海原岬side
端から見れば普通の人も、大多数と違えば異端扱い。
今まで築き上げてきた伝統も、ズレが生じれば今の状態を正常と判断し、歪んでいく。
軌道修正と言う名の言い訳。
苛めが無くならないのは、「子ども同士のことだから」と飛び火を恐れたり、面倒臭いを誤魔化す。
助けを求めて悲鳴を挙げていても、見て見ぬふり。
熱血教師さえ、「おまえまで言っちゃ駄目だろ」の一言で片付けてしまう。
行動に示さず、言葉だけで信頼を得ようとし、不信感ばかりが募る。
そんな教師が蔓延っては、実行しようとする教師の妨げにしかならない。
-私は大学を卒業してからすぐ、公立高校の体育教師になった。
その学校は公立とは名ばかりの、格差のある学校。
教師の格差、生徒の格差。
私は熱意を持って教師になったのに無力さをまざまざと感じさせられた。
生徒の悩みを聞いて解決、出来た気でいた。
しかし、それはただの私の思い上がり。
いくら正しい答えを導き出したとしても、解決策にはなりえない。
下に扱われる者はどう足掻いても上にいる者の理不尽さに振り回される。
相談を持ち掛ける生徒はただ理解者がほしいだけ。
望んでもなにかが変わるわけではない。
弱い者の立場になるのが教師の立場だと自負していたのに、現実はそれを許さなかった。
校長に直談判。
薄ら笑いを浮かべながら教師は理想論で語るなと、私のことを異質だといい放った。
私は誰も救えないのが悔しくて、その学校を後にした。
…逃げたくない、方法を見つけたかった。
だから…、この学校の教員試験を受けた。
教師も生徒も対等なこの学校で本採用されたいが為に。
目立つことをよしとしない現代社会。
ここでは、目立たなければ掻き消えてしまう。
私なんて一般人と変わらない。
その中で如何に自分という存在を誇示できるか。
真面目の有効利用に他ならない。
ブレない正義を示す以外ない。
自分らしさを持つ大事さを知り、生徒や他の教師たちと渡り合うには今のままでは足りない。
めげることは許されない。
この学校の求める個性、自由のあり方を正しく理解することから始めよう。
いつか私のやって来たことが報われる日を信じて。
実際の学校は校長や教頭は名ばかりで、あまり記憶に残らない。
彼女のような教師は埋もれがち。
しかし、大成すれば変えていける希望ではないだろうか。