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美しき翼を持つ騎士団

どうもドラキュラです。


傭兵の国盗り物語を大改稿している最中ですが同時に執筆もしております。


ただ、その過程で南北大陸の話が出たので思い付く限り書いた物語を投稿する次第です。


基本的に1話完結で、詳しい事は省いて結果とかだけ書いた感じですので御了承ください。

 「黄金の大国」と言われた我が祖国「アルメニア・エルグランド共和国」は・・・・共和国歴2073年12月24日を持って風前の灯火と化しているのが屋敷の窓からでも見えた。


 新々都たる「アナラビ(閃光)」はまだ敵の手には完全に落ちていない。


 でも古都である「フルゴル(煌めき)」はおろか新都である「ルークス・ステッラエ(星明り)」は既に敵の手に落ち昔の面影は欠片すら無かったのを見たから・・・・・・・・


 「何れアナラビも・・・・ああなるでしょうね」


 私は窓から見える方角に在っただろう村や町の惨状を想像し、アナラビも同じ末路を辿ると予感した。


 そしてアルメニア王国に併合される形となったけど今までは上手く付き合っていたエルグランド公国の現状も想像した。


 エルグランド公国の大公が手引きし、南部からだけではなく北部---公国側からも招き入れたのは記憶に新しい。


 でも事前に情報は入手していたから手は打てた。


 ところがマグナート達に買収されていた代議士達は地方議会たる「セイミク」で拒否権を発動させ・・・・セイムでも拒否権は連発されたから直ぐに軍は動かせなかった。


 この一手で南北から攻撃を受ける形となり2面戦を強いられる形になり瞬く間にフルゴルは落ち、続いてルークス・ステッラエも落ちてしまい・・・・挽回は不可能に陥ってしまった。


 そして今に至る。


 でも・・・・・・・・


 「ここも時間の問題ね」


 アナラビの城門が敵に破壊された音で私は嘆息した。


 城門が破壊されると敵は直ぐに雪崩れ込んだのか・・・・至る所で火の手が上がった。


 それから直ぐに市民の悲鳴と略奪者の笑い声で阿鼻叫喚の地獄絵図に色付けされる。


 何れ私の屋敷にも奴等は来る。


 でも・・・・こうなるのは今から数年も前から解っていた。


 私は「あのひと」が去り際に言った台詞を思い出した。


 『この国は最早・・・・病気で言えば末期で助かる見込みは無い。あの時の戦いが終わって出来た10月6日に産声を上げた”聖バルトーシュの憲法”を活かしていれば良かった』


 あの憲法により貴族共和制は立憲君主制に代わり広大なオルディナツィアを持つ世襲領主---オルディナトにして大貴族達---マグナート達の自由を一部だけど制限する事が出来たんだもの。


 アルメニア・エルクラム共和国は「自由」を何よりも大事にしていたけど・・・・あの男は昔と断言したのも憶えている。


 『これが黄金の自由?冗談じゃない。真の自由とは、皆が平等である事を言うのに対し・・・・この国が掲げる自由はマグナート達のような者のみが謳歌できる”仮初の自由”だ』


 確かに・・・・その通りだわ。


 私を含め貴族---シュラフタはマグナートに従属せざるを得ない立場に居るけど平民や農奴に比べれば自由。


 対して農奴達は土地に縛られ、そしてシュラフタ達の横暴から法的に保護される立場に居ない。


 逆にシュラフタ達は法の下で平等だし自由も許されている。


 古の時代を生きた先祖達は、その自由と平等を履き違えず・・・・そして戦った。


 だけど今はどう?


 誰もが自分の利益を優先させ自国に敵を招き入れ、そして古都と新都すら略奪の対象にしている。


 そして全て略奪し終えたら・・・・・・・・


 「・・・・総騎士団長。ムガリム帝国のコンキスタドールと結託した”憂国の士”同盟の軍が進軍して参りました」


 開けられた部屋の中から近衛軍の団員の声が聞こえてきたけど・・・・・・・・


 「軍司令官から・・・・野戦“ヘトマン”は何か命令した?」


 「いえ・・・・ただ、ルークス・ステッラエにおいて捕えられた国王からは・・・・さる密命を承りました」


 「・・・・何と命令されたの?」


 自分を「飾り物」と称した、あの憐れな王は・・・・・・・・


 「我が国は未曽有の危機に陥っている。されど・・・・もはや共和国は滅亡を免れないだろう。私も恐らくは惨めな最期を遂げるだろうが・・・・偉大なる大契約者に愛された、そなたは共和国にある”最後の意地”を見せろと」


 「・・・・・・・・」


 私は団員が発した王の言葉に何とも言えない気分になった。


 以前なら胸が躍った筈なのに・・・・でも考えてみれば当然かもしれない。


 国王は権限こそ低いけど一人の傭兵を・・・・召し抱える位の力はある。


 それを私は取り付けたし、あの男も乗り気だった。


 だけど途中から王は・・・・マグナート達に膝を折り、あの男も共和国の現状を直ぐに悟り出て行ってしまった。


 あの時に私も一緒に行っていれば・・・・・・・・


 あの男が消えてから毎日のように考えてしまい、そして答えは決まっていた。


 「・・・・あの日に戻れるなら・・・・私も自由に・・・・真の意味で自由になりたかったわ」


 私を「広い籠の中でしか生きていない深紅の羽根を持つ猛禽」と・・・・あの男は評したけど、そんな私に手を差し伸ばしてくれた。


 それを私は拒絶して今は・・・・国が存亡の危機に陥っているのに何ら手も打てず・・・・王からも自宅謹慎を申し付けられている。


 「・・・・総騎士団長。これは、あくまで一個人の私が言えた事ではありませんが宜しいでしょうか?」


 団員は私に意を決したように改まった様子で声を掛けてきた。


 「言ってみなさい。どうせ、滅亡は免れないんだもの。もう上司も部下も関係ないわ」


 「では・・・・総騎士団長。貴女や国王の仰る通り・・・・最早この国は終わりでしょう」


 ムガリム帝国から来た表裏比興の者は消え去ったけど、それでも爪痕は残し・・・・それによって黄金の大国と言われた我国はコンキスタドール達の侵入を許してしまった。


 そして・・・・彼等の間で行われる予定の分割を行う事で・・・・この国を完全に地上から消滅させるのは明白。


 「ですが・・・・いえ、だからこそ・・・・国王の下した密命を遂行する形で最後に我々の意地を見せませんか?」


 「・・・・・・・・」


 「偉大なる大契約者様は貴女を猛禽と称しましたが、同時に白い髪と深紅の衣を纏った美しき鳥とも評されました」


 なら・・・・・・・・


 「その言葉を胸に・・・・戦いましょう。最早どの軍も統率が取れず散り散りになって戦っています」


 でも私が声を掛ければ・・・・・・・・


 「きっと応じてくれます。そうすれば恐らく2~3万の軍勢にはなります。15万のコンキスタドールの軍勢には勝てないでしょう」


 しかし・・・・・・・・


 「我々の意地は貫けます。そうすれば貴女は・・・・本当の意味で自由に空を飛べる鳥になれるのでは?」


 自由人と称した大契約者同様に・・・・・・・・


 「・・・・直ぐに近衛軍全員に招集命令を。それから国を憂う者達に声を掛けなさい」


 これより私達・・・・・・・・


 「アルメニア・エルグランド共和国近衛騎士団たる“ラクタパクシャ(赤い翼を持つ者)”はムガリム帝国軍に急襲を仕掛けると」


 「総騎士団長万歳!!」


 団員は私の言葉に応じると直ぐに部屋を出た。


 それを背中で確認した後に私も鎧を纏ったけど・・・・首から提げている「赤い鳥」のペンダントは決して離さなかった。


 『どうか、見ていて・・・・私という女の意地を・・・・・・・・』


 我が愛しき青い衣を着た自由の騎士よ・・・・・・・・

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 「・・・・生き残った者達は何人だったのか報告して」


 私は鮮血を浴びたままの姿で生き残った団員に問い掛けた。


 ただし、既に軍船は港から離れており戻る事は無いわ。


 もっとも私自身は・・・・もう、この国に対する義務は果たした。


 いえ・・・・羽を「休める」時期は終わったと思っている。


 『愛しい男。漸く私も自由になれるかもしれないわ・・・・・・・・』


 渡されたペンダントを左手で握りながら私は暗い海を見続けていたけど間もなく団員が数え終えたのか報告してきた。


 「3000余りです。15万の大軍に正面から挑んだのですから無理もありませんね。ですが・・・・皆、喜んでいますよ」


 我が国最後の意地を貫く形で敗退させる事に成功したのだからと団員は言い、私もそうであると思ったわ。


 あれから私の声に応じて来てくれた兵士達を纏めて・・・・私達はコンキスタドールの軍勢に正面から挑んだ。


 先に偵察で敵本陣の正確な位置は把握していたから中央突破を挑んだのよ。


 夕刻---薄暮だった事も幸いし15万の軍勢は上手い具合に分断させられたのも功を奏し・・・・私達は本陣を無茶苦茶にして辛くも戦場から脱出できたの。


 でも生き残れたのは3000余り・・・・意地を通すには余りにも高すぎる代償だったかもしれない。


 「総騎士団長。これからどうなさいますか?」


 団員の言葉は戦の興奮は冷めていたのか・・・・現実を把握した口調だった。


 アナラビからオレンジ色の炎が上がっているのを見て「アルメニア・エルグランド共和国」は滅亡したと思い知る。


 つまり私達が生まれ育った国は間もなく南北大陸から完全に消滅してしまうから私達は「迷子」になると告げる辺りが良い証拠よ。


 「どうするか・・・・それは皆の自由よ」


 偉大なる大契約者は言ったじゃない。


 「軍に属すれば上官の命令は絶対。国に仕えれば国の命令は絶対。されど・・・・自由人になれば何の縛りも無く如何に生きるかも・・・・本人の意思次第」


 だから自由よと私は言った。


 「では・・・・我々は貴女様に従う所存です。どうか、御指示を」


 団員の言葉は屋敷の時とは違い、ハッキリとしていた。


 「・・・・これより近衛騎士団ラクタパクシャは“スパルナ(美しい翼を持つ者)”に改名し傭兵団となる」


 傭兵団は戦争の犬と陰口を叩かれる事もあり、実際に非道な真似もする。


 だけど・・・・・・・・


 「我々は偉大なる大契約者の率いた青衣団に倣い、略奪は最小限に済ませる。そして・・・・自分が仕えるべき主人を見つけたら遠慮なく団を抜ける事も許可する」


 私達は自由の身になったのだから今さら周りに振り回される事は無い。


 「異論は?」


 『ありません』


 私の問いに生き残った兵達は口を揃えて返答した。


 「では・・・・これより舵を左へ切りなさい。方角はセプテントゥリオーネス大陸よ」


 そこで傷付いた翼をを休め、傭兵団として経験等を積み・・・・・・・・


 「オリエンス大陸に渡りましょう。きっと偉大なる大契約者は・・・・その大陸に居る筈だから」


 そう私は言い・・・・ペンダントを強く握り締めオリエンス大陸を見た。


 『我が愛しき青き衣を纏った自由の騎士・・・・遅くなったけど私も漸く自由になったわ。だから・・・・貴方を追い掛けさせて』


 貴男は私に本当の自由という「翼」を与えてくれた。


 なら・・・・・・・・


 『その翼を・・・・貴男の身体で休ませて下さい。男なら責任を取って下さい』


 そう私は心中で告げた。  


 そして私は・・・・その日から本当の意味で自由の身になった。


 対して我が祖国アルメニア・エルグランド共和国は共和国歴2073年2月18日に行われた「アルメニア・エルグランド共和国分割」によって国土全てをコンキスタドールに奪われ・・・・滅亡した。


 もっとも南北大陸全てを手にしたのはムガリム帝国ただ一国のみで、その領土をコンキスタドール達が武功によって分割したに過ぎない。


 それでも国同士の間には条約に対する署名などが必須であり・・・・自分で飾り物と称した国王は屈辱的な署名にサインしたわ。


 それによって命は助けられたけど監視付きの幽閉生活を余儀なくされた。


 飾り物の意味合いが強かったから同情の余地はあるけど優柔不断な点は否めないから自業自得と言う面もある。


 またムガリム帝国の策略にまんまと乗せられて自国を滅ぼす片棒を担いだ憂国の士同盟の人間達---愚かな売国奴共の大半も・・・・悲惨な末路を辿った。


 自国の領土は滅茶苦茶にされ、自身等も絞首刑か火刑という「褒美」を与えられたけど・・・・それもまた彼等が常に口ずさんでいた「自由」の代償かもしれない。


 そして真の意味で自由人になった私は・・・・・・・・


                                    美しき翼を持つ騎士団 完  

ちなみにアルメニア・エルグランド共和国のモデルは「ポーランド・リトアニア共和国」で、政治体制とかも参考にしました。



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