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悪業淫女《バッドカルマ・ビッチ》  作者: 稲村某(@inamurabow)
第二章 実戦編・強敵(とも)……なんて言う訳ねぇだろブッ殺す。
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①堀井 恵利=ホーリィ・エルメンタリア

第二章の始まりです。少しの間、一人称で進行します。



 ……目を瞬きながら、フルダイブ時特有の麻痺感が抜けるのを待ってると、徐々に現実感が戻ってきた。


 ……ホーリィ・エルメンタリアとして戦って、相手の騎士がやり返したその瞬間は、コマ送りみたいによく判った。ホーリィのお腹に相手の騎士が盾を向けて、突き出したんだ……こう、スコップを向けるみたいに。


 盾の先っぽが細かいギザギザになりながら別れて、ガバッと開きながらホーリィのおへその下辺りに食い込んでゆっくりと閉じながら、少しだけ押し付けられた。


 それからやって来たのは、絶対に来るはずのない痛み……まるで電気が流れるみたいにジワッと来る痛みと、肉が切れて新しい傷が出来ていく感じのザワザワするみたいな痛み。


 ブチブチと、トゲトゲした先が皮を引き裂きながら、服もろとも仕込み盾の内側に食い千切られる痛みに、一瞬で涙が溢れて視界がぼやけて見えなくなって……それで……


 ……負けちゃったんだよなぁ……。




✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 ゲームの世界から戻った時は、薄暗い部屋の片隅でベッドから落ちていた。それもおかしいと言えばおかしいんだけど……だって、プレイ中に本当にパンチやキックしたら必ずトラブルになるだろうし。


 落ちた拍子にぶつけたのか、ズキズキと痛む首筋に手を当てながら、HMDを頭から外して視界に入った時計を見る。隣に有るデスクトップの受信欄に「復学手続きの詳細と締め切りについて」と書かれた担任からのメールが表示されていたけど、敢えて見て見ぬ振りをする。


 時刻はAM01:29。まだ日付が変わって少ししか経ってない。つまり、アクセスしてから……たったの二十分位。


 それで……あの「チュートリアル」が終わる直前に……こうやって離脱しちゃって……



 ……いやっ、それはともかくっ!! と、ガバッと身体を起こして、スェットを捲ってお腹を触って……みても、当たり前だよね、傷なんて有る筈がないや……


 バカバカしい……と、思いながらデスクトップのモニターで「ギルティ・レクイエム」のアクセス状況を確認すると、やっぱり仕様に変わりはない。アクセス前の【ハード】のままだし、痛覚有り、の項目には網目模様が懸かってロックされたまま。


 【初心者(ビギナー)】【中級者(ミディアム)】【上級者(ハード)】【超級者(エクストラ)】の順にランクは上がり、戦闘時のエフェクト無しの【ビギナー】からライフポイントがゼロになったら即経験値無しからやり直しになる【ハード】、そして痛覚刺激有りの【エクストラ】……アイテム数やスキル所得に制限が無くなる【ハード】でやってた筈なのに、痛覚刺激有りの【エクストラ】と同じみたいな痛みを感じた訳だし、誰だって普通は確認するよ……。


 【エクストラ】モードは身分証明書の番号登録が必要だし、父親のカード番号でダウンロードしたゲームなんだから、そこまでして何かあったら……面倒くさくてイヤだし。


 ……でも、あの時……チュートリアルの結末って、仕様通りならヒロインが適当に勝って終わる筈……なのに、敵兵を倒す度に有り得ない位に貢献度がザクザクと入ってきて……


 ……何となく、見て判ってるから平気な筈なのに……お腹に手を当てて擦ってみる。でも、ヒロインが斬られた瞬間、確かに私は痛みを感じて……ホーリィ・エルメンタリアだった。


 堀井恵利って平凡な名前が、ホーリィ・エルメンタリアになった瞬間、確かに私が「ワタシ」になって……





 ……もう一回だけ、もう一回だけやってみて、また痛覚刺激有りだったら……このゲームは封印しよう。発売後もアクセス数が高いから、疑いもせずに買ったけど、人気作だけに色々と怪しい噂も絶えないし……とにかく、あと一回だけ、確かめる為に……アクセスしてみよう。


 自分と瓜二つ(胸だけは違うけど)のホーリィ・エルメンタリアがあのまま死ぬ訳が無い、それだけを確かめたくて……私は再度アクセスする事にした。



 ……念の為にアクセスする直前に、横目でモニターのアクセス状況を確認する……



           ●【虐殺者(ジェノサイド)】モード●実行中




 ……はぁ? ……なにそれぇッ!?



 直ぐに場違いな位に落ち着いた声が、自分の全知覚がVR空間に移行していくのを知らせ始める……そこまでは今までと同じだけど……


 (アクセスを開始します…………良き『闘争』をお楽しみください)




 ……はああああぁ~ッ!? 何これ!! こんなこと一回も言われた事無いんだけどっ!? どーなってん  ー-._  、



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳







 ……身体に伝わる細かい振動、たまに感じるフワッとした浮遊感……あ、たぶんだけど、ここはローレライの中……かもしれない。



 ……真っ暗だった。でも、それが重い(まぶた)が開かないからだって、直ぐに気付いたけど、その次は身体に加わる衝撃…………ひぎぃッ!?





 いっちちちち……なんなの!? いきなりビリッとしたよ!!





 ……目覚めの一撃はズシンッ、からの……ごとんっ。


 ……そんな感じだった。背中から胸に力が掛かって、その力が跳ね返って……バシンッと戻ったみたいに……。



 いやいやいやいやいや!!……痛いとか、そんな生易しいモンじゃない!! 胸に杭を打たれてそれごと二つに割られたみたいッ!! ……激痛で身体が跳ねて折れ曲がって、そのせいで私は目覚めたのか?……私は何とか眼が開けられた。寒いと思ったら……私、上半身裸なのね……あ、治療中って感じか……?


 でも、目の前に立つ女の人は気付いてないみたいで、私の胸に手を当てて……涙を流しながら必死に……心臓マッサージ……じゃ無いぞ、これっ!?


 「ホーーリーィーッ!!! バカバカバカバカバカバカッ!!! 誰が死んでいいって言ったのよ!? そいつをまずブッ飛ばしてやるからッ!! だからあんたも起きて誰だか教えなさいよッ!!!」


 叫びながら金色の長い髪を振り乱して、緑の瞳のヒトが一瞬黙る……バチバチッ、とそのヒトの指先から火花が出て……ま、まさかッ!? これから私に……AEDすんのッ!? マジでっ!!?


 「……がフッ!? オゴボッ……はっ、はっ、はっ……」


 慌てて声を出して止めようとしたら、喉の奥が詰まってて声が出ないっ!! いや、これ……窒息しちゃうよぉっ!? ……ペッ!ペッペッ!!……うん、たぶん吐瀉物(キラ☆キラ)だね、おぇ……。(※①)


 「へっ? ……ほっ? ホッ!? ホーーリィーッ!? い、生き返って……やた……よかた……あははぁ……!!」

 「……っ、セルリィ!! ホーリィが目覚めたの!? だったら()()()()()もう止めないとヤバいって!!」


 私の頭の後ろに居たらしい、他のヒトが金髪のヒトにそう言うと、その金髪笹耳さんが指先を慌てて引き離してから、手を胸の前で組むようにして、


 「……幾らホーリィが何時も強がっていたって、結局は……神頼みに頼るしか無かったし……それにコレ、ホーリィが『何かあったらバチバチってやりながら胸揉め』って……言ってたから……」


 ……うーん……どう見てもAEDにしか見えなかったけど……あとどーゆー知識からそう言ったか判んないけど、揉めって言ってないんじゃない?


 私の横に立った黒髪お団子さん(爆裂ボディ)が、私の首の後ろに手を回しながら身体を起こしてくれて、背中を擦りながら、


 「……全く、無茶も程々にしときなさいよ? ……ホーリィ、……何? 水とか持ってこようか?」


 そう言いながら、私の顔を心配そうに覗き込むそのヒトの下半身は……キラキラと乳白色の細かい鱗を散りばめた蛇みたいな、【魔族】の一派……蛇人種(ラミア)さん。まぁ、白衣着てクリップボードは持ってるけど……


 そうしてまじまじまと見つめたせいで、助力になろうと声を掛けてくれたんだ。なんでだろう……みんな、優しいなぁ…………っ、うぷっ!?


 「……お、おぼっ、…………」

 「あっ!? ……ふ~、ギリギリセーフ……危なかったぁ~!」


 私の吐いた物(キラ☆キラ)は、ラミアのお姉さんが洗面器で受け止めてくれました……ほんと、何度も済みません。



 (※①)➡何らかの原因で吐いた吐瀉物が気道を塞ぐ事。今回のホーリィは意識を失っている間に幽門(胃の上部)と食道が麻痺して逆流しました。それが目覚めた拍子に気道を塞ぐ事に……。下手すると窒息して死んじゃう。器具で吸引させたりして取り除こう。間違っても口で吸っちゃりしちゃ駄目。



✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳✳



 ……こうして私はゲームへの復帰が果たせたけど……気になるのは、さっきからメニューバーが全然表示されてないんだけど……。





 ……こんなんで大丈夫……かなぁ……

やっとゲーム世界として話が進みますが、これからも宜しくお願いします。ブクマ&評価もついでにお願い致します!!

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