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悪業淫女《バッドカルマ・ビッチ》  作者: 稲村某(@inamurabow)
第二章 恵利の世界とローレライ配属。
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③セルリィさん。

恵利と翔馬は無事にローレライ搭乗を果たせるようだが、無事に乗り込めるのか?



 恵利は強引に荷役組へと引き込まれた翔馬に、


 「うん、そうね……少ししたら迎えに来るから、ホーリィ達を手伝ってあげて?」

 「いいよ! それじゃ、また後でね」


 そう言いながらローレライの船体出入口に向かう恵利とセルリィに、背を向けて荷物の積み込みを手伝おうとした翔馬だったが……


 「それじゃどこから手伝いますかね……って!! 何でホーリィさん脱ぎだすんですかッ!?」

 「……んぁ? こちとら朝からずーっと荷物係だったんだぜぇ!! 暑きゃ脱ぐに決まってるじゃねーか!! なぁバティ!?」

 「しょーゆーことよっ!! も~蒸して蒸してたまんないっての!!」


 翔馬よりは小柄で背丈の低い二人だったが、生憎と中身は彼より年上の立派な成人。そんなホーリィとバターカップが我慢の限界を宣言したかと思うと、ホーリィは黒い被服の首元から大胆に拡げて腰まで降ろし、バターカップはTシャツをやおら脱ぎ出して、あっという間にタンクトップ姿になった……だが、二人の着衣に気を取られた翔馬は……驚愕の事実に直面する!!



 (ちちちちちょっとっ!? ふ、二人とも……ノーブラっ!?)


 翔馬は頭から湯気を上げながら、暫しの涼みタイムを兼ねながら給水に勤しむ二人が、所謂《山頂部の保護シート》を着けていない事に気付いてしまい……有り得ない程の曉倖ぎょうこうだ、と実感し……しかし即座に思い直し、


 (……い、いや待て……こんな時に恵利さんが来て、『あ~っ!! やっぱり翔馬クンもオッパイ好きなんだ~?』とか言われたら……ガチで終わりだ!!)


 と、要らぬ心配に身を焦がしていたが……


 「ふああぁ……暑いぜマジで!! あー、ショーマだっけか? 悪ぃけどこれ、あそこまで運んでくんねーか?」


 そんな翔馬の気持ちには構わず、パタパタと団扇ウチワ代わりの木片で扇ぎながら、ホーリィが足元の荷物を指差してローレライの後方開口部に運ぶよう頼むのだが……そんな彼は接近する奔放な二人の薄衣越しの肢体に眼を奪われ、意識を保つのに精一杯だった。


 更に扇ぐ度に成熟した女性が持ち得る、男の本能を鷲掴みにして止まない芳醇な因果カルマが舞い散り、ホーリィの容姿を目の当たりにすれば誰もが想い描く、清純な印象を裏打ちするかの淑やかで清涼感溢れ、そして若き果実を彷彿させる薫りも同時に感じ、翔馬は唇を噛み締める。


 (マジで……ヤバい!……この二人……ガチで誘ってるっ!?)


 「バティ、こう暑ちぃと終わった後に何を飲むか迷うよなぁ?」(パタパタ)

 「そだね! 酒保(艦内の酒を扱う場所)に何があったかなぁ……まー、何でもいっか!」(パタパタ!)


 恵利の居ない中、暫し涼しむ二人に意識をゴッソリ奪われながら、何とか賢者であらんと努める翔馬を他所に、


 「ところで、ショーマって言ったっけか? 恵利とはどーなんだよ、なぁ!」

 「おぉ!! あねさん! この子ってば遣り手なんですかっ!?」


 ……さっきまでの努力を水の泡にするかのように、黒のタンクトップ女二人がグイグイと翔馬に迫り、色んな意味で瀬戸際に追い詰めていくっ!!


 「どうだと言われても……別に何も言ってませんし、って……?」

 

 曖昧な言い方ではぐらかそうとした翔馬の目の前で、ホーリィとバターカップが一瞬だけ停止し、やがてお互いの顔を見合せてから……


 「……そうか? ……おっしゃあぁ~ッ!!!! ……つまり、今お前はフリーだな!? 誰が何時、()()()()怒られないんだよなっ!?」

 「姐さん、そーなんですかぁ!? それじゃ……私が食べちゃっても怒られないんですねっ!?」


 片や黒髪ロング、片や金髪ウェービーセミロングが左右からエロい牙(何だそりゃ)を剥き出しにしながら翔馬に襲い掛かるっ!!


 「待ってくださいって! いやだから食べるとか何を言ってるか判らないんですがっ!?」



 ……翔馬の抵抗は果たして、いつまで続くのか……?



 「よしバティ! お前は右手を掴め!!ワタシは左手だ!!」

 「合点承知!! さー諦めて、おねぇちゃんに身を委ねちゃいなさいな!?」

 「あーっ!? だからズボンはダメですって!! ちちちちちょっと!?」



 遂に二人の腕がガッシリと翔馬の両腕を掴み、完全に自由を奪いながら空いた指先で、カチャカチャとベルトのバックルを外そうと息ピッタリのコンビネーションを発揮したその時!!




 「片付けは終わったかしら? って、何してんのよ二人共……」


 折り良く様子を見に来たセルリィと後ろから恐々と覗く恵利が戻り、翔馬の貞操は何とか保たれたが……ホーリィとバターカップの二人に全く反省する様子は見られなかった。


 「いーじゃんかよ! 減るもんじゃねーし!」「そーだそーだ! ケチ!」

 「良くないわよ!! 盛りのついたメス猫じゃあるまいに……」


 呆れ果てたセルリィに回収された翔馬の姿を、物欲しげに眺めるケダモノコンビは仕方なく残りの荷物を片付け始めたが……


 「なぁ? アイツ、女知ってると思うか?」

 「うんにゃ! 絶対に知らないと思うよ!」


 ぜーんぜん懲りてませんでした。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳




 「……まぁ、飢えたケモノに近付けた私にも責任はあったかしら……ねぇ?」


 セルリィはやっと解放された翔馬に同情しつつ、しかし何処か残念そうな顔色は敢えて触れずに二人の前を進む。


 先程の荒ぶるケダモノと違い、落ち着き払ったセルリィの態度に安心したのか、翔馬は改めて彼女の後ろ姿に見とれてしまう。


 絹のように艶やかな髪を靡かせて颯爽と歩く姿は、まるで神話の乙女を彷彿とさせる程の輝きを放ち、傍らの恵利とは全く違った美しさに満ち溢れていた。肩から背中、そして(くび)れた腰……そして魅惑的な膨らみを備えた女性特有の曲線美は、年頃の男性すべての理想を具現化しているようだった。


 「ところで……セルリィさんって、どうしてローレライに乗るようになったんですか?」


 翔馬の思惑に気づかぬまま、隣の恵利が何となく尋ねると、セルリィは振り向いてから少しだけ意外そうな表情を浮かべ、


 「ん? 言ってなかったかしら? 私がどうして帝国の戦艦に乗り込む事になったか……」


 そう言うセルリィの周囲が、何となく冷え冷えとした空気に変わったと恵利が感じた瞬間、何の前触れもなく翔馬と共に異なる空間に転移していた。


 ……そこは大きな樹木と鮮やかな緑に満ち溢れ、帝国の開発の行き届いた大地とは正反対の豊かな自然に包まれていた。小さな動物達が周囲の森の中を闊歩し、警戒心とは無関係の平和な世界だった。







 

久々に話を半分に分割しました。後半は④ダークエルブ、として続きます。ブクマ評価も宜しくお願い致します!

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