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第十七話 結の世界

またここに戻ってきてしまった。

ずっと忘れていた記憶。

床も壁も一面が白い空間に机が一つとベッドが一つ。

あの日、彼を傷付けてしまった私は家の中の使ってない部屋に閉じこもった。

外に出なければ、誰かを傷付けることも、それを見て傷付くこともない。

あの時のことを思いだしてしまった今、私はここに籠もるしかなかった。

目に入る物や色が少ないここは、刺激が少なくて良い。

でも今いるここは、二年前とは違って、とても静かだ。何の音も聞こえない。

ここは、本当の私の家の一室じゃなくて、夢の中なのかな。

あ、そうか。

前夢で見た光景を思い出して、確信する。

白い空間に泣いている長い黒髪の少女。

夢のあの部屋の少女は、私だったのか。なんであんなこと言ったんだろう。

「お願い、助けて。私を見つけて。ここから連れ出して」なんて。

ここにいれば、誰かを傷付けることも、傷付くこともないのに。



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