第2話 「勇者 ユウキ」
新連載です。
世界観や主人公の能力などは「サキュバスさんの家族計画」と同じだったり類似してたりすので、スピンオフ的なお話ですので、よかったらそちらの作品もどうぞ。
「サキュバスさんの家族計画」
https://ncode.syosetu.com/n3240ez/
ユウキ=マドノはケモナーである。
しかもその度合にこだわりがある。。
「耳と尻尾だけ?帰れ!」
とかいうタイプである。
「人語を話すだけのケモノ?浪漫が足りなくない?」
とかもいうタイプである。
「こう人の理性と獣の野生のバランスが大事なのよ!」
とか力説して引かれるタイプである。
で、実際引かれてぼっちになって、人間不信をこじらせ、ぼっちとケモナーを悪化させて、登校拒否経由引きこもりとなった。
そして夜のコンビニに買い出しに行く最中、離れていた隣の犬を見ながら、「ジョンってある日突然二足歩行になって『ずっとお姉さんの事が好きだったんです。』とか尻尾ブンブン振りながら告白してこないかなー。でも身長は僕より高いほうがいいなー」とか妄想しているところを居眠り運転しているワゴン○に引かれて死ぬ。
という末路を前の世界ではたどっていた。
死後、なんか神様っぽい声に「異世界に勇者として呼ばれているけど、どうよ?」的な事をいわれて、「亜人的なケモノがいる世界なら行く」と即答するような人間であった。
いや、本人は夢だと思ってたので欲望がチラッと、というかギラッと出てしまったらしい。
「OK!いるいる。じゃぁよろしく。」的な事を言われてやってきた世界で、最初に見たものは教会のステンドグラスだった。
教会所属の勇者として召喚されたのである。
教会の女勇者として清さを求められたのである。
修道院に放り込まれたのである。
ケモノどころか男もいねえ!しかも周りは金髪の外人さんばかりで落ち着かねぇ!
とはいえ、金髪の外人さんの男が目の前にいたとしたらキョドって会話も無理なのは確実なのだが。
さらに言えばケモノどころか亜人?いや、ちょっと…とか周りは言う環境なのである。
逃げた。
めっちゃ頑張って逃げた。
結局は捕まるのだが、その時、かばってくれたのが白梅である。
と、いうか白梅という名をつけたのも彼女である。
その恩人にすら
「アルビノ猫娘!惜しい!もう一声!」
と、いうような娘であった。
その上、「いやーさすがに飢えてたんだわ。もう一声じゃなくて二声くらいよね。」とか後で本人目の前にしていう娘でもあった。
結局、教会から「この娘やるから大人しく従え。」と、説得され、「空きっ腹には食べ物ならなんでも美味しい」的にOKを出して、白梅はユウキの奴隷兼従者の一員となった。
ひどい迷惑な話である。
修道院の「いや亜人はちょっと…」とかいう環境に、奴隷兼勇者の従者として放り込まれた白梅のストレスは当然マッハであった。
だが、そんな環境でも白梅とユウキに優しく接していたのがファーリーである。
母親がユウキと同じく召喚された勇者であること、そのためハーフ顔で威圧感が他の修道女と比べ少ないこと、動物好きな事、白梅にも優しいところ。
ファーリーはユウキにとって数少ない友人になれそうな人物であった。
そして、当然のようにユウキは距離感を間違えるのである。
「僕、ケモナーなんだよね。」
「けもなぁとはなんです?」
早口で長くなる問いであった。
普通の人ならウンザリするくらいの時間、息を荒く肩を揺らして語り終えたユウキに答えたファーリーの言葉が
「わかりますわ。でも、」
から始まる早口で長くなるアンサーであった。
普通の人ならウンザリするくらいの時間、息を荒く肩を揺らして語り終えたファーリーに答えたユウキの言葉は
「お、おう。」
結果から言うと、ファーリーもケモナーであった。
ただ、ズーフィリア寄りのケモナー。
ケモノどころか獣が好きな重度の女であった。
良く言えば、この獣も話が出来れば良いのに…と思っているようなファンタジー寄りの好みである。
男性不信からそうなったとのことだった。
女しかいられない場所でも動物なら大丈夫でしょ?からこじらせた女でもあった。
守備範囲は違うものの同系統のジャンルである。
それにこんな話題を話し合える変態はもう現れないであろう。
お互いのそう思ったのか、こうして二人は友人となった。
同じ体育館を使うとはいえ、バレーボールとバスケットボールくらい違う感じな気もするが。
こうして白梅から一般常識を、ファーリーから身の振る舞い方や猫の被り方を教わったユウキは、正式に二人を勇者パーティーへと迎え、教会も王族と勇者の血を引く回復役の修道女ファーリーと、亜人奴隷とはいえ魔術使いの白梅を教会の勇者パーティーと認め、大教会所有の迷宮で鍛えさせた。
デミオークやらデミミノタウロスやらにダメ出しをするユウキや、魔獣もいいわね?とかいいだすファーリーを白梅がフォローしながらもレベルは順調に上がっていった。
そして限界が来たのである。