな……悔しいよぉ。こんなの、こんなの、反則っ!」

「あ、あのー?」

「……はっ! し、失礼しました。そ、それでは具体的なお話をしたいのですが――“先生”としては、どのくらいの量をお求めでしょうか?」

「先生!?」


 いきなりどうしたんだこの人は!?


「あの、先生って……何?」

「? これだけのものをお作りになるのですから、先生とお呼びするのは当然だと思いますけど」

「いやいや、勘弁してよ」

「そうはいきません。私、リリーナは貴方のファンになってしまいましたので」

「……えぇ」


 ダメだ、この人。美人だけどどっかズレちゃってる系の人だったわ。残念美人ってやつだわ。

 

「とりあえず、いくつか持ってきますのでお待ちくださいね、先生」

「……アッハイ」


 店の奥に小走りで向かうリリーナさんに俺は訂正する気も起きなかった。

 なんというか、この世界に来てから女難というか、まともな女性少なくない? リーネちゃんとおばちゃんくらいじゃない?

 だって暗殺者にポンコツに変人が追加されたんだぜ? ……いや、少ないな。サンプルが少ないだけだ。そうに違いない。そうだと願いたい、切実に。


「お待たせしました、先生。一先ず、これだけあれば十分ではないかと」

「はぁ、どう……も!?」


 戻ってきたリリーナさんの様子に、絶句。

 確かに声はしたのだが、姿が見えない。というのも、天上にまで届くそうなほどの量の花束を両手で抱えるだけ抱えてもはや花の巨人となっていのだ。一体彼女のどこにそんな剛腕があるというのだろうか?

 よいしょ、というカワイイ声とは裏腹にこれでもかという量の花束の山が目の前へと置かれる。山頂付近の花束が雪崩れて来たら埋まってしまう気がする。

 山の横からリリーナさんが顔をのぞかせるのだが、そこでもまた絶句。リリーナさんは背中に大きな籠を背負っており、そこにもこれでもかというほど花束が詰め込まれているのだ。

 ……なんだこれは!?


「えっと、リリーナさん? これは――」

「はい! 香油作りに適した花を()()()()()()()()()()()()()()ご用意してみました」

「30!?それも10!?」


 30種類10束、つまりこれは300個の花束ってことか!?


「あ、こちらはトップノート、一番香るものですね。ミドルノートとラストノート用のものもご用意しますので、もう少しお待ちください」

「待って待って待って!?」


 これ以上増えるとか冗談じゃない! トップノート? ミドルノート? なにそれ呪文か何か!?

 間違いない、ガチ勢だ! この人暴走するタイプのガチ勢だ!!


「一旦、一旦落ち着くてくれ! 説明をしてくれぇぇぇぇぇ!?」












「……重ね重ね、失礼いたしました。私、香油のことになるとどうにも自分を抑えることが出来ない性分でして」

「……うん、気を付けた方が良いよ。人によっては死ぬからな、本当に気を付けてくれな?」


 結局、追加で持ってきた花束をが積まれた時点で花束の山が決壊。下敷きにされたところを正気に戻ったリリーナさんから救出された。

 生まれて初めて花で溺れるかと思った。花に殺されるかと思った。異世界で死因:花なんて笑い話も良いところだ。


「それで、この、なんだっけ? 色々持ってきてくれたやつ。こんなには要らないんだけど」

「……ああ、そういえば先生は初めて香油をお作りになられるとおっしゃっていましたね。それでは、ご説明します」

「お、お手柔らかに」


 すっかり忘れていた、という顔のリリーナさんが手近は花束を1個手に取る。


「香油、というのは文字通り香る油です。その用途はいくつかございますが、主な使用用途はやはり身に付けることです。髪や手首、足首などですね。部屋の中を香油の香りで満たして楽しむという方もいらっしゃいます」

「ほうほう」

「当然なのですが、その香りは複雑なものです。一種類だけではなく、いくつもの香りの調和でなりたっています」

「ほ、ほほう?」


 当然と言われても、全くそんなこと知りませんでしたとは言い出せない空気だ。

 俺の顔色から察したのか、リリーナさんはクスクスと上品に笑って説明を続ける。


「一番最初に香るものをトップノート。次に香るものをミドルノート。最後に香るものをラストノートとお覚えください。大まかに、調合する精油が揮発(きはつ)する時間が異なるものを、油に溶け込ませる香油となります」

「3種類も、使うのか?」

「一概にはなんとも……2種類のものもありますし、5種類以上使用する場合もあります。――香油作りは、大変奥が深いのですよ?」


 どうやら、とんでもなく深い沼へ足を突っ込んでしまったらしい。正直、今直ぐ引き返してなかったことにしたいが……

 チラリとリリーナさんの顔を見る。こちらの視線に気付くとニッコリ微笑み返してくれるのだが、圧力がすっごいのよ。

 なんていうか、首元に蛇が巻き付いてくるようなイメージ。逃げられない、逃がしてくれない。そんな圧力がすっごいのよ。


「とりあえず、私が作成した配合表を差し上げますので、こちらを参考にしてみてください」

「は!? いやそれは……ありがたいけど、でも良いのか? 俺売り物作ろうとしてるんだけど。その、権利とかそういうの……」

「あ、大丈夫ですよ。――実はこれ、全部()()()なんですよ」

「失敗作?」

「……はい。完成図をイメージして作ってみたので、精油の調合は問題ないと思うのですが、油の方が問題でして。動物の油に馴染ませて作っているのですが、油の匂いが濃すぎて調和がとれなかったんです」

「あー、そりゃ獣臭そ「ですが!!」うおぉう!?」


 またもやいきなり顔を近づけてくるのでエビ反り状態で極力回避。前触れなく一気にテンションが上がるから怖いわこの人!


「先生のお持ちになったこの油、スクワランオイルでしたか? これならば調和がとれるのではないかと! ないかと!! 先生なら、私の理想とする香油を実現出来るんじゃないかと!?」

「分かった! 分かったから! いや本当自重してくれない!? 年頃の娘がやって良い言動超えてるからな! 襲われても文句言えないからなお前!?」


 興奮している残念美人(リリーナ)さんの顔面を掴んで無理やり引き剥がすことにする。

 見てくれに騙されそうだったが、こいつは超が付くほどの変人だ。変態だ! 正直お近づきになりたくない!


「原材料もこちらでご用意いたしますので! なにとぞ! なにとぞぉ!!」

「分かったよ! なんなら完成したサンプルでもなんでもくれてやるから離れやがれぇ!!」

次話は今日か、明日には投稿出来ると思います。

リリーナさん……もの凄い濃いキャラになっちゃったけど、モブ(予定)なんですよね。

当初の予定ではもっとすんなり進む筈だったのに、どうしてこうなった。


コメント、ブクマ等々がありますと書き続ける意欲がムラムラ湧きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ