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とある令嬢の一人語り。 シリ-ズ

令嬢の一人語り。

作者: 公爵令嬢

少し暗めのお話です。淡々ととある令嬢が喋り続けるだけのお話。

「…………あら? どうしたの? 権力を持った御子息を引き連れて。あぁ。私を説得しに来たのね? ふふふ……健気な子、と言えば良いのかしら? まぁ、言いに来るのは必要なことですものね。あらあら、もう泣いてしまうの? 泣くのが少し早すぎるのではなくて? 今までの話のどこに泣く要素があったのか教えていただきたいわ。あぁ、貴女の隣に居る王子を同情させる必要があったわね。すっかり忘れていたわ。貴女はその子を自分の所に留める為ならきっちりとイベントをこなして行く子だったわね。本当に、驚くほど貴女はその子のイベントを完璧にやり遂げているわ。好きなその子を自分に留める為に。貴女は極度の怖がりだものね。……あら? 何故王子が怒っているの? 私は本当のことを言っているだけなのに。取り敢えず、煩いわ。黙っていなさいな。私はそこの令嬢とお話がしたいのよ。




…………全く。本当に煩い子なんだから。王子として失格よね。それでも貴女はあの子が好きなの? 本当に? …………へぇ、そんなに自信を持って即答出来る程に好きだと言うのね。感心しちゃうわ。どこが好きなの? 顔? 体格? 地位とかかしら? ……もしかして、性格だなんて言わないわよね? あの子の性格は、難がありすぎるわよ?




あら、貴女は全て、と答えるのね。すごいわね。そこは褒めてあげてもいいわ。本当に貴女はあの子が好きなのね。でも、その今抱えている感情は、何かしら?



…………答えられないの? なら、私が答えてあげましょうか? ふふふ……そんなに怯えなくても良いじゃない。泣くのもいきなり止めちゃって……。本当に怖がり、ね。貴女のその感情は恐怖よね。貴女は怖いのよ。私と対峙するのも、あの子が好きなのも。あの子はどうせ貴女に気持ちなんて何か切っ掛けがないと伝えない人だものね。あの子はなにしでかすか分からない人だもの。貴女はそれが怖いのよね。でも、その気持ちを伝えようとは思ってない。それすらも、怖いから。伝えて、どんな反応が返ってくるか分からないから。伝えて、重たい女だと言われるのが怖いから。そうよね?




…………あら、違うと、言いたいの? 違わないわよね。そんなに隠さなくても良いじゃない。貴女のその感情は素敵よ。違う? 怖くないと言いたいのね。それは私に対してかしら。




…………いいえ、違うわ。その言葉は貴女。自分自身への言葉よ。貴女は分かりやすいから。そんな感情がチラチラと覗いていたわ。まぁ、周りの子達は気付いていないようだけれど。そうやって無理して明るく振る舞う必要なんてないのに。無理して純真で、信じてると言い続けなくても良いのに。そういえば、貴女。二日前に泣いていたそうじゃない。あら、これは関係なかったわね。少しこの話もしたかったのだけれど、ダメみたいね。止めておくわ。




…………気になるの?まあ、そう言うのなら続けましょうか。貴女のことだから、周りの子達の意見に強く反論出来ないと信じてたわ。ふふふ……そんなに怒らなくても良いじゃない。そんなに怒っていると、シワが濃くなるわよ? ああ、そうだったわ。話を戻さなくてはね。貴女の眉間のしわの話をしに来たのではないわ。えっと、二日前の貴女があの子に酷いこと言われて泣いた話よね。ええ、覚えているし、分かっているわ。怖いのを抑え込んで、自分の暗い感情を出さないようにして元気に振舞っていたのに、鬱陶しいと言われたのよね。ええ、しっかりと覚えているわよ。あら、どうしたの? 下を向いて……。聞きたくなかったのなら周りの子達を抑え込まなければだめよね。続けていいかしら?


……返事がないなら続けるわよ? 続けるわね。貴女は、自覚していたのよね。自分がどういった人間かを自覚し、理解しているはずよ。本来の姿は、根暗で、うじうじして、人に話しかけるのでさえ怖い人間よね。今のような明るい人間ではないはずよ。怖くて、怖くて、周りにびくびく怯えて、今でさえ逃げ出したいと思っているのよね。そんな自分が嫌で、貴女は自分自身を壊したの。ねぇ、貴女が自分自身を壊したのはいつ?


五年前に一人になったとき?


八年前に友達に捨てられたとき?


九年前にいじめが始まったとき?



嫌? 違う? 何が違うのかしら。




ほら、また貴女は自分の殻に閉じ籠る。嫌々と首を振っても本当のことでしょう? ねぇ、違うのかしら? 違わないわよね。ねぇ、貴女はいつから笑えるようになったの? ねぇ、貴女は何故笑えるようになったの? ねぇ、貴女の笑顔は、心から出てくる本当の笑顔なの? ねぇ、耳を塞がないで。本当のことなんだから。違うだなんて言わないで。これは貴女の感情なのだから。なのに、耳を塞いで、逃げていく。全く……。




…………あら、もしかして泣いているの? それは本物の涙かしら。いえ、分かっているわ。本物の涙よね。分かっているわ。本当、貴女は弱虫ね。あぁ、一度壊れた人間は脆く弱いものよね。忘れていたわ。どうしたの? 違う、私はこんなこと知らない? あらあら…………全く、これくらいで取り乱しちゃだめよ。きちんと聞いてくれないと。




ん? 違う、怖くない、私は単純にあの人が好きなだけ? まあ、本当に貴女はどこまでも逃げるのね。素直に好きだから怖い、と認めればいいのに。あら、それでも違うと言うの? 私は違わないわ。好きな人に嫌いと言われるのが怖い。あの人にムカついたとか、気持ち悪いと言われるのが怖い。だって、好かれたいもの。全てを受け入れてほしいもの。


あぁ、ムカついたで思い出したわ。私のお話も少し聞いてくれるかしら? まあ、貴女のお話ばかりでは詰まらないですもの。別にかまわないでしょう? いきなりだけれど、私ね、写真がとても嫌いなの。ああ、撮るのは好きだけれど、撮られるのは嫌いという意味ね。というより、あまり自分の顔は好きな方ではないの。なのに、私の写真を撮ってあの人に送り付けたのよ。ああ、あの人と言うのは私の想い人のことね。それで、あの人に写真を送ったの。そうしたら、なんて返ってきたと思う? 何か調子乗っているようでムカつく、よ。ありえないわ。私は頑張って写真を撮って送ったのに、ムカついた、よ? 本当にあのときはふざけんじゃないわよって叫びそうになったわ。なのに、あの人は私に対して写真の一つも寄越さなかったの。しかも、その当時は少し心が弱っている時期に言われたから、連絡遮断を断ってやったわよ。あの時は少しすっきりしたわ。まあ、弱っていることに関しては何も言わなかったの。私、結構根に持つ方だもの。簡単に許さないわ。



……ちょっと、話をし過ぎたかしら? それで、貴女はいつまで逃げ続けるの? もうそろそろ良いと思うのよ。ねぇ、前を見ましょう? 貴女は明るく、ふざけているより裏で真面目な顔の方が私は認めて貰えると思うわ。あの子に貴女の本来の姿を見てもらうべきだわ。受け入れてもらうべきだわ。怖くてもぶつからないと貴女は後悔し続けるわ。今までがそうでしょう? ねぇ、違うのかしら?




…………震えているのは良いけれど、はやく動いてちょうだい。動かないと何も変えられないとよく言うじゃない。きちんと向き合っていきなさい。話をそれからよ。私だって本当は今すぐにでも貴女にあの子を譲ってあげたいけれど、今の貴女じゃ上が認めないわ。自分の気持ちと向き合えない、あの子にも言えないようじゃ決定は覆せないの。




あら、それでも向かってくるのね。その心意気は買ってあげる。でもねぇ、何もできていない子が嫌々というのは間違っているわ。喚いたって、泣いたって変えられないものは変えられないのよ。とりあえず、変わったということを示してから来なさいな。





……全く。うじうじと煩いわね。私だって、できることなら早くあの子を捨ててしまいたいわ。貴女には分からないでしょうけれど、本当に好きな人と会えない辛さが分かって?しかも、本当に好きな人からは言葉のナイフが返ってくる。貴方達からは暴言? ふざけないで頂戴。私、我慢するの苦手なの。今までよく普通に言葉を返していたと褒めて欲しいくらいだわ。私が同意しても変えられないことをいつまでもうだうだと言わないで。




ねぇ…………私はいつまで、



貴女達に



笑い返せばいいの?




……リリー、この人たちを追い返してちょうだい。気分が悪くなってきたの。ごめんなさい。貴女にこんなことを押し付けて。それと、しばらくこの部屋に入ってこないでくれるかしら? 本当、貴女に迷惑をかけてばかりね。



…………ありがとう。お願いするわ。






………………………好きよ。私は、貴方が好き。でも、好きだからこそ、憎い。怖い。だから、お願い。いつまでも、信じていて、良いかしら?」



元々書きたかった続編、というか別視点のお話を書いてみました。


令嬢の一人語り。【メイド視点】前編

http://ncode.syosetu.com/n4325cx/


こちらもどうぞご覧下さい。

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