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悪業淫女《バッドカルマ・ビッチ》  作者: 稲村某(@inamurabow)
第四章 大陸覇道編・仲間を増やそう!
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④招かれて異国!!

恵利とホーリィはパルテナの山城へ招かれますが、そこは何やら物騒な雰囲気に……。



 馬車に捕縛した盗賊を詰め込み、周りを護衛するように囲む鷹馬へ跨がった山猫族達を引き連れてホーリィ達は、パルテナの山城へと向かう事になった。



 「とりあえずコイツらはうちの牢屋に放り込んでおきゃいいから、是非一度自分達の山城に来てほしい」とパルテナに懇願されて、渋々の体でやって来たのだが……


 「おおおぉ~っ!! 凄い凄い!! やっぱり景色が違うよね!! ねぇホーリィ!?」

 「あ、ああ……そうだな……(おい! エリってば興奮し過ぎだっての!)」


 山道に差し掛かり、眼下に広がる盆地の風景に感嘆してはしゃぐ恵利(の入った魔導人形)の変貌振りに呆れながら、ホーリィは苦笑いしつつ(たしな)める。


 そうは言えども、その光景は確かに眼を見張る物で、薄く雲が掛かる遠景まで見渡す限りの草原、そして鬱蒼と広がる森林地帯との境界線がくっきりと別れ、地平線まで開墾され尽くされた帝国領地との違いをハッキリと浮き立たせていた。


 ……だが、先に進むに連れて周囲の景観もごつごつとした岩肌が次第に増え、標高が上がるに従い背丈の低い樹木も疎らになり、やがてそこここに目立つ人間同士の《戦闘の爪痕》が見受けられるようになると、恵利の浮かれた気分も次第に萎み、そしてパルテナの呟きを耳にして自らの戸惑いと違和感がハッキリと理解出来たのだ。



 「……山城って言っても……結局は()()()()()()()()()()()()()()()()()ってとこだよな、これじゃね……」


 そう、目の前に現れた山城の城門は……真横に切り裂かれて無残に倒壊し、急(こしら)えで立て掛けられた木材の束で塞がれて痛々しい姿を晒していたのだ。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 「……おっ、凄えぇな!! こりゃ……アジでもこんな暴れ方は無理だぜ?」


 馬車から飛び降りたホーリィが走り寄り、城門に近付くと向こう側から人の動く気配が感じられ、それが足音を忍ばせた見張りの兵だと気が付くと、木材の裏側から数人の兵士がパルテナ達を出迎え鷹馬の手綱を預かり、城内へと牽いていった。


 「それにしても、酷ぇなぁ……何だこりゃ? ……驚いたな、コイツを剣で斬ったのかよ!! ……まさかアンタじゃねぇよな!?」

 「バカ言うんじゃねーよ……いくら私が癇癪起こしたって、石と木材で出来た城門を真っ二つに出来る訳ないだろ?」


 切断面へと指を這わせ、その切り口の鋭利さに思わず指を引っ込めたホーリィがパルテナに向かって話し掛けると、呆れたようにパルテナが答える。


 そんなやり取りをする二人から、やや離れて城壁を見ていた恵利は、城壁に規則的に転々と残る窪みを見つけ、それを不思議そうに眺めているとパルテナが目敏くそれに気付き、


 「ああ、それか……そいつぁ、やって来た化け物が指先を突き刺して、壁を登って向こう側に回った痕さ……すげぇだろ?」

 「……化け物!?……でも、これって……どう見ても、人間位の背丈だよね?」

 「……当たりさ。やって来たのは二人の人の形をした【化け物】さ。……まぁ、その辺の積もる話もあるから、さっさと入ってくれ」


 身振りを交えて話すパルテナに、思わず答える恵利だったが、詳細は伏せながら城門の隙間へ身体を滑り込ませながら手招きする彼女に合わせ、後に従い城内へと進むことにした。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 城内にやって来たローレライ乗組員達は、本来なら美しく整然と組み上げられた石組みの建造物が破壊され、剥き出しの木材が晒されるままになっている様を見て、その戦闘の激しさに言葉を失った。


 「……何だいこれ……丘巨人(ヒルジャイアント)が酔っ払って運動会でもやらかしたのか?」

 「ハハ……それならよかったがね……まぁそれも含めて話してやるさ、あれが此処の領事館、まぁウチの屋敷って奴だ」


 パルテナは短く笑い、ホーリィの冗談を受け流したが、その笑いは誰の目にも明らかに空虚な代物で、彼女の内面に広がる心理的な痛みは軽いものではなさそうだった。




 領事館へと案内されたホーリィ達は、パルテナに促されて大きな卓へと付いて暫く待つと、一人の男性が現れて一同に声を掛けた。


 「……帝国軍強襲戦艦所属の皆様、はじめまして……私はパルテナ・エテナの夫……オリヒロと申します」

 「……あれ? 同じ山猫族のモンじゃねーの?」

 「ああ、そうですね……私はパルテナに他所から連れてこられて……」「あーっ!!それはともかく私の旦那だっ!!何処の誰とかは別にいーじゃねぇか!!なぁ!?なぁ!!」


 真っ赤になりながら、慌ててオリヒロの言葉を遮るパルテナに、人の悪い笑みを浮かべたホーリィが、


 「ふ~ん、そうなんかい……山猫族のパルテナ様は普人種のダンナ様にベタ惚れだ、って事ですか~? あーそうですかそうなんですか……で、子供は何人居るんだい?」

 「はい、先月生まれた七人目の子供が……」「だ~か~ら~っ!! アンタもいちいち生真面目に返答すんじゃねーっての!! バカッ!!」


 そう答えるオリヒロに掴み掛かり、ガクガクと振り回しながら必死に抑え付けようとするパルテナの姿に、恵利やクリシュナ達は笑いを堪えるのが精一杯だった……。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 「……それはともかく、我が領地はご覧のように未曾有の危機に瀕して居ます」

 「未曾有の危機? ……城がぶっ壊れただけなら直せばいーんじゃねぇか?」

 「城だけなら別に構わんけどさ……いや、壊れちゃ困るけど……なぁ、アンタ達、此処に来るまで女子供の姿を見たかい?」

 「いや、そういや……確かに見てねぇけどよ……」


 ホーリィが思い返すまでもなく、城壁から領事館までの町並みには一人も見当たらなかった。居たのは損壊した建物を修復する男達、それに兵士と老人達ばかりが目立ち、パルテナのような女性の姿は皆無だった。


 「……私達、山猫族は種族的に『女が少ない』種類でな……十人生まれて一人、ってのが普通なんだよ。で、生まれれば私みたいに器量良しなんだぜ?」


 そう言いながら胸を張るパルテナに薄暗い目線を投げるホーリィの前にクリシュナが立ち塞がりつつ、


 「でっ! でもそれはともかく! ……オリヒロさんの仰有る未曾有の危機と何の繋がりが……」

 「……化け物は、山猫族の女だけを狙ってやって来る。ただひたすらに、他には一切興味を示さずに……ね」


 それまでの雰囲気とは全く異なり、沈んだ面持ちで続けるパルテナの言葉は重く、そして痛々しかった。



それと、物凄く大切な事を思い出した!! ……まぁ、そのうち使うネタなんだけどね。


ではまた!!



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