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悪業淫女《バッドカルマ・ビッチ》  作者: 稲村某(@inamurabow)
第三章 大陸編・時には外に出てみよう。
35/124

⑩対決。

お待たせ致しました! 早い時間ですが更新致します!!



 ホーリィと爬人種の二人の頭上では、軽装甲の身軽なローレライが宙に浮かんだままゆっくりと旋回し、周辺を上空から警戒していた。


 その言葉無き威圧感は筆舌に尽くし難く、幾度も戦場に身を置いた彼にしても……生きた心地はしなかった。過去に生に執着しない、とどれだけうわべを取り繕ろうと、結局は腹が減れば飯を食うし、眠くなれば眠るのだから。


 ……そう結論付け、男は目の前の戦いにのみ集中する為、思考を切り替える。


 ……今はただ、未成熟な見た目とは裏腹な【悪業淫女(バッドカルマ・ビッチ)】を相手に戦う、それだけの為に……。




✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳




 一方その頃、ホーリィと恵利は、互いの意識が共存出来る深層心理領域で、姉妹喧嘩さながらのお粗末な言い争いを繰り広げていた。


 (……ホンットにあんたってば最低の最悪よねぇ!! いきなりバマツさんの目の前で裸になるとかさぁ……少しは慎ましさとか無いのッ!?)

 (ああぁん!? んなモン、女になっちまった時にチン○と一緒にどっか行っちまったんだよッ!!)

 (うっきいいいいいいいぃ~ッ!! 女子がチン○とか言わないのぉ!! 一番大切なモノと一番要らないモノを一緒くたに仕舞って無くすなバカッ!! マジ信じらんないッ!!)


 顔を真っ赤にしながらキーキーと喚く恵利から意識を逸らし、ホーリィは表層へと戻る。出来の良い妹分みたいな恵利だが、ホーリィとの価値観の違いはどうしようもないようだ。


 ……仕方がないので冷却期間を設け、暫く放っておく事にした。





 「……さてと……オッサンよ、……悪ぃが仕切り直し、構わねぇよな?」

 「…………俺は構わん。【四つ手(フォーハンド)】もそいつに割り込まれても異論は無かろう?」

 「……わたくしは、全てを御姉様にお任せしています!」


 クリシュナの返答を聞きながら、ホーリィは【フシダラ】を手の中で踊らせつつ、魔導の身体強化を始める。しかし相手の男は彼女の邪魔もせず、腕組みしたまま動かない。クリシュナも二人の様子を見た上で、不要な横槍を入れるつもりもなかった。



 「……ふううううぅ。……さぁて、ワタシの準備は終わったぜぇ?」

 「女……一つ聞いておきたいが、いいか?」

 「やれやれ……今更、命乞いなんざ聞きたくもねぇんだがな……で、何だい?」


 ホーリィと男は言葉を交わしつつ、互いの距離を調節するかのように近寄り、相対して停まり、得物を構える。


 「……お前は、今まで誰の為に戦ってきた?」

 「あぁ? んなモン決まってるだろ? 自分自身の為にだよ!!」

 「……そうか。もし皇帝の為だ、とほざいたら……拍子抜けも甚だしいと思っただけだ……今は気にするな……」

 「んじゃ、お前ぇは何の為にやってるんだ?」


 あからさまな直球を投げ返すホーリィに(……お前は判り易い奴だな……)と心中で苦笑しながら、暫し沈黙した後、





 「……そいつを見つける為に、では悪いか?」

 「いや、構わねぇさ、どーせぶっ殺す相手が何考えてよーと、ワタシにゃ関係ねぇからさッ!! そんじゃ、おっ始めるとすっか!!」


 ホーリィはざざっ、と爪先で真円を描き、その中で腰を落とし魔力を放出させて強化連動を開始し、魔導結印を終える。


 相手の男は暫し瞑目し、無明刀を下げて交差させたまま足を開いて、ちろり……と先の別れた舌を覗かせて、呼吸を停めた。




 「……んっ? 何だよ、この気配……っ、魔力っ!?」


 ホーリィは目の前に立つ男が、魔導を使えないと確信していたにも関わらず、()()()()()()()()()()()()()()()()()、異常を察知する。


 「……一つ、教えてやろう。この世界の(ことわり)に於いて、男は魔導が使えないのが常識だがな……何にでも例外は有る…………」


 ぶわっ、と噴き出す魔力の圧に、今まで感じていた男から発せられていた微細な魔力の欠片は、周到に偽装された紛い物だと理解する。そして魔力は瞬時に膨れ上がって巨大な津波のように押し寄せて、ホーリィは全身の肌が粟立つのを感じ……、





 「……【古龍種】の末裔に属する爬人種(リザードマン)に限っては……身体強化に類する《先祖返り》が……行えるッ!!」


 ばんっ、と全身の筋肉……いや、骨格すら変化させて肉体が膨張していく。人族に近かった卵形の頭蓋骨は鼻先に向かって伸びて尖り、メキメキと音を鳴らしながら次々と牙が飛び出してくる。




 「【古龍種】ですって!?……太古の時代、全人類から断罪と粛清を受けて絶滅したって聞いたけど……生き残りが居たなんて……」

 「クリシュナさん!?……そんな奴が何故こんな凶賊に……ホーリィさん、余り無茶は……あッ!?」


 バマツとクリシュナは、目の前の【古龍種】を標榜する爬人種に戦慄し、そしてホーリィを見た瞬間……





 「くっ、くくくくくく~ぅ♪ イイねイイよねェ~ッ!! えげつねぇなぁ♪ 実に……狂おしいじゃん!!……んふっ♪……」


 ホーリィは両 手に持った夫婦剣を結合させながら、わらい、よろこび……感極まったように薄笑いを浮かべつつ……自らの()()()()()()()()……挑発するように脚を開いて身体を反らし……


 「……なぁ、名無しのオッサンよ……ワタシぁ危ない橋を目隠ししながら……全力疾走すんのが……堪らなく好きなんだよぉ……判るかぁ!?」


 ……常軌を逸した告白に頬を上気させながら、ぺたりと崩れるように座り込む。劣情の(たかぶ)りに身を預け、そのまま骨が抜けて身を横たえさせた……か、に見えたホーリィは、瞬時にがばっ、と逆立ちし後ろに倒立後転しながら双頭剣と化した魔剣を両手持ちにし、


 「すわぁ~ってとッ!! 準備完了ッ!! ……待たせて悪ぃねぇ♪ でもよ? イイ女ってのは、何時でも男を待たせるモンだぜぇ~ッ!!」


 自分勝手な理由を述べながら、勿論一片の誠意も見当たらないホーリィの釈明に、


 「……俺は料理が出来上がる前に、生のままで喰う馬鹿では無い……只、それだけだ」


 全身を筋肉で隆起させながら、一切の表情を欠いた爬虫類そのものの開口部を駆使し、やっと絞り出した聞き取り難い声で答え、




 「……【悪業淫女(バッドカルマ・ビッチ)】……始めるぞ?」


 もはや武器の有無等、無意味に見える姿に身を変えた男は、




 「……尋常に、参る……ッ!!」


 ホーリィに向かって、跳んだ。



第二段階? 的な先送りですが……次回もお楽しみに♪

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