第3話 「従者 白梅」
新連載です。
世界観や主人公の能力などは「サキュバスさんの家族計画」と同じだったり類似してたりすので、スピンオフ的なお話ですので、よかったらそちらの作品もどうぞ。
「サキュバスさんの家族計画」
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「白梅、たぶん発情期です。」
「え?大丈夫?おっぱい揉む?」
そういった時にはもうすでに白梅のおっぱいはユウキの餌食になっていた。
「あら困りましたわねぇ。大丈夫?白梅。」
そういう事は口から白梅の耳を、手から白梅の尻尾を離してから言ってほしいと白梅は思った。
もういっぱいいっぱいだった。
迷宮で中途半端な亜人を見せられ続けられているユウキは、もう空腹に不味いもの無しともいうし、白梅でもいいかな?状態だし、迷宮でセクシーな魔獣(ファーリー談)を見せられているファーリーも、心の目で見れば、もう白梅でいいかしら?という状態である。
当の白梅も修道院に男がいるわけも無いので、発情が始まると当然この後もいっぱいいっぱいになるだろう。
「これは、アレね。例の作戦をやるしかないわね。」
「そうね、白梅のためならしょうが無いものね。」
「そうそう、しょうがない。」
「ですわですわそうですわ。」
二人が悪い顔をしながら見つめ合っている。
なにか良い方法があるのだろうか?と、白梅が思っているところに
「それはそうとして、一回食べてみよう。」
「そうですわね。食わず嫌いということもあるかもしれませんわね。」
邪悪な目をした二人が白梅ににじり寄ってきた。
こうして誰一人として満足しない夜が更けていった。
「僕のパーティーは前衛が少ない。かといって修道女の仲間たちに危険な前衛をやらせるのは忍びないし、かといって男性がパーティーに入るのは望ましくない。だから従魔を前衛としたい。」
迷宮に住み着き魔力を得た野生の獣を魔法で飼い慣らし、前衛としたいという勇者の発案は勇者自体が中衛系の能力であることもあり、あっさりとOKされ、スクロール【隷属の魔法】が教会から与えられた。
「あら、お兄様からのプレゼントですの?嬉しいわ。」
王族から王族へのプレゼントということもあって検閲を免れた包みの中には、召喚魔法の天才、ネブル・アリサリッサ・ネローネによる最新の召喚術式と『精杯』と名前のついた召喚触媒が入っていた。
「これで本当に望んだ姿の魔物が召喚されるの?」
「『淫魔』という大枠の中から要望に一番近いものが召喚される。らしいですわ。」
景気づけにもみくちゃにされた白梅はベッドの上で横たわっている。
女同士だといくら達しても発情は解消されないので結果的に白梅は生殺しだが、これでも善意でやってはいるので怒るに怒れない。
その晩の二人の話し合いは熾烈を極めた。
白梅のために男の従魔を用意する。
ここまでは同意出来ている。
あとはケモノ度合いの問題だ。
ちなみに白梅の「普通の猫人族の人がいい。」とか、「せめて人型で」という要望は却下された。
ユウキとファーリーの欲望同士のぶつかり合い。
召喚べるのも従えられるのも1体だけなのだ。
当然、お互い自分も白梅のお裾分けを貰う気満々なのである。
一見正論に聞こえるような取って付けた理由でフェチ論を炸裂し合う。
議論は朝が明けるまで続いたが結論は出なかったところ、一人、ぐっすりと寝た白梅が「そういえば…」と話し始めた。
「狼人族の神様の話の中で、人の姿にも狼の姿にもなれる神様がいる。って白梅は聞いたことがあります。」
「あらいいわね。」
ベッドに突っ伏したままファーリーが返事をする。
白梅は普通性癖の亜人なのでいくら緊急事態とはいえ、せめて相手はやっぱり人型がいいのだ。
「えー、浪漫が足りないー。」
ソファーに突っ伏したままのユウキが不満を漏らす。
「その神様は人の姿と狼の姿の間の姿である人狼の姿の時が一番強いそうです。」
「白梅。」
「はい。」
「それを早くいいなさいよ!ファーリーどう?」
「よくってよ!」
「じゃあ、白梅、その人狼の神様の資料集めてきて。その路線でいくわ。」
「白梅、了解したのです。」
白梅が用意した資料は狼人族に伝わる民話だった。
いわゆる異類婚姻譚である。
人の娘に惚れた狼の神様が人に化けて近づき夫婦となるが、床入りの際に満月のせいで人狼の姿まで戻ってしまう。
それでも娘は受け入れたが、失意の神様は狼の姿に戻り身を隠してしまう。
そんな失意の神様の祠に、こんどは娘が狼のフリをして訪れると神様は大層喜び再度結ばれ、改めて二人は夫婦となった。
そのこどもが、とある狼人族の始まりである。
と、いった内容である。
それを読んだユウキとファーリーの興奮度合いは絶対に人には見せられないと白梅は思った。
飢餓状態の所に最高のステーキを出されたようなものだ。
つまり、下手すると消化しきれずに死ぬレベルなのだ。
今晩、この本を読みながら寝るのは僕だワタクシよ論争が勃発するかと思われたが、それを予見していた白梅が2冊用意していたことによって、それは回避された。
白梅は生きていてこんなに褒められたことは初めてだったと、後で語っている。