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悪業淫女《バッドカルマ・ビッチ》  作者: 稲村某(@inamurabow)
第二章 恵利の世界とローレライ配属。
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⑨異界の闘士。

日々投稿。城内を探索する一同の前に現れたのは?



 城内に侵入したローレライ強襲班は、幾つかの組に別れて王家捜索を開始。


 ホーリィ率いる強襲班は、恵利と翔馬を始めとした面々で、その構成は多種雑多。


 パルテナ率いる山猫族の元騎兵隊は、彼女の氏族で構成され、統一された軽装歩兵であるが行動は統率力が高く、無駄な捜索を避けて逸早く城内深部目指して進んでいく。


 そして氏族長のゴロレフが率いるホブゴブリン隊は、やはり同じ種族で統一されていた。彼等は屈強な肉体を誇り、一対一ならば普人種相手に遅れを取るような事はない。だが、その動きは決して迅速とはいかず、広大で複雑な城内を捜索するような目的に向いていない種族である事は否めない為、敢えて動き回らずに相手の出方を窺う事にしたようだ。



 こうして図らずも三つに分裂した強襲班は、各々で城内を探索する事となったのである。




✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳




 「……ちょっと待って……」


 恵利は小振りなポーチから糧食に付属していたスプーンを右手で取り出すと、曲がり角から床際に差し出し、映り込む景色を観察する。


 「……居ないかな、たぶん」


 そう呟きながら左手を上げて前に倒し、後続に合図を送る。背後から滑るように鎖鉄が進み、壁際に据えられた柱の陰に身を隠し、そのまま次の角で監視をする。


 「まどろっこしいなぁ~、別に敵が居たらぶっ殺せばいーじゃねーか?」


 腕組みしながらずかずかと歩くホーリィに苦笑いしつつ、恵利は翔馬の気配を背後に感じながら、鎖鉄の近くまで足音を忍ばせながら進んでいく。


 「……居ないですね。この部屋は使われていないようです」


 クリシュナが扉を開けて中を窺い、静かに閉めて報告する。同様に通路に面した扉を確認して、やはり王族は見当たらず、無言のまま各自は鎖鉄の傍へと移動していく。


 「……この先は謁見の間らしい。広い通路の先に扉が有るが、城の中央にあるようだから、その先に離宮が続いている可能性が高いかもな……」


 鎖鉄の言葉に僅かに頷きながら、ホーリィが進む。その先は今まで見てきた扉とは明らかに趣の違う豪奢で巨大な扉が一同を阻み、行き止まりになっていた。




 ……だが、彼女は感じていた。


 (……なんだ? この感じは……首の後ろがチリチリするみてーだ……)


 今まで感じた事の無い緊張感に、ホーリィは気付けば双剣を握る手に汗をかいていた。いや、それだけでは無い。【ミダラ】と【フツツカ】の夫婦剣が僅かに震え、手の中から何かを訴えようとしているかのように反応しているのだ。



 「ま~、強そうな奴が居たら、願ったりなんだがな~♪」


 そう言いながら、扉の前に立った彼女は意を決して、厚く大きな扉のノブに手を当てて、開こうと指先に力を籠める。そして……


 「誰か居ますか~? 居ませんね~? 面倒くせぇなぁ!! どおりゃあ~ッ!!」


 どがんッ!! と勢いを付けて振り上げた足が扉を捉え、蝶番を弾き飛ばしつつ乱暴に蹴破られて飛んで行く。


 「……前に、こんな景色を見た事があるような……デジャヴかなぁ……?」


 こめかみをもみもみしながら、有り得ない頭痛を和らげようとする恵利だったが、激しく弾き飛ばされた筈の扉が落下せず、中空に停止している光景を眼にし、意識が硬直する。



 「……激しいなぁ! ドアノックする割りにマナーが酷いって言うか……」


 そう語りながら、()()()()()()()()()()()()()()()払い、壁に叩き付けて粉砕させた人影が言葉を紡ぐ。


 「……なぁ、そう思うだろ? 【笑いガンマン】さん?」

 【wwwwww マジワロタ wwwwww おにゃのこ山盛り wwwww】



 そこには二人の兵士が居た。だが……その姿は異質。


 「……取り敢えず、自己紹介!! 俺は【突き突き魔人】ってんだ。んで、コイツは【笑いガンマン】。見たまんま……だけどな?」

 【wwwwww ヨ ロ シ ク wwwwww】


 一人は金色の部分鎧を各所に装備し、見た目だけは確かに【ギルティ・オーバー】に存在していても可笑しくはない。だが、その手には戦国時代に実在した十字槍に酷似した得物を携えて、踊るように振り回しながら剣風を巻き起こしている。


 ……だが、もう一人は……手に長方形の箱を抱え、頭部には軍用のフリッツヘルメット(樹脂とカーボンファイバーで構成された物)を被り、顔面には双眼型のゴーグルとガスマスク、そして全身を枯葉色の迷彩服で包み、黒いブーツを履いていた。


 「恵利さん!! アイツ……銃持ってるって事は……【マギ・ストライク】からの編入者……だよね?」

 「……なぁ、エリよ! 片方は何も喋らないけど、お前聴こえてるのか?」


 ホーリィの言葉で確信する。【笑いガンマン】は……チャット機能だけで意志疎通をしていて、恵利と翔馬以外は見えていない、と言う事だと。


 「まぁ、別に俺は気にしないけどさ……【グロリアス国】の方がマイノリティっぽかったし、そーゆー方が萌えるからさ~♪」

 【wwwwww おにゃのこ カモン♪ wwwwww】


 【笑いガンマン】はふざけた文面を恵利と翔馬に見せつけながら、手にしたプルバックマシンガン調の兵器を抱えてレバーを曳き、弾倉内から弾丸をチェンバーへと送り込む。


 その無機質な作動音を鳴り響かせながら、しかし照準を合わせる姿勢に揺るぎは無い。感情の片鱗も見せない真っ赤なゴーグル越しに、彼は一体何を見つけようとしているのだろうか……?



 「……ふ、ふふふ♪ ……いーじゃねぇか……奮えるねぇ♪ コイツら、エリの世界から来た【好き者】なんだろぉ? はぁ♪……食い放題……なんだよな!?」


 だが、不意にホーリィが言い放ち、堪り兼ねて我が身を掻き抱きながら……恍惚とした表情を浮かべつつ……ペタンと床に座り込む。


 「強そうだな……なぁ、強いんだよな!? じゃあ……槍ヤローはワタシが喰うッ!! アンティカとクリシュナは、そっちのメガネ野郎と遊んでやれ!!」

 「えっ、えぇ~!? ホーリィさんの意地悪ぅ~!! 」

 「……御姉様の思うままに……」


 じるり、と涎を拭いつつ、ホーリィが宣言するとクリシュナとアンティカは各々の得物を握り締めて、言葉とは逆に嬉しそうに表情を晴らせながら、一歩前に進む。


 各々がジリジリと歩みを進め、二人の異界からの闘士との間合いを詰めて行く。それがどのような展開になるのかは……誰にも想像出来なかった。




やー、VRゲームがやって来た!! ブクマと評価をお願い致します!

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