第8話 「猫の行」
「ふぇ~温かくて気持ちが良いのです~。」
大神の膝の上でバスバブルを両手でかき混ぜながら白梅がそんな声を漏らす。
「白梅は男の身体見たり、自分の身体を見られたり触られたりするのは恥ずかしくないのか?」
ボディーソープやシャワーを使った身体の洗い方や、シャンプー類などの使い方の説明が面倒なので大神が洗ってやってしまったのだが、白梅は特に恥ずかしがるどころか抵抗もしなかったことに大神は疑問を持った。
小柄なものの胸の大きさからすると、それなりの年頃の女の子だと思うのだが。
「男の人の身体は司祭様ので見慣れているので恥ずかしくないのです。
今日はルーに洗って貰ったのですけど、前は司祭様に身体を拭いてもらったり、『猫の行』で、司祭様を綺麗にしてたりしていたので、慣れているのです。」
「猫の行?」
「はいなのです。親猫が子猫の毛づくろいをするように、全身を舐めて綺麗にするのです。」
おい、ヤバイ話の臭いがプンプンするぞ。と大神は身構える。
「えーと、その司祭様とやらの身体から、その、なんか白い物とか出なかったか?」
「出るですよ?出るまで舐めて、子猫が親猫のミルクを飲むようにそれを飲むまでが猫の行なのです。
親子の愛をなぞる神聖なお勤めなのです。」
絶対騙されてる。と、大神は頭を抱えた。
「身体を変な風に触られたことは?その、地下室で俺がユウキ達二人にしたようような感じの。」
「ええと、司祭様が猫の行をしてくれることもあったのです。」
アウトだ!アウトだこの野郎。
性的虐待じゃねーか。
「その、股間に何か入れられた事とかは?」
「お尻は綺麗にするためにマッサージをしておいた方がいいと指を入れられたことは何度かあるのです。」
その司祭とやらのこじらせた性癖のおかげで貞操は無事なようだ。
でもかなり倫理的にヤバイ人物だな。
今まで聞いた話だと、人間じゃない獣扱いの亜人族の相手をするだけでタブー臭いところを、年端も行かない白梅相手に聖職者が全身舐めるわ尻の穴ほじるわと変態行為と異常性癖の数え役満だ。
白梅がそれを性行為の一部だと認識してない様子なので、無知シチュもその性癖の一つだったのかもしれない。
「その司祭は、いまどうしてる?」
「遠くにいっちゃったのです。ユウキ様が天井から落ちてきた時、ちょうど司祭様が白梅に猫の行をしてくれていたのです。
その後、多くの人たちが司祭様の家にやってきて、司祭様を連れて行ってしまったのです。
その時、怪我をしていたユウキ様の手当をした縁で白梅は白梅という名前を貰ってユウキ様に貰われていったのですよ?」
ユウキが天井から落ちてきたというのが良くわからないが、少なくてもその司祭は見つかって飛ばされたか処分されたのか。と、大神は胸を撫で下ろした。
なんかこれは氷山の一角で、似たようなことが行われていそうな気もするがな。
「白梅もかなりの日数、司祭様にお会いしてないのです。ルーは司祭様に興味があるのです?」
「いや、ちっとも。ただ、白梅が今まで何をされていたかは、おいおい説明したいとは思ってるよ。」
「?良く分からないのです。」
「ま、その件はお風呂上がってからだな。白梅、もう顔が真っ赤だぞ?」
「うーん、なんか頭がクラクラするのです。」
▽▽▽▽▽
そうはいったが、事実を言って神聖なお勤めと思い込んで励んでいた「猫の行」とやらを全否定するのも可愛そうだと思い直し、とりあえずは魔法で出したアイスクリームを食べさせて白梅を甘やかせることにした。
「甘いのです!冷たいのです!美味しいのです!」
と、白梅は大喜びでそれを口に運んでいる。
それにしても、変なことが出来るようになったものだ。と、大神は視界内に写っているメニューを眺めていた。
今の大神はまるでゲームのように魔法やスキルといったものが使えるようになっている。
先程の風呂だって、淫魔法【ラブホテル】とかいう魔法で出したものだ。
厳密にいうと風呂だけじゃなく、ラブホテルの部屋自体を作る魔法らしい。
なので今も大神と白梅はラブホテルの一室でくつろいでいる状態だ。
感覚的にと言うか実績的にというか、エロい事を考えたり、経験したりすると自動的に淫スキルと呼ばれるスキルや淫魔法と呼ばれる魔法を覚えるらしい。
メニューを眺めていると、これは淫狼族という今の大神の種族の種族特性のようだ。
他にも種族特性【超回復】というのもある。
怪我や病気が凄いスピードで治るというものらしく、迷宮での戦闘後に欠けた爪などがいつの間にか治っているのもこの種族特性のようだ。
視界内のメニューを開けたり閉めたりしながらそれぞれの能力の説明書きらしきものを読み、大神は今の自分の現状を把握しようとしていた。