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悪業淫女《バッドカルマ・ビッチ》  作者: 稲村某(@inamurabow)
第四章 大陸覇道編・仲間を増やそう!
53/124

⑪肉は良く叩け!

タイトルは変えるかもしれません。



 白いシャツとスカートを纏い、黒髪にはいつもの髪留めを付けているものの、その側頭部からはふさふさとした()()()の生えた耳をにょきっ、と突き出させたホーリィは裸の男の頭上に立ち、腕組みしたまま見下ろしつつ、語り掛ける。


 「まー、言いたい事は色々あるだろうがよ……ひとまず楽にしなよ? 『()()()()()()()()』ちゃん!!」




 ……一瞬、時が止まったかのように男は沈黙を守っていたが、不意に動き出しホーリィを掴もうと頭上に手を振り上げたが、既に飛び退いてそこから離れていた彼女は丁寧に二回転宙返りしながら綺麗に着地し、軽く跳ねて半回転しながら男に向き直り、


 「……悪いが、お前の事は色々と調べさせて貰ったニャ?……『タケシタ・ミツオ』、……え~っと、ナニナニ? ……うっわ!! ワタシよかすんげー年上じゃねぇ!? ……あー、こりゃ悲惨だニャ……『薬剤師の親の七光りで薬科大学に進学したが道半ばで中退、無免許のまま違法に薬品を売り買いして逮捕寸前で遁走、それからはVRを活用したネットホストクラブ等に出入りしながら生計を立てる』っと……良く判んねぇけど、大したこと無い経歴だニャ!!」


 まるで何かを見ながら言葉を紡ぐホーリィだったが、その言葉は男の何処かに深々と突き刺さり続けたのか、手の届く距離に居る筈の彼女を追い掛けてくる気配は無かった。



 ……だが、ホーリィ達は男の正体を晒してしまえば、それで手打ちにするつもりは、勿論ながら……無い。


 「そんじゃまぁ、おっ始めるニャ♪……グランマッ!! 『重複承認』!! 今直ぐこの城全部を『決闘戦域デュエルフィールド』にしてくれニャッ!!」

 【……心得ていますよ? それでは艦長代理権限を発動。 『重複承認』を実行後、速やかにこの空間を魔導的に閉鎖、以降はどちらか片方の死を感知するか、双方の同意を得られるまで外からの干渉を拒絶します】


 ホーリィの呼び掛けに応じたローレライが強大な魔力を放出し、紫色の五芒星を顕現させる。それはそのまま結界化し、周囲と山城を隔離させてしまう。

 瞬時に状況が変化し、自らの優位が失われるや否や、速やかに撤退(ログアウト)しようと身構えた裸の男だったが……それすら結界に阻まれて出来ない事に気付き、一目で狼狽えているのが判る程に動揺し、挙動不審な動きを見せる。


 



 ……だが、ホーリィ達は追撃の手を休める事は無かった。


 「……さてと、お仕置きの舞台は整ったニャ!! ……エキドナッ!! 『熱いおもてなし』を呉れてやるんニャ♪」


 【……あー、やっと出番なの? 待ち草臥(くたび)れて帰りたくなっちゃったわ……よっと!!】




 男は二人の会話を聞いていた訳ではなかったが、自らの頭上に薄く輝いていた月明かりがぼんやりと霞むのに気付き、天を仰ぎ見ると……


 「……お・ま・た・せ・♪ ……さぁ! 私と()()()()()()()()()()()()


 ……魔導の呪符の効果で現れた巨大な白い翼を羽ばたかせながら、大きく手を広げたエキドナが豊満な身体を誇示するかのように抱き着くと、男の首にふわりと手を回しながら……



 「……ねぇ? たぶん……とぉ~っても、気持ち良いわよぉ~? ……()()()()()()()()()()()()……ね♪」

 


 ……自らの顔を唇が重なりそうな程に相手へと近付けて、アーモンド形の綺麗に吊り上がった眼を妖しく光らせながら……自らの特技、幻術を全身全霊込めて送り込む。だが……実は彼女の背中にしがみ付きながらもう一人、行動を共にしていたのだ。


 「ローレライさん、セルリィさんッ!! えーっと……【連結魔導陣】をお願いっ!!!!」


 ……恵利が自らの身体を、集められた魔力を束ねる即席の避雷針代わりにする為、背中に魔導陣の呪符を張り付けながら、有らん限りの声を振り絞って絶叫する。すると呼応する様に彼女とエキドナを基点にして魔導陣の五星が幾重にも立ち上がり、二人を、そして裸の男を中心にして次々と現れ、そして包み込む。


 二人を振りほどこうとした男の手に、いつの間にか近付いたホーリィが自らの掌を合わせ、


 「……まぁ、ワタシも苦手だからヘタクソかもしれニャいが……一緒に踊らねぇかニャ?」


 ニヤリ、と笑った瞬間、幾重にも重なる魔導結印の波動をみなぎらせて身体強化を行ったのだが……その全ては《筋力増強》を示す紅い色。




 「……ご……お゛、お゛、お゛、お゛、お゛……あああああああぁ!!!!」


 絞り出すような野太い雄叫びと共にホーリィの小さな身体は見るまに膨らみ、纏っていた白い衣服がばりっ、と派手な音を上げながら内側から引き裂かれていき……何時もの黒い被服姿になるも、その被服すら随所が極限まで薄く張り切り、何かの拍子で突っつけば張り裂けてしまいそうであったが……彼女の身体は裸の男に見劣りする事の無い程、隆々とキレた筋肉を張り切り(みなぎら)せ、


 「……さぁ!! ジルバでもフォックストロットでも構わねぇッ!! 際どい抱擁だろうと何だろうとやりたい放題の……乱恥気騒ぎと洒落込もうじゃねぇかぁッ!?」


 みぢぃっ、と腱を捻り切るような音を立てさせる程に腕へ力を籠めると、遥かに背の低いホーリィに力負けしたのか、手首から肘、そして肩まで一直線に極められた状態で持ち上げられたのだ。しかも未だ首にエキドナと恵利をぶら下げたまま……。



 「……痛みがまだ無いからだろうなぁ!! こーやって関節を極められたままじゃあ、力も入らないだろぉ? 普通なら痛くて外そうとして、自分から身体を回して逃れようってする筈なのにな……」


 いつの間に猫人種の擬態を解いたのか、元の姿と口調を取り戻していたホーリィは、ぎりぎりと締め上げる指の力と関節の極め技で相手の腕を固定し離さない。その力に対抗しようと裸の男が二の腕に巨大な力瘤を見せながら一気に力を籠めようとするが……





 ……男は今まで一度も感じた事の無い、関節に走る【痛み】に意識を奪われ、思わず膝を突いてしまった。



やーっと!! チート退治始めます!

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