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悪業淫女《バッドカルマ・ビッチ》  作者: 稲村某(@inamurabow)
【第一部】第一章 チュートリアル編・戦い方を知ろう!
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⑧ローレライの流儀、強襲のホーリィ。

うーん、戦闘描写ばっかで全然エロくない。仕方ないからホーリィの衣装、裸エプロンかスク水にでもしようか?



 荒れ果てて、ひび割れ乾き赤土が剥き出しになった大地に、幾つもの穴が空いていた。それらは人の手により掘られた穴で、魔導の容赦無い熱波や冷気から少しでも身を隠す為のもの……。


 「……なぁ、お前……火、持ってるか?」

 「……あるよ、ほれ……」


 そうした遮蔽壕に身を寄せ合うようにして、身を隠していた二人の男が、懐から防水布に包まれた火種の呪符の小札と紙巻き煙草を渡し合いながら、やがて紫煙を燻らせ始める。


 「……ゲンコツ(近衛兵の蔑称・鉄拳制裁が日常的な宗主国ではこう呼ばれる)の見廻りまでは……こーやって……」

 「……ああ、自由に出来るがな……なぁ、知ってっか?」


 目の前を漂う煙に視線を漂わせつつ、片方の男が相方に語り掛ける。


 二人とも徴用された一般兵で、特徴の無い簡素な胴鎧以外は身に付けておらず、傍らに置かれた盾と剣も使い込まれた様子もない。専任兵士と違って徴用兵達は所謂(いわゆる)【人の壁】であって、敵側の突撃に備えて配備されているに過ぎず、過度な期待もされてはいない。


 「……この呪符もよ……魔導が使える娘っ子の手仕事で作られてるけどよ……俺ら男はすべからく魔導が使えねぇよな……何でだろうな?」

 「……さぁな。……月のモンの有る無しで決められてんじゃねぇか?」

 「そうかもな……じゃ、女が魔導使えるってのは、ヒステリーの延長だってことか?」


 下らない話を続けながら、時折頭を少しだけ遮蔽壕から出して周囲を見ては、近付く羽根付きの兜を被った近衛兵が来ないかと見回し、引っ込めては煙を肺に吸い込み、ゆるゆると吐き出していく。



 その時、煙の動きを眺めていた兵士の片方が、僅かに有った紫煙のたなびきが無くなり、真っ直ぐになったのを見て取り、


 「……あ? 妙だな……風が……」

 「ん? ……風? ……そういや……確かに……、……ッ!?」


 手元から周囲を見回し異変に気付いた二人は、慌てて煙草の火を消しながら、傍らに投げ出していた兜と装備をかき集めつつ、


 「おいっ!! 何か変だぞ!! ……もしかして敵の魔導の前触れかもしれねぇ!!」


 周囲の遮蔽壕に隠れている同僚達に声を掛け、慌てて警戒をするものの、視界に怪しい動きは見られない。


 杞憂かと思い始めたその瞬間、予想だにしない方向から恐ろしい存在が彼等に襲い掛かったのだった。



 ✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 最初は曇り空に低く垂れ込めていた雲の一部が徐々に下がり始め、地表すれすれまで近付いて来た事に端を発した。


 遮蔽壕に身を隠す彼等の後方には、帝国陣内に斬り込む為の騎兵隊が待機し、蹂躙する時を今や遅しと待っていたのだが、まさか襲う側を逆に襲うような存在が間近に迫っているとは、その場の誰も考えていなかった。



 数に勝る宗主国騎兵隊は訓練された軍馬を用いて、電撃的侵攻を得意としてきた存在であり、やや使い古された戦法でありながらも、この戦場でも有効な兵隊であることに変わりはない。


 だが、馬は不整地には向かず、前方に歩兵と遮蔽壕を展開するこの戦場では、騎兵隊が進む為には十分に打ち合わせてから突撃のタイミングを計らないと、効果を上げられずに破綻してしまう恐れも常にあるのだ。


 その為、幾つかの分隊に別れた騎兵隊が菱形の陣形を取り、散開しながら進みつつやじりのような陣形へと変えていき、一気に敵陣へと斬り込む予定であった。だが……突撃開始直前の陣地に薄く霧が立ち込めて視界不良になり、仕方無く陣形の立て直しを行っていたその時に、怪異が突然現れたのである。


 霧の中に、朧気(おぼろげ)に浮かび上がった何かが、音も立てずに騎兵隊の頭上から真後ろへと回り込み、ゆっくりと近付いていく。


 ……それは全身に灰色の装甲板をちりばめ、巨大なヒレと尾をゆっくりと捻りながら力強く大気を泳ぐように進む、異形の空中戦艦だった。無音のまま、待機する騎兵隊の直ぐ傍まで空中を滑るように進み、霧を濃くする為に鼻から潮を噴き出し、自らを隠していく。そして……





✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 【……愛しの我が娘達!! お仕事の時間よ!! 宗主国の傀儡(かいらい)共に私達の戦争の流儀を見せてあげなさい!!】


 「「了解、艦長っ!!」」


 腹部乗船室の側面ハッチをバネ仕掛けで解放し、備え付けのハーネスで身体を固定した、セルリィを始めとする強襲戦艦付きの魔導師の娘達が、結い上げた髪を宙に舞わせながら、練り込んだ魔導の呪式を一斉に解放させる。


 呪式が駆動され、装甲板がチリチリと音を立てる中、対地上用魔導が地表に放射されて辺り一面を極熱地獄に変えていく。


 偶然、遮蔽壕に身を隠していた幸運な一部の兵士達は辛くも難を逃れたものの、慌てて飛び出してしまった連中や、放射範囲に居た騎兵隊はその強烈な熱波に身を焦がし、苦しみながら息絶えていった。


 放射の瞬間、ローレライは艦体から魔導の炎を吹き出しつつ急ターンしながら旋回し、後進する姿勢を維持しながら後部ハッチを開放、そこから一塊りになったホーリィ達が弾き出されるように騎兵隊のど真ん中に降下し、


 「くううううぅ~ッ、堪んねぇぜ~!! フワァッ、てすんだよッ!! まるで【あれ】ん時そのまんまだぜッ!! グランマの強襲ってのは最高だろぉ!? なぁ、クリシュナよッ!?」

 「……そ、そうですね……(ま、毎回こうなんですかっ!? ……少しだけ漏らしたかも……)」


 既に双頭剣に【フシダラ】【フツツカ】を変化させていたホーリィが、片手で愛剣を掴みながら、異形の騎馬に跨がりつつ傍らのクリシュナへと叫ぶ。


 彼女達が跨がっているのは、馬ではなかった。


 猛禽類特有の大きな眼と鋭い嘴、そして白と茶色の羽毛を生やしたその姿は、どう見ても鷹にしか見えないのだが、その身体には大空を舞う為の翼は無かった。代わりに尾羽根が有るべき所から馬のように胴が伸び、前足と同じように鈎爪のある後ろ足を持った奇怪な四つ足の生き物である。


 その鷹馬とでも呼ぶべき生物に鞍を載せ、嘴と目元を覆う金属製の面当てから伸びた手綱を握り締め、ホーリィ達は右往左往する宗主国の騎兵隊目掛け、


 「うおおおおおおおッ!! ホーリィ様のお通りだぜぇ!! 死にてぇ奴から前に出やがれぇッ!!」


 あぶみに立ち上がりながら、雄叫びを上げつつ振りかざした双頭剣を両手に持ち、目の前に迫った騎兵隊の一騎に猛然と斬り掛かった。


 ざしゅしゅっ、と勢い良く振りかぶられた双頭剣が通り抜け、騎兵の首と片腕を呆気なく切り落とす。そのまま下から振り上げて、更にもう一騎の騎兵の兜の覗き穴から頭蓋を断ち割り、瞬く間に二騎を容易く斬り倒してしまう。


 ホーリィ達の突撃に陣形を乱された騎兵隊は、不意を突かれて統制が取れぬまま遮蔽壕へと押しやられてしまい、壕に落下し脚を折る馬に押し潰される兵士や、背後から斬り込まれ落馬する騎兵の挙げる悲鳴が辺りに木霊し、阿鼻叫喚の様相を呈していった……。



……いや、そもそもスク水がエロいかどうかは、読者によって違うぞ? そんな感じで次回も、もっさりと戦闘描写ばかりです。

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