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悪業淫女《バッドカルマ・ビッチ》  作者: 稲村某(@inamurabow)
【第一部】第一章 チュートリアル編・戦い方を知ろう!
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④お・し・お・き・タイム……だってんだよゴラァッ!!

うん、そんなにエロくないや~!! それではどーぞ!!



 ……その昔、世界がまだ不安定だった頃、幾振りかの魔剣が地上に遣わされた。


 或る物は荒ぶる自然界の現象を模した、火山や豪雪、嵐や稲妻等の局地的な災害を現していた。


 或る物は人々の様々な欲求を具現化した物であった。それらは神々が人を意のままに操る為の道具として与えられた……と唱える者も居たが、知る由は無い。



 ……そんな幾振りの魔剣の中に、強力無比の力を有し、人々の手から手へと渡りながらも「使えない屑の魔剣」と謂われた物があった。その魔剣こそ【フシダラ】と【フツツカ】。夫婦剣としてこの世界に有りながら、真の力を発揮出来ぬまま不遇の時は過ぎ、やがて忘れられていった……


 ……だがしかし、偶然の出会いからホーリィの元へとやって来た【フシダラ】と【フツツカ】は彼女に真の力を見出だされ、やがて遺憾無くその実力を発揮していく。


 二振りの魔剣とホーリィが共に歩む事により、全ての歯車が噛み合い物語と言う大きなカラクリは……ゆっくりと動き出したのだ。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 ……その時、ホーリィの手元から発した音を例えるならば、それはきつく閉じられていた柔らかい()()()抉じ開けられて……侵入を許し、じわじわと掻き分けられながら、一つに繋がる際の音……だろうか。


 ゆっくりと押し開きつつ、【フシダラ】の柄の端が【フツツカ】の中を突き進み……やがてその奥底に到達した瞬間、【フツツカ】の柄の中で【フシダラ】の魔力の塊が放出されて……【フツツカ】の魔力と混ざり合い融合する。


 それが引き金となり、二振りの魔剣はしっかりと結合し……一つの形を取った。その外観は長めの握りを備え、握りの両端に刀身を付けた所謂いわゆる【双頭剣】と呼ばれる武具に変貌したのだ。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 「……【双頭剣】ですって!? 先刻感じたのはそれが元凶だったのですね……ですが、本数も変わる訳でも無し、圧倒的に不利な現状に変わり有りません」


 クリシュナの視線は変化した魔剣から離れ、対峙するホーリィへと注がれる。未だに一刀も浴びせる事は出来ていないが、その防具は上等とは言えど革鎧。身体を完全に覆ったにしても、全ての攻撃を防ぐ事は出来ないだろう。


 「そうかぁ? やってみなきゃ判らない事もあるぜ……それとも、負けそうだから怖くなったか? ()()()()()()()()()()()

 「……口の利き方にご注意なさった方が宜しくてよ? ……敗けを認めても頭に血が巡り過ぎて手先が鈍る等、良く有る事……?」


 掌でゆっくりと握りを廻していたホーリィは、クリシュナの言葉を合図に一歩踏み込む。その手の中から鋭く伸びた突きを、無銘の直刃剣で辛くも受け止めて、クリシュナは眼を疑った。


 「……魔剣らしい()()()()()ね? まさか手の中で伸びるなんて……」

 「ああぁ? あったり前だろ! 魔剣だって(もてあそば)られりゃ悦んで伸びるに決まってるだろ? ……こうやって……なぁ♪」


 ホーリィが嘲笑いながら、左手で持った双頭剣の中心に右手を添えて、小指を立てながらゆっくりと(しご)き始めると……ビクッ! と痙攣してから……見る間に倍の長さへと伸びていく。


 「……持ち主といい、魔剣といい……実に破廉恥の極みですわ……」


 ビクビクと痙攣する魔剣をいとおしげに握り締めたホーリィを、冷ややかな眼差しで見たクリシュナだったが、やがて彼女は気を取り直し、四本の剣を振り上げて構え、


 「……さて、仕切り直しと参りましょう。今回の遠征では十分な手柄を上げられましたから……手土産は【悪業淫女バットカルマ・ビッチ】と言うのも悪く有りませんからね!」


 踏み込み鋭く地を割り裂かんとばかりに、クリシュナはホーリィ目掛けて距離を詰める。四本の剣を交差させながら突進する様は、厚く固い甲殻に身を包んだ蟹のようだったが……


 「……二度も同じ手は食わないんだよ、バーカ!!」


 叫ぶホーリィの手から伸びる双頭剣が、交差させた剣の中心に到達するや否や、あろうことか天秤棒(物を両端にぶら下げて運ぶ為の棒)のように肩に担ぎ上げ、自らの肩を支点として一気にかち上げる!!


 「くっ!?……何て、馬鹿力なのよっ!?」


 体格の違いを全く感じさせないホーリィの無茶な変則投げで、フワリと宙へ舞い上がるクリシュナ目掛けて、情け容赦の無いホーリィの切っ先が襲い掛かる!


 「おらららららららららぁ~っ!!」

 「ふっ、くぅ……? ち、調子に乗れるのも今のうちですわ……っ!!」


 肩に担いだままの双頭剣を脇腹から回して一突きし、そのまま中心を肘で絡めながら頭上まで持ち上げつつ左右の剣を交互に撫で斬りにし、返す刀で真下から回し斬り、更に振り下ろしながら……と、その連撃は棍術と槍術を混ぜたような強烈な回転斬りを幾度も浴びせる程、リーチと切り裂く力は一歩も二歩も先んじていたのだけど……。


 幾度かはクリシュナの柔肌に触れて、うっすらと血が滲む事も有るには有ったのだが、ホーリィの剣は致命傷には至らず、不安定な体勢のまま受け切ったクリシュナが着地する。


 頬にも胸元にも、僅かながら小さな傷を受けたクリシュナだったが、その姿に変わりは無い。束ねた髪もそのままに、身に付けた胸当てや護手にも所有者の一途な思い入れが有るのだろう、細かい打刻模様や革リボンを用いて美しく仕上げたそれらにも目立つ傷は無かった。


 「……ふんっ!! 結局その厭らしい剣は何の役にも立たなかったようですわね!」


 猛々しく胸を張りながら、手にした四刀をホーリィへと向けたクリシュナは、先刻の打ち合いが相手の全力だったと見切り、その格差に憐れみすら感じながら改めて構え直した。


 「……ヘッ!! ……泣いて謝ったって……許してやんないぜ!? ……いくぜッ!! 【催淫開放】ッ!!」


 そう叫ぶホーリィの双頭剣から眩い光が放射され、クリシュナもろとも包み込む。だが、その光は一瞬で消え去り、残されたクリシュナの視界は即座に回復して、何も起きる事は……



 「……っ!? ……ふぅ……ッ!! んっ、んぅ……な、何よコレ……()()()()()()……いや、それだけじゃないわ! ……か、身体が……火照るぅっ!?」

 「ンフフ……♪ 気付いちゃったぁ~? ……この魔剣、たぶん世界に唯一対だけの【催淫効果】のある魔剣!! ……細かくても、一つ一つの傷口が効力を倍加させるみたいだから……今のアンタ、()()()()()()()()天国にイケちまうかもな!!」

 「……ひっ!? ……そ、そんな……でも……でも…………んふ♪」


 それを聞いたクリシュナの表情は……戦場に赴く戦人(いくさびと)としての絶望と……待ち侘びた悦楽への期待に満ちた複雑な顔色だった。





 (……いっえええぇ~いっ!! やっとだ! やっとだ!! ……こいつ、今すぐぶっ殺して()()()()()()()()()~、またムッチャ強い【フォー・ハンズ】に戻れるぅ~♪ ……いや、待てよ? ……コイツ、『ノ・クターン国』に性奴隷として叩き売ったら……【三千貢献度】は固いんじゃないの!? うん、見た目も悪くないし、叩いても滅多に壊れないし……いや、腕が四本も有りぁ、色んな愉しませ方だって出来るんじゃねーの!? うっはぁ~♪(みなぎ)ってくるわ~っ!! よーし!! 今からコイツが恥態を晒け出し切ったら「ありゃりゃ? 清楚なお顔で御丁寧な事を言ってた割りには……ひっどい淫乱恥女っぷりだな!! そんなお前にゃお似合いなイイ所が有るからよ! まぁ励んで新しい自分を見つけてきやがれ!!」って言葉責めで追い込んで、きっちりかっちり自分の立ち位置を知らせてやらねぇと…………とっ!?)


 ……そんな風に、誠に恥ずかしい妄想を繰り広げていたホーリィだったのだが、突然激しい立ち眩みを感じて膝から崩れ伏してしまう。



 「……はぁ!? ……ま、まさか……《魔力切れ》ってかよッ!! ウッソだろぉ~!? こ、コイツを捕まえて……の、ノ・クターン国にぃ……ぐふっ!!」


 途中まで元気一杯に妄想していたホーリィだったが、こうしてぺチャリとクリシュナの傍らへと身体を投げ出して、くったりと横たわり気絶したのでした……。

うん、クリシュナは期待と不安でワックワクみたいです!! そりゃ~もう、物凄く……つーか、ホーリィもどうなる?

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