時間は止まらない
バイチャリで気持ちよく走行し、とてもいい気分だった飛鳥たち四人は、町の入り口に人が大勢集まっていることに気がついた。
出迎えにしても、多すぎる。
町の大半の少女が集まっているように見えた。なにかあったのだろうか━━そう思いながら近づくと、走ってきたのはケシナだった。
頭にキモッシーのない、ノーマル状態のケシナ。その顔は、泣き顔だった。
嫌な予感がする━━そう感じた時には、ケシナの声が耳に届いた。
「町長がしんだー……うあああーん!」
(町長━━つまり、リティファさんが……死んだだって?)
あまりにも突然の出来事に、飛鳥もにわかには信じられない。つい数時間前に喋った人間が、今はもういないだなんて……とても納得できるようなことではなかった。
「うそ……そんな……うぐっ、ひぐぅ…………」バイチャリを走らせたままで、ユナミールはもう泣きはじめてしまった。
ネムールも涙目だが、ユナミールよりはまだ気持ちを抑えていた。
飛鳥ですらショックが大きいのだから、ネムールにとっては更に大きな出来事であろうと思われる。
レミリネアはいつもの無表情だったが、内心ではどうだかわからない。
彼女とて、人の心はあるのだから。
少女たちの中心にいたのはエレーナとミミーネだった。リティファがいなくなった今、最年長となった二人が、そこにいた。
「町長が、亡くなりました」
エレーナが、毅然とした態度で告げる。悲しみを越えて、最年長であるという自覚だけが、おそらく彼女を支えていた。
「数時間前、急にわたしのところへきて━━『わたしの命が終わる。あとは頼むね、エレーナ』と言って、それから、もう数分後には亡くなりました。リティファのお砂はさきほど、ひんやり洞窟にみんなで撒いたわ」
「リティファさん、二十歳だったから……」ネムールが涙をこらえた表情で呟く。
やっぱり、強がってはいても、その悲しみは他の少女たちと変わらなかった。ユナミールのように大泣きしていなくても、心の中では泣いている。
次の町長は、わたしがやります━━そう、自分で言ったエレーナ。同い年であるミミーネと相談して、そう決めたようだ。二人は共に十八歳だった。
「お姉ちゃん、うぐっ、へぐぅ、がんばびっで
ねう~」涙でぐちゃぐちゃなユナミールは、エレーナに抱きついている。
新しい町長は、他のみんなでサポートしていく。そのようにして、今までやってきたし、これからもそれは変わらない。
リティファの死によって更に結束を固くした少女たちは、町の中へと戻っていった。
集会所として町の中心に建てられた建物に再度集まると、いろいろな話し合いがなされた。
リティファが死んだことで空きとなった彼女の家には、ひとつの家に四人で生活していた少女たちの中からフラニャとメイナの二人が移ることに決まった。
フラニャは飛鳥を見るたび色仕掛けをしてくる少女で、ネムールの天敵の一人。メイナは明るく元気なヌクモフ係の女の子だ。
エレーナはリティファの空き家に移るよりも、今まで通りにユナミールや飛鳥と同じ家にいることを選択した。娘のエミリーナがいることもあったが、家に愛着があったのだ。それに、リティファの物を奪ってしまうようで、気乗りしなかったというのもある。これは、誰にも言ってはいなかったが。
「時間はけして止まらない。約束の時も確実に迫っておる。次は我らの番やもしれぬが、こんな死を繰り返さないためにできることがある。我らはそれをすればよい」
レミリネアが、集会所の外でユナミールと飛鳥の背中にそう言った。仕事を残していたとかで、ネムールは先に帰ってしまっていたが、きっと仕事は残っていない。
泣くために帰ったのだろうと、飛鳥は勝手に想像していた。
それにしても、本当にあの若さで寿命がくるなんて……飛鳥が元いた世界より一年の日数が長いので、厳密には飛鳥の思う二十歳より上なのだろうが━━そもそも成長速度が違うので、比較するのは難しかった。
いったいなにが原因なのか。病気か、呪いか。レミリネアは呪いではないと言っていたが、本当にそうなのか。
"約束の時"の大魔術で、解決なんてできるのだろうか。
━━オレの力が必要だなんて言われたけど、なにをすれば早死にを無くすことなんてできるんだ。
それは人間に可能なことなのか。神の領域ではないのか。考えても仕方のないことを、それでも考えずにはいられない飛鳥だった。
事実として前町長のリティファは……もうこの世にはいないのだから。
おひさしぶりです、ユナミールだよ。
急な雨で濡れると、飛鳥が恥ずかしそうにするのはなんでかな?
次回「暗い夜」
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