第2話 財務省の努力
2019.7.24
日本国 首都東京 霞ヶ関
財務省 本館
13:30 JST
平成の次の元号が光和になった初めの年である光和1年、新天皇が即位した。
現在財務省では2020年度の国家予算を決める予算委員会が行われていた。5月に行われた憲法改正により防衛関係予算はGDP比2%はいきなりはいかなくても2020年度防衛関係予算はGDP比1.2%はいくと国内外の報道機関は盛んに報じられていた。
しかし日本の財政は一般会計のおよそ100兆円のうち毎年30兆円弱は国債という赤字額である。その為大幅な防衛費の上昇は無理な話であった、しかし世論は防衛費の上昇を望んでおり毎年の予算を決める財務省は頭を抱えていた。
2020年度に防衛省が請求した予算は6兆5700億円である。2019年度の防衛関係費は5兆3200億円である為1兆2500億円の上昇である。財務省としては他を削ればなんとかなる額であった。
しかし来年にはアメリカの協力の元通常型航空母艦の1番艦が導入される予定である為、2021年度にはもっと増える予定である。2019年度の日本国のGDPは542兆円である、つまりGDP比1.2%とは6兆4920億円である為防衛省としてはこの伸び率は維持してもらいたかった。
「防衛費のGDP比1.2%は財務省が要請したからなぁ、最低でも1.2%は認めないと、はぁ。」
このため息をついた人が財務省のトップである花田財務大臣である。元々経済学者であり、自衛隊強化派である為自衛隊の予算上昇には賛成なのだが、まさか世論がここまでだとは思っていなかった。
更に防衛関係費が圧迫して他の予算が減らされる事を危惧した財務省が防衛省に2020年度予算はGDP比1.2%以内にしてください。と要請した手前認めない訳にはいかなかった。
国会前では2000人ほどの右翼が自衛隊強化と防衛予算の大幅な上昇を要求して、連日デモをしていた。公安条例に基づき公安警察に届け出をしている為取り締まる事も出来ず、更に右翼化した事もあり日に日に増えているのである。
「花田財務大臣、とりあえず防衛関係費の事は置いといて他の予算を決めませんか?これじゃあ話しが前に進みませんよ。」
会議が中々進まない為部下が取り敢えず進めようと花田大臣に提案をする。
「そうだな、しかし削減するとしたら何処だ?」
「やはり大きな所から出すと、社会福祉関係費ですかね?」
「今年度から年金も制度が変わるから多少減らしても問題ないはずだ、厚生労働省の要請はどのくらいだ?」
「厚生労働省の2020年度請求費は41兆7600億円です。」
「ん?去年より少ないな。」
「ええ、制度変更もある事ながら年金の運用で為替が良くて30兆円もの利益を上げたそうです。」
実はあまり知られていないのだが、年金を運用している日本年金機構は年金を海外の国債などを購入し、運用しているのである。しかし運用しているの為当然利益も出れば損失も出す。しかし長い目で見ると損失より利益の方が大幅に多いのである。
これはマスコミがもし10兆円利益を出しても新聞の片隅にちょこっと報道するだけであるが、1兆円損失した時には大々的に報道する為である。報道機関は批判記事を出した方が売れるのである。
「なるほど、確か去年は44兆3700億円だったよなぁ。」
実は花田大臣経済学者であり記憶力もかなり良いのである。なので5年前の何々の予算は?と聞くとすぐに万の単位まで答えれるのである。馬鹿は大臣になれないのだが.......
「ええ、も少し減らして良くないですか?来年度は消費税10%に上がった為税収も増える事が見込めますし、」
「40兆台くらいかな?減らしすぎるとダメだ、まぁ景気が良くなって生活保護受給者が減っている事もあるんじゃないのか?」
「そうですね、40兆円くらいが妥当です、更に来年度から和歌山沖のレアアースの商業採掘による税収の増加も見込めます。」
2020年には和歌山沖でのレアアースの商業採掘が始まるのである。独立行政法人である、日本海洋研究開発機構が主体となりその他の大企業が参入するのであり、レアアースで得た利益の30%は国の収入となる。
「では、後は各自で煮詰めてくれ、5日後にまた再度会議を開く。」
「「了解。」」
そしてその後2回会議を開き結局2020年度の防衛関係費は少し減らされ6兆4750億円で決定された。社会保障費は40兆7541億円となった。
こうして財務省の職員の努力?によって2020年度の予算は収入78兆4257億円、支出93兆5428億円となった。
毎年30兆円弱国債で賄っていのが2020年度の国債発行は15兆1171億円となり、国債返還が27兆6425億円でなんと国債が減少したのである。
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2019.8.7
アメリカ合衆国 首都ワシントンD.C.
ホワイトハウス 大統領執務室
19:42 現地時間
「大統領、日本の防衛予算が決まりました、GDP比1.2%の6兆4750億円です。」
「たった1.2%か?」
「2019年はGDP比1.0%でした、いきなり2%にする訳にはいかないでしょう。」
「まぁ最終的に2%にするならいいけどさ、今私は機嫌が良いのだよ、何故だか分かるか?」
この大統領が最近機嫌が良い理由など1つしかない、報告に来た担当官は当てていいのかな?と思い、
「さぁ?分かりません、なんですか?」
「ふふふ、それはだな、日本がF-35を80機近く追加購入してくれたからだよ。」
この大統領の名前はドナルド•ポーカー、共和党出身であるアメリカ合衆国の大統領である。このポーカー大統領はdeal 取り引きがとても大好きで日本にF-35が売れたのが嬉しかったのである。
「オスプレイもライセンス生産で生産するみたいですよ、後ついでに言うと日本の2020年度の国債発行は15兆円弱であり、27兆円の返済な為12兆円国債が減少しました。」
国債を減らした日本とは対照的にアメリカは2018年に70兆円台だった国防費は2019年に80兆円、2020年には86兆円まで急激に上昇し、2019年度の国債発行はなんと日本の一般会計予算と同じ100兆円である。
「そうか、中国が崩壊してくれたらかなり国債は無くなるのだがなぁ。」
そんな大統領の事を呆れて無視し、担当官は報告を続ける。
「今の国債残高は2700兆円であり、日本は780兆円です。」
「日本とアメリカじゃあGDPが違う比較対象にはならんよ。」
「後大統領、日本の大手自動車会社2社がサンフランシスコとフロリダにそれぞれ1ヶ所、アメリカ向けの自動車工場の建設を発表しました。」
「おお!そうか、なら日本への追加関税は取りやめよう、それで何人の雇用を生むのだ?」
「合わせて2400人です。」
「ふむ、つまり新たに2400人が私の支持者になる訳だな。」
「では、これで報告は終わりです、では私は戻ります。」
「うむ、御苦労。」
なんでそうなるんだよ!と思いながら担当官は退出する。退出し、廊下を歩いているとなんで国民はこんな大統領を選んでしまったんだ?との思いがこみ上げる。
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日本国憲法第9条 改正前
第1項
日本国民は正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
第2項
前項の目的を達するため、陸海空軍とその他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
日本国憲法第9条 改正後
第1項
日本国民は正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、日本国民の安全や生命、財産を守る為軍隊を保有する、但し侵略やそれに該当する行為を行う事は、永久にこれを放棄する。
第2項
前項の目的を達するため、陸海空軍とその他の戦力は、これを保持する。国の交戦権は、これを認める。
第3項
陸海空軍、その他の戦力は日本国民を守る為に存在しているのであり、その最高指導者は文民である内閣総理大臣である事。