何故こうなってしまったんだろう
別に人生をやり直したいなんて思ってなかった。
否、思った事は数回あれど、望んだ事なんてなかった。
両親の仲は悪けれどそこそこ恵まれた家庭に生まれ
たいして学はなかったが無事県立中学校に入学できエスカレーター式に高校へ上がることができた。
現在も無事単位はとれ普通の高校生活を送っている筈だった。
さて明日も頑張ろうと、寝心地の良い木製のベットで寝た筈だった
なのに何故こんな事になったのだろうか
そんな事分かる筈がないのだけど
「……、どうしたの?具合悪いの?」
私は顔を上げ目線を上に上げる。
まだ幼い丸く黒い水晶体に心配した若い母親の顔が映る。
自分の手元を見ると食べかけのおにぎりが握られていた。
どうやら食事中に考え事をしていたせいで母親が心配してきてくれたらしい。
当たり前だ。
私が16歳の高校生だったらただの過保護の母親か、病弱の母親に過ぎないのだろうけれど。
「……だいじょうぶだよ〜ママ」
そう言って無邪気に微笑んでみせる。
目を細めて頬を緩ませできるだけ可愛らしく。
そうすると、母親から心配の色は消え安堵の色が見え始める。
良かった。私も安堵しおにぎりを口に含む。
そう、これが当たり前だ。
だって、今の私は16歳の高校一年生ではなく、5歳の幼稚園生年長児なのだから。
何故こうなったんだろう…
優しい母親に気付かれないようにそっと溜息をついた。