第4話 不穏な空気
2022.3.8
日本国 沖縄県 普天間市
普天間基地跡
10:22 JST
以前ここが在日米軍基地であった頃、普天間基地から飛び立ったヘリコプターが沖縄国際大学キャンパス内に墜落、大勢の人が亡くなった。そこから普天間基地は世界一危険な飛行場と呼ばれるようになった。
普天間基地の移設が日米間で合意され移転先は辺野古基地となったが一部の反対派が移設工事を妨害、しかし2019年に再開した朝鮮戦争後の在日米軍の縮小と、憲法改正による自衛隊の強化により辺野古基地は当初の予定を大幅に変更し、自衛隊が使用する事になった。
同時に那覇空港に駐留していた航空自衛隊第9航空団は辺野古基地に移転した。
ここで問題になったのは移転され空き地になった普天間基地跡である。そして沖縄経済に効果がある物を模索していた時、国会でカジノが認可されたのである、ただし3ヶ所のみとなった、1ヶ所は大阪に決まり、もう1ヶ所も仙台に決定した。そして横浜や釧路、福岡などがライバルにいる中、沖縄に決定されたのである。
そしてそのカジノの候補地となったのが旧普天間飛行場である。計画では北側を普天間公園として基地の36%を使用し、残りの64%のうちホテルに18%、アミューズメントパークに24%、カジノ施設に22%を使用する事で決定された。
早速基地移設が完了した2020年5月14日から工事を始め2年後の2022年3月8日にようやく完成にこぎつけたのである。
カジノ施設やホテルなどは近代的建築が用いられ、沖縄の自然に合った建築物となった。カジノ沖縄の主な客は訪日する海外からの観光客である。実に70%の客が海外からであり、国際クルーズ船などにも組み込まれたりしている。
2021年に建設中であった那覇空港の第2滑走路も完成した。航空自衛隊の部隊も辺野古に移転し、より一層空港のキャパシティを拡大した。
2020年、石垣島の隣にある下地島にある下地島空港を防衛省が買い取り、航空自衛隊下地島基地として新たに第10航空団を設立、F-2A/Bの改良型であるF-2Jを1個飛行隊配備した。
同時に石垣島、宮古島への陸自部隊の配備も完了し、日本の南西地域における防衛はより一層確実なものとなった。
2023年には辺野古基地に海上自衛隊辺野古基地が完成した。辺野古基地は大湊基地と同じく小規模な基地であるが護衛艦数隻分の停泊能力があり、2021年に進水した多目的揚陸艦の着岸も可能である。
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2022.5.23
日本国 首都東京
総理官邸 会議室
22:17 JST
夜10時台、霞ヶ関にある総理官邸では総理や官房長官、その他防衛大臣や外務大臣などが出席するNSA(国家安全保障会議)が開かれようとしていた。
「ではこれより国家安全保障会議を始める、今回の議題は近々起きるとされる中国の侵攻についてだ」
総理の侵攻との言葉を聞いた瞬間出席者が反応し、座り直す。
「では、外務大臣、説明を」
総理が担当である外務大臣に話を振る、外務省ではこの時の為、情報を集め続けていたのである。
「では説明いたします。中国、中華人民共和国は前々からの国の負債、企業の負債が溜まりに溜まっておりその負債総額はGDP比300%超えの日本円にして3850兆円あると判明しました。」
中国は前々から国営企業の負債を隠し事業を拡大、いわゆる自転車操業をしていたのである。普通なら貸さない経営状態であっても各銀行は共産党の圧力により貸していたのである。これがここ最近中国系企業が急速に成長してきた理由である。
「以前は隠せていたのですが、その債務も隠せないほどに拡大してき、2018年にアメリカと中国の間で起こった米中貿易戦争により崩れました。
国営企業は次々と倒産し、それに伴い地方政府も財政破綻、それに伴い国民のこれまでの不満は爆発、反共産党デモになり北京では連日、あの天安門事件以上の人がデモを行っています。」
ここまで言って出席者は何が言いたいのか悟った。彼らもその道のプロでありそんな事直ぐにわかるのである。
「なるほど、その共産党への不満を他に吐き出させるという訳だな?」
「そういう事も考えられるかと、既に人民解放軍に不穏な動きが見られます」
人民解放軍の不穏な動きは打ち上げている情報収集衛星により既に日本は察知済みである。同じく偵察衛星を打ち上げているアメリカやアメリカから情報を提供してもらった韓国も同様である。
「防衛大臣、沖縄方面隊の戦力の説明をしてくれ」
「分かりました、海上自衛隊は辺野古基地に護衛艦が4隻停泊しています、あとは小型の警備艦などです。」
「海上幕僚長、どうするんだ?」
「つい最近空母が配備された横須賀の第1護衛艦隊群が随時待機しています。佐世保や呉などの各基地の艦隊も随時待機しています。」
「なるほど、分かった。次に空自の方は?」
「現在沖縄地域方面隊には辺野古基地に那覇基地から移動してきたF-15DJを有する第9航空団が配備されています。
更に下地島基地にはF-2Jを有する新設された第10航空団が配備されています。また嘉手納基地には在日米軍のF-35AやF-16などが展開しています。」
「なるほど、アメリカはこの事を当然知っているのか?」
「そうですね、非公式会談ではその話ばかりです。嘉手納基地を手放さなかったのもこの為かと。
後この沖縄方面隊以外にも西南地域方面隊の築城のF-2A/B、春日のF-35JA、新田原のF-15DJを誇る3基地が援護します。」
「なるほど、陸上自衛隊はどうなんだ?」
「現在南西諸島地域には沖縄本島の辺野古駐屯地を中心とする那覇駐屯地、下地島の下地島駐屯地、宮古島の宮古島駐屯地、石垣島の石垣島駐屯地、与那国島の与那国島駐屯地があります。
その中でも宮古島駐屯地と石垣島駐屯地には陸上自衛隊が誇る12式地対艦誘導弾を有するミサイル部隊が配備されています。」
陸上自衛隊の再編成でこれまで9個師団と5個旅団あったのを13個師団と5個旅団まで増やし、第5旅団を師団に増強し、旅団は第13.14.15.16.17旅団の4つとなった。
更にそのうち第13旅団と第14旅団は機動力を重視した機動旅団であり、第16旅団と第17旅団は海兵隊である。ちなみに沖縄を守るのは第12旅団である。
「後、海兵旅団にはいつでも出動できる常時発令とし、デフコンレベルで言うと3です。」
「そういえば、さっきは聞き流したが空母の艦載機パイロットは大丈夫なの?就役したばっかでしょ?」
「自衛隊への空母導入が決まった2019年にはパイロット達がアメリカ海軍に臨時入隊し、第7艦隊以外の各空母戦闘群に配備されたのですよ。
なので中には臨時入隊中に朝鮮半島で実戦を経験した人もいます。」
「そう、でも大きさが全然違うでしょ?」
そう言ったのは米崎警視庁長官である。彼女は警視庁長官初の女性長官でありながら子供を2人育てる母でもある。
「アメリカ海軍の原子力空母は10万t級、海自の空母は6万t級です。まぁ確かに大きさは違いますが、空母という狭い場所に離着陸する事に変わりありませんので特に問題はありません。」
「まぁ戦闘機などの航空機を60機近く搭載出来るからな、米軍さんは80機近いけどな。」
「日本には毎年70兆〜80兆円程の金を軍事費に掛けられる余裕も無ければ、毎年100兆円借金する度胸もありません。」
花田財務大臣が意味深に言う。しかし確かにアメリカと日本ではGDPも国力も軍に対する国民の考えも全然違うのである。一緒にして考えるのは無理である。
そうして会議はまだまだ続いていき、ようやくひと段落して会議が終了したのは日付が変わった夜中の1時過ぎであった。