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短い人生だけど、わたしたちは幸福に暮らしています   作者: 鈴木智一
第二章 異世界アドベンチャー
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再び、金色の四姉妹

 円形の穴の底に広がる町・フィーガウルワ。到着したその日にはまず、それぞれの家を決めた。

 数えたところ、密集した石造りの家は全部で十三軒あった。より中央に位置した家ほど劣化が少なく、ユナミールとネムールは真ん中に位置する家に決めた。他にも空いている家はあったのだが、ユナミールの強い希望でふたり一緒の家になった。そのすぐ隣の家にレミリネア、さらにその隣の家が飛鳥の寝床となる。


 内部は思ったほどの生活感が残されておらず、閑散としていた。それはどの家も似たようなもので、誰か、最後の一人が亡くなるか離れるかした時には、ほとんど片付いた状態だったのだろうと思われる。使える家具もあったりなかったり色々で、数はそれほど多くない。食料の類は、わずかに乾燥した植物の残骸があるばかりだった。そもそも、それこそが一番大きな問題だったろう。食料の入手は難しいのだ。風の大地では、動物と出会うことすら滅多にない。

 ポッチヤオ山あたりまで行って捕獲する必要があるだろうと思われた。


 しばし休憩をとってから、最初の話し合いが行われる。レミリネアの家に、他の三名が集まった。


「これから先の四年と少し、我らはこの場所で暮らすこととなる。問題は食料だが、この地で栽培可能なものは栽培するぞ。そのための種も持ってきた」


「いつの間に!」ユナミールが目を大きくした。


「それに加えて、風の大地とて食べられる植物がなにも自生していないわけではないからな。探せばあることはある。ポッチヤオ山まで戻れば肉も得られよう。我らならば問題なく暮らしていける。それよりも大事なことがある」レミリネアは飛鳥に目を向けた。視線が交差する。「約束の時の準備だ。これがなにより大切だ。石と鉄を生成して、我はある道具を作らねばならない。まずはそれが最初だ。まあ、半年もかからぬはずだが。簡単に説明すると、巨大なマジカンだ。我はそれに、数年がかりでイルフィームの力を蓄える使命がある。詳細は時がきたら話すが、その道具と膨大な量のイルフィームのエネルギーは絶対に不可欠な要素なのだ」


 まだ具体的なことはレミリネア以外の三人にはわからなかった。なんにしろ、レミリネアの行動には従うしかない。それが必要なのだと言われれば、そうなのだと納得するよりない。


「まっ、それは我に任せておけば問題ない。あんたらは……食料当番ね」


「うんわかったー任せてー!」


「アスカはとにかく怪我なきように、約束の時に備えておくといい。あんたの命だけは、なにがあっても守らねばならないからな。さて━━」


 と、レミリネアはなにかをはじめる様子。ネムールの問いに「姉妹たちの現状を確認する」と答えた。

 家を出ると、隣の家との間にある地面に穴を掘る。精霊の力を利用して地面の土を削り取り、あっという間にちょうどいい大きさと深さの穴が出来上がった。そこへ更にミズレインの力でもって水を張ると━━おそらく今でもミナリュカとガンチョンが暮らすであろう、あの場所以来の水溜まりが完成した。

 レミリネアの姉妹たちとの通信手段となる、魔術の水鏡だ。


「ひとりあればふたり(中略)ママのおっぱい、しゃぶりんこ」


 詠唱を終えると、いよいよ水鏡が通信手段として機能する。地面に水を張って鏡にするのはレミリネアのみで、他の三人の場合、それぞれの眼前に空気中の水分を利用して姿が現れるらしい。要するにレミリネアの魔術が大元になり、他の姉妹たちと会話ができるというものだった。同時にそれは、レミリネアが姉妹たちの中で最も強大な魔力を有しているということでもある。だからこそ彼女が一番の、最も大切な役目を担っているのだ。


『あっ……あれ、このタイミングの連絡はまさか、もしかして目的地に━━』


「着いとるよ、とっくに。で、レイミット、あんたのうしろにラビリンの姿があるみたいだが、あんたそれ連れて歩いとるのか?」


 姉妹の中で一番ぱっちりとした大きな目を見開いて……なにやら脂汗でも流しそうな渋面になったレイミット。


『あー、あーと、えーと……ど、どうもすいませんでしたぁぁぁぁーっ! 我はまだラビリン村にいますぅぅぅぅーっ! はいっ、今すぐもうさっそく目的地に向かうから許してっ!』


 言って、背を向けたレイミットが遠ざかる。そのまま、水鏡には映らなくなってしまった。


「あのコ、大丈夫なの?」


「……いや、うん、まだ間に合うから大丈夫だが……レイミットのやつ」


『やっぱり、ほんまにほんまもんのアホやったなレイミットは。これであかんよーになったら、マジであいつ細切れ肉にしたるわ』


 本当にやりかねない表情でこわいことを言ったのは、変わった話し方をするレミリネアの姉妹の一人・レナリエルだ。飛鳥たちが見下ろす水鏡の中で、凶悪そうな眼をしている。


『我もなんとなく予想通りだったなぁ。こうなるような気がしておった』


 レナリエルの姿に重なって浮き上がった姿が、レナリエルを上書きして鮮明になる。最後の一人、レムリアーナだ。


『レイミットは昔からだらしがなかったからなぁ、我らが一緒の時分でさえなかなか行動せんかったのだ、一人になったらますます行動せんのなんか、わかっておったのになぁ』


「まだ時間はある。このタイミングで連絡しておいてよかったな。黙ってたらレイミットはまだ動かなかったはずだ」


『ほんまにあのアホンダラァ……故郷のツンボーリ川に叩き落としたるわー』


 また浮き上がってきたレナリエルが言うが、それを実行するには、また再び姉妹が集う必要がある。その時が来るとしても、すべては約束の時に成すべきことを成せたあとの話になる。失敗すれば、会うまえに寿命が尽きる可能性も考えられる。どうなるのかはまだ、誰にもわからないのだ。


「とにかく、これでレイミットも大丈夫だろう。あとは、我だな……」


 レミリネアの仕事。それはまず、必要な道具を作ることだった。

 いまだかつて誰も作ったことはないのだが、そもそも必要のないものなので、作れたとしても作ったかどうかはわからない。いずれにしろ、必要量の精霊の力を集めるには、レミリネアのような並外れた魔術師でなければ難しいだろう。


『あんたの心配は、まあ、しとらんよぉ。我らの中で最強は、レミリネアだからなぁ』


『せやけど失敗は許されんで。大丈夫か?』


「うん、多分。自信はあるが、それでもやってみなくてはわからんがな。まあ大丈夫だろ」


 自信の表れか、わりと気楽に答えたレミリネア。その後も少しだけ言葉を交わしてから、姉妹たちの会話は終わった。水鏡が元に戻り、レミリネアとその横で見ていた飛鳥たちの顔を映した。


「あのレナリエルってやつの話し方、おかしいけどなんで?」


 ネムールがずっと気になっていたことを尋ねる。これまであんな話し方をする人間を見たことはない。しかしながら、なぜだか言っていることはすべて理解できるので、不思議だった。


「我も詳しくは知らんのだが、レナリエルが集めた文献の中に記された言語のようだな。書かれた文字だけから、あいつが独自に解析して話せるまでになったのだ。太古、この世界にあった言葉のようだが、今はもうレナリエル以外に使う者のない言葉だよ」


「ふーん、でもなに言ってるかわかったよ?」


「ユナミールにもわかるなら、みんなわかる言葉ってことね。わたしも教えてもらおうかな」


 どうしてか興味を掻き立てられたらしいネムール。レナリエルの話し方が気に入ったらしい。

自分の世界は終わっても、世界はまだ続きます。死ぬまでは生きなくちゃならない、だからまだ生きている。ただそれだけのユナミールです。おみくじは小吉でした。新しい元号は「鎮歩」だと予想します。


次回「風避け」


チェックしてくださいね!

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