プロローグ
勇者は魔王にやぶれ、
世界は、ほろびました。
「終わりだ、勇者」
全身に激痛が走る。
指先から、体の感覚がどんどん消えていく。
ああ、死ぬんだ。と俺は思った。
旅を共にした仲間が倒れ、既にみなこと切れている。
突然召喚されて、まったく関係のない戦いに巻き込まれて理不尽だ、と嘆いたことも、投げ出したくなったこともあったけれど、そんな俺を励まし続けてくれて、一緒に戦ってきた仲間。
…ごめん。…守れなかった。
何度も死に近づくことはあったが、こんなに身近にそれを感じたのは初めてだった。
「眠れ」
魔王の最後の一撃がとんでくる。
とうぜん、こんな体ではよけられることもなく。
俺は後悔と無念のうちに死んだ。
「-っこら!起きんか如月!」
「ふぇぶっ!」
頭部に衝撃を受けて、俺は目が覚めた。
目の中に星が散る。…ぐーで殴られたらしく、頭がすごく痛い。
「ふぇぶっ!じゃない。今日は朝10時からミーティングといっただろう!!」
すぐそこで喚いているのは黒髪のおにーさん…上司の黒薙だった。
頭をさすりながら体を起こす。
「…なんで黒薙さんが俺の部屋にいるんですか。いくら上司といえどプライバシーの侵害です訴えます」
「うるさい。お前が10時になっても来ないし、連絡も何もないから心配してきてやったんだろうが!」
黒薙さんは更に怒った。
「え。まだ10時なわけ…そんな馬鹿な…」
昨夜、俺は目覚まし時計は6時半にセットしていたはずだった。
寝過すはずが…
「その目覚まし時計、電池きれてるぞ」
「え」
…確かに、時計の針は止まっていた。
6時29分59秒で。
「神様の意地悪―――――!!!」
「…近年まれに見る不幸だな。私も見たときは目を疑ったよ。
…というのはおいといて、もともとミーティングはお前と私だけの予定だったし、ここでやってしまおう。
担当直入にいう。お前に異世界出張への命がくだった」