第十三話 芹果の世界
真っ暗だ。
何も見えないし聞こえない。
まだ布団の中にいるのか。
夢でも見ているのか。
もう、何も見たくない。
朝がこなければ良いのに。
真っ暗な夜、そう思って眠って。
もうずっとこのまま眠っていたい。
翌朝、朝日が差し込んだカーテンを見て、再び布団を被ってそう思った。
この頃ずっと、毎朝毎晩そう思っていた。
それが、本当になってしまったのかな。
布団に包まれているようなほのかな暖かさがあって、何も見えないし何も聞こえない。
体がぴくりとも動かせない。
何があったんだっけ。
何があって、もう、目覚めなければ、学校に行けなくなればいい、って思ったんだっけ。
よく思い出せないけれども、どうでもよく思える。
今の状態はとても心地良い。
こうやっていれば、無理矢理世界に留まろうと、息を潜めたり、周りの自分に対する勝手なイメージを壊さないために頑張らなくていい。大人の変な期待に応えようとしなくていい。
他の人を見て、刺激を受けていちいち傷つかなくていい。
あぁ、でも、もう一度、あの子に会って、謝りたい気がする。
あの子って誰だっけ。なんで謝りたいんだっけ。
せりか
名前を呼ばれている。そうだ、この声だ。
この声の人はなんて名前だっけ、どんな姿をしているんだっけ。
会いたい。
会いたい気持ちはあるのに、思い出せない。
せりか、せりか…!
幸田さん
あ、この声は-