第17話 探索と接触
2035.5.2
与那国島沖 300km
海上自衛隊 第6護衛隊
09:52 JST
転移から2日後海上自衛隊第1護衛艦隊群に所属する第6護衛隊4隻は与那国島沖を航行していた。
「まだ見つかっていないか?」
第6護衛艦隊旗艦である巡洋艦『やまと』の艦長の国上一等海佐が言う。
「現在ヘリや無人機を飛ばして探していますがやはり海は広いですね、全く見つかりませんよ。更にGPSが使えませんしね。」
巡洋艦『やまと』の副艦長の野口二等海佐が進言する。
「海を見ても分かりますがおそらく地球と同じくらいの星なんでしょう。しかし本当に陸地があるとは限りませんしね。それに..........」
野口二等海佐が言いかけた時だった。
『こちらコントロールセンター、陸地を発見!繰り返す陸地を発見。第6護衛隊から南に320kmの地点にある。』
「ついに見つかったか。よし全速前進。」
「あいあいサー!」
そして第6護衛隊4隻は全速力で発見された島に向かった。現在第6護衛隊を始め8つの護衛隊が島や大陸などの陸地を探しているのである。
〜5時間後〜
「これですか、」
巡洋艦『やまと』内にある会議室で艦長や副長、そして第6護衛隊と一緒に並走してきた輸送艦『しもきた』の艦長と『しもきた』内に乗員指定は第16海兵旅団第2大隊所属の600名の大隊長が話していた。
輸送艦『しもきた』はおおすみ型輸送艦の3番艦であるが改装し、ウェルドックを廃止し、純粋な輸送艦となったのである。今回は橋頭堡を建てるためにMV-22JAなどのヘリコプターを搭載しているのである。ちなみに改装により艦載エレベーターは大きくなった。
「しかしこの島にある湾は良港ですよ。この場所には滑走路を建設する事だって可能だ。」
「まぁ、とりあえず上陸しない事には始まらん。二堂大隊長、早速貴官の率いる部隊を降ろそう。」
「はい!ありがとうございます。ところで交戦規定はどうしますか?」
「とりあえず隊員の命が最優先だ、遠慮はするな、だが余計な争いは避けるように。」
「艦長、UAVで島を偵察中ですが人らしきものどころかその痕跡もありません。無人島ではないでしょうか?」
「まぁ、念のためだよ念の為、じゃあ二堂大隊長殿、頼んだよ。」
「了解しました。」
「そう心配するな、安心しろもしなんか変なウイルスに感染してもこの155mm単装砲で土葬してあげるから。」
「あの、それ別の意味で心配なんですが。」
「まぁ与那国島の303沿岸監視隊駐屯地まで600km程度だ、オスプレイなら往復可能だ、安心しろ。」
「安心は出来ませんが行ってきます。」
防衛省からもし上陸隊が未知のウイルスに感染したなら艦砲で始末しろとの命令もあるのだ。
その事を二堂大隊長もその部下達も知っている。その為心配でもありまた安心でもあるのだ、もちろん全員覚悟は出来ているのだが。
しかし幸いな事にそのような事は起こらず採取された植物も虫も地球の物となんら変わらなかったのである。
その後第16海兵旅団第2大隊600名はオスプレイや小型艇で島に上陸、橋頭堡を築いたのである。そして感染の心配はない事を知った防衛省はその後施設科などを送り込み臨時駐屯地を設立した。
その後民間企業の資源調査隊が派遣され数日に渡ってボーリング調査された。すると驚くべき事が判明した。
2035.5.12
日本国 首都東京
総理官邸 会議室
23:15 JST
「それで例の見つかった島の調査結果はどうだったんだ?」
吉田総理が期待を込めた声で堤資源エネルギー大臣に確かめる。
「落ち着いて聞いてください。4日に発見された島に460億バレルの石油資源が埋蔵金されている事が判明しました。」
「460億バレル?それってどのくらいの量がなんだ?」
荒瀬財務大臣が堤大臣に質問する。おそらく出席者の3分の1近くが石油の単位など分からないだろう。普通は何年分ときくからだ。
「現在の日本の石油の年間使用量が15億バレルです。460億バレルつまり日本を30年に渡って養える量の石油です。ちなみにイギリスの北海油田は埋蔵量が420億バレルです。つまり北海油田並みという事です。」
「これでなんとかたすかったか、」
柳瀬経済産業大臣が呟く流石に38億バレルの石油のみでやるのは不可能である為採掘先が見つかってホッとしているのである。
「まぁ、今回の1番の朗報はそこではありませんけどね。」
「ええ、そうですね。」
「やっと文明に接触出来ましたね。」
そうやっと文明に接触を果たしたのである。言葉は通じるか?という問題もあったのだが何故か相手は日本語で話しかけてきたのである。これで外国語を教える所はすぐさま閉店である。
「それで交渉が完了しました。接触した国の名前はノルマーク王国という名前であり共和制をとっており、人口は3700万人であり国土面積は78万平方キロメートルであり約800の大小様々な島を所有しています。
文明レベルは1930年代〜1940年代の間であり、大陸ごと1年前に転移してきました、現在ノルマーク王国の仲介の元レアリスタ大陸と呼ばれる大陸の他の国家と交渉中です。」
「なるほど、ご苦労だった。まぁ話は変わるが実は核兵器の存在を国民に発表しようと考えている。」
一同参加者全員は驚いた総理以外に驚いていない人は官房長官と防衛大臣くらいである。
「ちょっと総理、どういう事ですか?」
「アメリカの核の傘を離れ核兵器が無い為心配する声も多い。もちろん国会での論争も覚悟している。だがいつまでも黙っている事は出来ないと思う。」
「国務大臣、最新の世論調査の結果は?」
「昨日集計が完了しました。核兵器保有に賛成35%、反対60%、無回答5%です。しかしこの反対の声内訳を見ると考えが変わります。核兵器の保有に絶対反対20%、アメリカの核の傘がある為必要無い50%。
今は必要無い20%、無回答10%です。つまりアメリカの核の傘も無く経済制裁も無い今なら発表する絶好のチャンスだと言えます。」
戦後90年経ち原爆や太平洋戦争経験者がほぼ全て亡くなったり、アメリカを信用出来ない人が増えているのが全ての理由である。20年前なら20%対80%で反対だったであろう。つまり戦争を知らない国民が殆どをしめるのである。
「明後日記者会見を開き国民に核兵器の保有を正式に発表する。そしてその運用は全てSLBMであり巡航ミサイル運用という事もだ。」
「現在アメリカから購入した20M級の核爆弾は210発存在します。この国民への発表により財務省もSLBMのプラットホームである『あすりゅう』型原子力潜水艦の2隻の追加予算も認めてほしいです。」
現在SLBMのプラットホームである『あすりゅう』型原子力潜水艦は4隻ある。しかし防衛省はこれを6隻体制にしたい構えだ。
「国民の理解があるなら追加建造は構いませんが20年前みたいに毎年30兆円借金する事は避けたいですね。」
「400兆円へらしたろ?」
外国資産を売却したり転移により外国向けの国債が無くなった為800兆円あるうちの半分である400兆円が自然消滅したのである。このまま戻らなかったらそのままである。
「前のペースなら13年で元どおりになりますよ。」
「まぁ今年度の税収次第だな。」
「そうですね、まぁ30年代〜40年代なんだろ、核兵器を保有しないとも限らんし、また何処からか転移してくることも考えられる。」
「とりあえず今回はこれでおしまいだ!次回は24日に開く、では解散。」
吉田総理の言葉で各自席を離れそれぞれの担当者と電話などをし始めた。彼等は最近まともに寝ていないのだが、国の危機に対して仕事している為誇りに思っているのである。このところが黒光り職場と呼ばれる由縁である。
通常会社は労働基準法を守っているのだが、非常事態宣言下における公務員の労働基準法除外の為である。しかしその分別の日に休みがあったり夜勤手当もかなり出ているのである。しかし数ヶ月家に帰られない事もしばしばである。
しかしまだまだ家には帰れそうもない。