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真の自由を夢見て

今話はポーランド・リトアニア共和国が分割された後に起こった「コシチュシュコの蜂起」の指導者にしてアメリカの初代大統領たるワシントンの副官も務めた「タデウシュ・コシチュシュコ」をモデルとした話です。

 俺はアルメニア・エルムグランド共和国の古都と新都、そして最終的な目的地である新々都を地図の上から見ていた。


 古都と新都は幼少期を過ごし成人してからは軍務と政務で行き来したが懐かしい場所だし、新々都は数回しか行ったことはないが、閃光と言う名前通り輝かしい印象が今もある。


 しかし・・・・今はムガリム帝国から派遣されて来た貴族の子弟または商家の子弟で構成されたコンキスタドール達に占領されている。


 この地は俺達の先祖が定住し切り拓いた場所だ。


 それを余所から来た奴等が好き勝手に統治し、挙げ句の果てには名前を改めている。


 許せない・・・・・・・・


 だが奪われたなら奪い返せば良い。

  

 幸いな事に奴等は帝国から派遣されたと謳っているが実際は自分で志願した奴等で構成されているという情報は得ている。


 どうも奴等は帝国が掲げる「五大陸統一」の宿願を叶える為と言っているが蓋を開けると政争に敗れたと、家を継げないなどの理由で外の世界に眼を向けたに過ぎないんだよ。


 だから帝国から財政的援助は無く全ての軍は自腹で揃えたに過ぎないから傭兵色が濃厚で、おまけに帝国は7分の1という戦利品の一部を求めた上に官吏まで送った。


 つまり・・・・コンキスタドール達から支配権を奪おうと考えているのさ。


 もっとも表向きは行き過ぎた行為を帝国は批判している。


 逆にコンキスタドール達は帝国の宮廷の厚顔と貪欲な顔に呆れてはいるが、自分達の領土と権利を更に拡大させたい気持ちから仲間割れすらしている。


 マグナート達も自分達の利権を護る為だったり、拡大させる為に仲間割れをしたが・・・・人間なんて似たり寄ったりだな。


 だが、ここを突けば・・・・・・・・


 「奴等を海に突き落とせる」


 古都と新都は南北に分かれてあるし新々都はその中間に在るが、軍は四方に散らばっているから包囲して「各個撃破」できる。


 偉大なる大契約者は「兵力は集中運用」するのが肝心であり「兵力分散」または「逐次投入」は愚の骨頂だと称した。

  

 それを奴等はしている。


 つまり俺達が勝てる要因はある。


 ただし・・・・・・・・


 「問題は帝国だな」


 帝国がコンキスタドール達の行為を利益状の目的ではあるが咎めているのは確かだ。


 とはいえ手に入れた領土を見す見す手放す事はない。


 となれば・・・・帝国の正規軍が官吏と共にコンキスタドール達の代わりに来る可能性は十二分にある。


 それまでにコンキスタドール達を倒し国を磐石にしない元の木阿弥だ。


 しかし・・・・・・・・

  

 「例え俺が死んでも・・・・・・・・」


 「真の自由」を求め、それに続く者達は必ず現れる。

  

 なら・・・・やる価値はある。


 「・・・・各隊長に伝えろ。南北に居るコンキスタドール達と包囲し各個撃破するんだ」


 そして着実に解放した土地を味方に付けさせ、兵力から食糧に至る全てを蓄積し温存せよ。


 「仮に俺達が倒れても真の自由は死なない。決して無駄死にではないと」


 指揮官として言ってはいけない台詞だが・・・・それでも俺は言っておく事で・・・・死地に行く将兵の気持ちを少しでも緩和させたかった。


 部下も解ったのか静かに頷き・・・・残った俺は地図を見続けたが心は既に・・・・自分の未来を予想していた。


 「・・・・自分が死ぬと予想したな?」


 地図を見ていた俺に双眸に布を巻いた老人が声を掛けてきた。


 「あんたか・・・・いけないか?」


 相変わらず魔物みたいに気配を消して現れると思いつつ俺は問い掛けた。


 「いいや。私も同じ予想をしたから何も言えんさ」


 「あんたも死ぬと予想しているのか?」


 目の前に一人で立つ全盲の老人は聖職者でもあるが元騎士という経歴を活かし同士を集めた。


 しかし聖職者だけあってか雄弁で自信も常に持ち、行動しているが俺には傲慢にも見えた。


 そんな老人が死ぬと予想するのは意外だったが老人は静かに語った。


 「今回の蜂起・・・・我々が大勝を一度は得るだろう。しかし・・・・国王はおろか指導者が居ない」 


 今は俺達だが居なくなれば指導者は誰も出来ない。


 「この手の指導者に求められるは他者を従える事が出来る魅力に富んだ者達でなければならん。そうでなければ欲に眼が眩み忽ち瓦解してしまう」


 その点を理解し、それでいて他者を従えるだけの魅力に富んだ者は・・・・残念ながら居ない。 


 「おまけに帝国の事だ。一度、手に入れた領土を手放す事は先ず無い。必ず我々が奪回した祖国を奪い返すに決まっている」


 そうなれば圧倒的な兵力を送る事で・・・・ジリ貧に俺達は追い込まれて負けは確実だ。


 「恐らく持って1~2年。長くて4~5年だろう」


 「だろうな?だが、それだけ持っても十分だ。あんたも死ぬと予想しているなら・・・・解るだろ?」


 「あぁ。例え我々の代では叶わずとも・・・・真の自由という灯火は点く」


 その灯火を必ず誰かが引き継ぎ・・・・やがては大きくしてくれる。   


 「何より帝国の掲げる主義は何れ破綻する。あの手の主義は得てして・・・・最終的には自分の首を絞めるからな」  


 「そういう事だ。まぁ欲を言えば・・・・俺等の代で、真の意味で自由を勝ち取りたいがな」


 「確かに・・・・しかし、無理だろうな」


 全盲の老人は確信した口調で俺に告げるが・・・・まさに、その通りだった。

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 アルメニア・エルムグランド共和国歴---エルムグランド公国歴3094年4月20日。


 その日、俺はコンキスタドールの野戦病院で・・・・蜂起が鎮圧された事を聞いた。


 教えたのはコンキスタドールの一人で通称「黄金の亡者」と渾名され、公国の南部の3分の1を支配する奴だった。


 「漸く蜂起は鎮圧できたが・・・・馬鹿な男だな?」


 黄金の亡者は俺を見下ろし嘲笑した。


 「公国から逃げたのに舞い戻り蜂起の指揮官をして負傷し捕まるなんて私には理解できん」


 「そういう、あんたはどうなんだ?」


 あんたが治めていた土地を俺は奪い返し、あんたを一度は海に突き落とした。


 「俺は国を取り戻す為に戦ったから死んでも悔いは無い。しかし、あんたはどうなんだ?」


 自国でもないのに再び舞い戻って来やがって。


 「私は純粋に利益を取り戻す為に戦ったに過ぎん。別に君のように愛国心では無い」


 全く違うと黄金の亡者は答えつつ・・・・こう俺に告げた。


 「しかし・・・・君の起こした蜂起が恐らくはアルメニア・エルムグランド共和国の見せた最後の意地だろうな?」


 正規軍の大半は国外に逃亡か、戦死または行方不明で投降者は死刑に処された。


 「憂国の士同盟者も既に死亡し、マグナート達も今ではシュラフタ達に扱き使われている」


 「今まで扱き使う立場だったんだ。奴等には良い経験になっているさ」


 俺が蜂起を起こすとマグナートの何人かは知るや協力という名に押し掛け、以前と変わらない態度で行動した。


 だが、既に土地はおろか財産すら無いマグナートに誰も従わなかった。


 軍事能力がある奴等は違ったが大抵は居ても邪魔でしかなかった。


 そういう奴等は直ぐコンキスタドール達に投降し命だけは助けられたが・・・・・・・・


 「あんたの話を聞く限り死んだ方がマシだったかもな?」


 「どうかな?奴等は命あっての物種と言わんばかりに働いている。あれなら老人になるまで食い繋ぐことは出来るさ」


 問題は・・・・・・・・


 「君だよ。もう一人の指揮官---全盲の聖職者はペストで死んだ。対して最高司令官たる君は負傷し捕らえられたが・・・・・・・・」


 処刑すれば崇められる。


 「ちょうど宗教の殉教者のようにね。生憎と私は殉教者が嫌いだし、先の蜂起を鑑みれば処刑するのは危ないし・・・・君の行動を鑑みれば殺すには惜しい」


 「嘲笑を浮かべた割には紳士的な台詞を言うな?」


 てっきり八つ裂きにでもすると俺は思っていたから意外だった。


 「これでも昔は軍人の端くれだったから君の指揮振りと勇敢さには敬意を個人として表しているんだよ」


 しかし・・・・他の奴等は俺を残酷に殺す事で個人的な怨みと見せしめを考えている。


 「そんな真似をすれば殉教者として奉られ、後々まで厄介だが奴等は目先の事しか考えていない」


 では、どうするべきか?


 「君は“公式”に戦傷が元で死亡とし・・・・国外追放にする」


 俺の部下達も同じにすれば殉教者にはならないから・・・・奉られる事にはならない。


 「まぁ君を生かしておいても面倒だが・・・・これは軍人の端くれだった私なりの敬意だ」


 「・・・・・・・・」


 俺は黄金の亡者を見たが、亡者は俺に背中を向けた。


 「準備を密かにさせる。それまでは傷を癒やしたまえ」


 「エルムグランドの義兵」よ・・・・・・・・


 そう言って黄金の亡者は俺の前から消えた。


 そして傷が癒えた半年後に俺は仲間達と共に船へ収容され国外追放に処された。


 見送りする人間は誰も居ない。


 おまけに夜だから明かりすら無いから闇の中を進む形になった。


 しかし・・・・俺達には見えた。


 アルメニア・エルムグランド共和国に小さな灯火が点いている事を・・・・・・・・


 それは言うまでもなく俺達が一度は点けた真の自由という灯火だった。


                                     真の自由を夢見て 完

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