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エリュクフィル魔法学校は、山脈の麓に広がる大きな樹海を背にして、街を見下ろすように小高い丘の上に建つ。暖かな日の光を受けて淡く象牙色に輝く街は、湖へと流れ込むエリュク大河の後背地に位置し、魔法学校を囲うように旧市街地が建ち並ぶ。城塞のような魔法学校こそが国の中心とも見えるが、そこに国の中枢機関としての機能は備わっていない。
それは、街の反対側に湖を背にして建つ、さらに大きなエリュクフィル城が存在するためである。
ここは城塞が2つ向かい合うようにして存在する国『エリュクフィル』。
古い城を再利用するカタチで開校されたエリュクフィル魔法学校は、大陸屈指の研究機関であり、城自体が学園都市であり、世界で唯一の公的な魔法学校である。
魔法が過去の遺物と変わりつつある現代において、魔法に重きを置いて研究が行えるのは、このエリュクフィルが数多くの魔王伝承を残す遺跡都市であることに起因する。大陸に広がった魔法文明発祥の地とも云われ、イシュチェル中央教会と、その他の魔王・魔法信仰の全ての聖地である。
しかし、現代科学の発展したこの時代において、失われつつある魔法の解明は、急ぐべき及第点でありながら国の発展への大きな枷ともなりつつあった。
現在、本当の意味で魔法を使える者は、誰一人として存在しなかった。
名前だけの魔法学校。
それでも、過去の栄華は数知れず、魔法に関係なく全てのあらゆる英知がここに集まっている。
そんな偉大な学校で学べる喜びについて深く感慨を感じながら、アカネは一つ溜息をついた。
尊大な魔法学校はどこまでも荘厳で、アカネの歩く寮塔と教室とを繋ぐただの廊下でさえ、何百年と続いた歴史の重みを感じさせる。煌びやかな装飾品はないものの、壁にかけられた絵画も窓からの薄明かりを受けて鈍く輝く何かの甲冑も、入学当時の学生にはそれだけで気後れを感じさせたもの。
〝きったねー甲冑だなぁ〟
この街に来て2年と少し、慣れてしまえばどうということはない。
それでも……と、アカネは小さく望まずにはいられない。
キララを胸に抱いたまま、後ろをこそこそとついてくるミルを振り返る。
「アカネ~、ごめんってば! 本当に悪かったって」
平謝りをする彼女を手で静止してアカネは言った。
「もういいよ。いつものことだし」
〝アカネは許しても、この俺様が許さん~!〟
肩越しにキララはミルを威嚇している。
「ミルも、せっかくのここの学生なんだし、そんなにお金集めに精出さなくたって……」
この学校はアカネからしてみれば、格式高い貴族たちが集まる上流階級そのもの。学生もお金持ちや貴族の御曹司が多い。ミルにしたって、有名な貿易商の娘である。がめつく小金を稼がなくたって、親からの仕送りが十分にあるはずだ。
「頭いいアカネみたいな特待生様とは違うの!」
それに対し、アカネは田舎から学力推薦によって留学することができた特待生。普段触れ合うことのない上流階級の学生達に少し引け目を感じながらも、学ぶ喜びを心から感じている優等生である。
「……私もそろそろ、特待生枠が危ういけどね」
特待生でなくなれば、アカネも一般の生徒と変わらず高い授業料を払わなければならないが、それでは半月を待たずしてアカネの家は破産である。それゆえ、ここで学び続けるために、アカネは常に高成績をキープしている。
「うちだってね、そりゃあアカネんとことは違うけどさ、無い金かき集めて必死でやりくりしてるわけなのよ! 火の車!」
アカネは「おや?」と思う。入学当時は、そんなに必死ではなかったはず。
「ひょっとして、また成績下がったの?」
「ぎくーっ!」
図星を言い当てられ、おびえ始めるミル。彼女のこづかいは、成績に比例するらしい。
〝やーい、バカめバカめ!〟
「そんな変な商売考える時間あったら、もっと勉強したほうが」
一人と一匹の呆れたような視線に、ミルは串刺しにされる。
「素直に授業に出て、真面目に課題こなしていけば、試験だってそう難しいことないから」
「できるやつはみんなそう言うんだー!」
「ミル、300エルで私を家庭教師に雇わない?」
「高いよ!」
格式高い研究機関とはいえ、そこに通う学生の全てが、学問を好きとは限らない。アカネのように本気で学んでいる者もいれば、学歴と学位のために親から無理やり通わされているような生徒も多く存在する。学生の質が落ちていると教師達が密かに嘆く一方、そういったお金持ちの家からのお金で研究が行えているのも事実で、生徒と教師それぞれのジレンマはいつまでたってもなくならない。教育機関とは兼ねてそういうものである。
「ところで、またキララを逃がしに行くの?」
話題をすり替えようと、ミルがアカネの腕の中を指して言う。白い小さな耳がピクリと動いた。
「名前までつけちゃって……」
キララの頭を撫でながら、アカネはもう一つ溜息をついた。
「もう森へ帰すのは諦めた。必ず戻ってきちゃうし。それに……」
ちらりとミルを眺めて、
「悪い学生に捕まって、売られちゃったりしたら可哀そうだし」
〝アカネ~!〟
キララはこみ上げる涙が止まらなかった。
「うっ……だ、だから、本当に悪かったって。あ、あたしも別に本気で売ろうとしてたわけじゃないし」
〝本気だったくせに!〟
キッとミルを赤い小さな眼で睨みつけた。
キララという名前は、ミルが名づけたもの。いつまでも『あの白いの』では面倒だったから。アカネとしては、名づける前に森へ帰してやるつもりだったのだが。
「アカネは、もっと別の名前の方がよかった?」
「なんでもいいよ」
周囲にもキララという名前ですでに馴染み始めていた。
「じゃあ、外じゃないとしたら、アカネは今どこに向かってるの?」
キララを腕に抱いて、いつもの山歩きのカバンもなく軽装姿。今日は授業もない。
「いつもの研究室?」
「違うわ。というか、知ってて着いてきてたんじゃないの?」
ミルは違うと首を振る。ミルがついてきていたのは、金づるが放逐されると困るからであり、ルームメイトと仲違いしたままだと今後の(主にミルの)生活に支障をきたすからだ。
「今日はお客さんを迎えに行く日」
「お客? 客って、この白いののバイヤー?」
〝ひ~~っ〟
「違うから」
怯えている様子のキララを宥めながら、アカネをふと足を止める。
中庭と全学教育棟を仕切るこの広い廊下は、奥まで進むと正面ゲートへとつきあたる。授業の開始前であれば移動する多くの生徒達で賑わう通りだが、今は人影もまばらである。
廊下の壁や柱には、数多くの掲示物が並んでいる。教育関係、クラブ活動のポスター、それらの中でひときわ目立つ大きなポスターがある。
「今日お迎えするのは、今度の学会の大切なお客様よ」
エリュクフィル研究会合同連合大会のポスターを眺めてアカネは言った。
世界各地で持ち回りで行われる学会だが、今年はエリュクフィル魔法学校主催で行われる。
「今回の学会は、エリュクフィルの生誕祭と同時に行われるから、規模も特別に大きいみたい。名誉会員の特別講演会も多いのよ。今日はその特別ゲストのお迎え……って、昨日の夜、話したと思うんだけど」
「そうそう、聞いた聞いた」
迎えに行く途中に、キララのたたき売りを目撃したのだ。待ち合わせの時間が迫っているため、やむなくキララを連れていくこととなった。
「せっかくの生誕祭なのに、勉強会するなんて物好きだよね」
「そうね。まぁ、全部の会合に参加するわけでもないし、学会自体が半分お祭りみたいなものだから」
規模の大きな学会では、自分の研究に関連するところ以外、出席するメリットはあまりない。しかし、専門分野以外の研究について議論することによって、研究の視野が広がりまた意外な意見が出ることもある。学会発表は研究成果を公開し、名を広めるための重要な場であり、自身の研究に対しての新しい意見を聞くことのできる数少ない交流の場である。
「で、誰を迎えに行くの?」
「昨日話したでしょ? 地球科学の権威、ヨハン・ヴィルヘルム・リッター博士よ」
「……誰?」
アカネの顔が驚きに僅かに歪む。
「いつも使ってる教科書の著者の一人」
「ああ、この前ラクガキした写真の。で、どの人? 禿げてる人か、丸い顔の人なのか――」
「なんか頭痛くなってきた……」
友人の学問に対する姿勢に、アカネは呆れを通りこえて悩ましく感じられた。
「リッター博士は、一番年老いた方よ。私達の学んでる学問の、基礎の基礎を築いた方だもの」
「ふ~ん」
「ちょうど今回の来訪では、私の研究室の話に興味を持たれているみたいなの。だから、私が案内することになって」
「魔力研を?」
「そう。エーテル魔力研を」
「へ~、珍しいねェ。いつも、他の先生達には毛嫌いされてるっていうのに」
「うん……」
話しながら二人は正面ゲートの方へ足を進める。
「せっかくうちに来るんだからさァ、どうせなら魔王研とか案内した方がいいんじゃないの?」
「リッター博士は考古学じゃなくて、科学の方だから。あちらにはあまり興味がないみたい」
「でもさ、よりによって魔力研とは。地球科学の権威といえど、年寄りってのは物好きだなァ」
自分の研究室を物好き呼ばわりされていい気はしない。アカネは少しムッとしながらも、否定することはなく、慣れたというような諦めの表情が見える。
〝アカネをバカにすんなよー!〟
すると、突然後ろから、二人に声がかけられた。
「ふむ……物好きなのは確かじゃが、私はアカネさん達の研究をバカにしてはおらんぞ」
ギョッとして二人は振り返った。
すぐ後ろには年老いた一人の男性が立っていた。背丈はアカネ達と同じくらい、帽子とステッキを手に、白い髭を歪めて意地悪そうに笑っている。
「貴女がアカネさんじゃな。確かにその美しい赤い髪は目立っておるぞ」
「リッター博士!」
予期せぬ接触に驚いて、髪のことを言われて、アカネは少し顔を赤くする。
この国ではアカネのような赤い色素を持つ髪は珍しい。黒やミルのような茶、それらをもっと薄くしたような金髪の者がほとんどだ。赤い色素を持つ者はエリュクフィルよりも南の地域に多い。
待ち合わせの目印として、手紙でリッター博士にはアカネのことを伝えてあった。
そして、先ほどの失礼な発言を思い出して慌てる。
「申し訳ありません。私の連れが大変失礼なことを」
「あたしだけかよ!」
「はっはっはっ! 別にかまわんよ。物好きなのはその通りじゃし、写真に落書きされるのも慣れとる」
と、少し笑顔を潜めて、目を丸くしているミルに向かってリッターは言った。
「じゃが、アカネさんの研究をバカにするような発言は許されんな」
「ひ~っ!」
「新しい発見は、人と全く違うことをしている研究から生まれる。最初は周囲にバカにされようとも、いずれは功績が認められ、大きな賞を受賞することもある」
「でも、天才ってのはだいたい死んでからしか認められないよね……」
「ミル!」
開き直ったミルの物言いにアカネは怒る。
「はっはっはっ、そうじゃな。じゃから、生きている間に認められた私は、ラッキーじゃな」
「おぉ~」
ミルは素直に感心したようで、驚きの声をもらした。
「あたしが研究とか学問が好きになれないのは、その成果がすぐに実らないってとこなのよね。商家の娘ってせいもあるのかもしれないけど」
「ミル、それは勉強嫌いの言い訳だと思う」
「学問の追及というのは、一種の趣味みたいなものじゃからな。お金儲けのように、直接身になるものではない。知らない事象があると、その知識を収集したいというコレクター魂が疼くんじゃよ」
知識欲とはそういうもの。ここまで極端ではないものの、研究者は少なからずこういった思いを抱く。
会話が一呼吸ついたところで、アカネは姿勢を正して改めて自己紹介を行った。
「改めて、初めましてリッター博士。私はエリュクフィル魔法学校3回生のアカネです。こちら、同じく3回生の――」
「ミルです。先ほどの失礼な発言、大変申し訳ありませんでした」
畏まってミルも謝罪をした。
「構わんよ。私はヨハン・ヴィルヘルム・リッターじゃ。よろしく、お嬢さん方」
「駅まで迎えに行く予定だったのに、遅れてしまって申し訳ありません」
「いやいや、アカネさん達は遅刻しとらんよ。ただ、私の方が早く着いてしまってな。街を見ながら学校まで先に来てしまったのじゃ。学校までの案内はいらんからの」
学園前の汽車の駅から学校までは目と鼻の先。それに、この国にいてエリュクフィル魔法学校までの道を迷う者はいない。エリュクフィル城と並んで最も目立つ建物であり、市街地は二つの城を軸として大通りが整備されている。
「ところで、その白い生き物はペットかな?」
キララを指摘されて、アカネは少し慌てた。
「す、すみません。戻してくる時間がなくて。それに、学校でペット飼うなんて校則違反ですし」
「なーに、私はこの学校の教師ではないしの、校則を取り締まる理由もない。気にせんでくれ」
「キララっていいます」
ミルが得意気に言う。
「ほほう、珍しい生き物じゃな。何という種類の生き物なのじゃ?」
リッターがキララを見ながらアカネ達に聞いた。話のネタにされ、三人に注目され、キララは居心地悪そうに耳の裏をかいた。
「それが、調べても分からなかったのです。図書室の本でも、街のペットショップでも分からなくて」
直接街のペットショップまでキララを連れていったわけではないが、白くて赤い目をした動物だと教えると、ユキウサギだという返答がきた。キララはウサギではない。
「調べ物は研究者の基本スキルじゃな。調べても分からないのは、おぬしらのスキルが未熟なのか、それとも新種なのか」
「新種!?」
新種という言葉に声を荒げたのはミル。目の色を変えた彼女を見て、キララはゾッとした。
まさかという顔でミルを制して、アカネは話す。
「さすがに新種はないと思うけど。せっかくなので、これから向かう研究室の方で、一緒に話を聞いてこようかなと思っていたのですが」
「なるほどのぉ」
納得いったという顔でリッターは頷いた。
「これから向かうところって? 学校見学じゃないの?」
「学校の案内はついでなの。今日はリッター博士が見学したいという研究室があるので、まずはそちらを案内することになっているの」
「私は考古学の人間ではなく、科学者じゃからな。歴史的建造物の観光もぜひさせてもらうが、今回はそれがメインというわけではない」
三人はゆっくりと足を進めながら話す。向かう先は、校舎が見渡せる最上階でもなく、かつて空中庭園と呼ばれた美しい中庭でもない。廊下の端から地下へと続く階段へと向かった。
「私が今回エリュクフィルに来た目的は二つある。一つは、アカネさんの研究を覗かせてもらうこと。そして、もう一つがこれから行く研究室じゃ」
「講演会がメインじゃないんですね」
ミルが茶化したように言う。
「あんなもんはついでじゃよ。そういう理由でもないかぎり、こちらに来る機会がないからの」
リッター自身はあんなものという講演会だが、科学の大御所の話が聞ける滅多にない機会なので、講演会には数多くの聴衆が集まる予定である。アカネももちろん行くつもりだが、前売りの整理券が確保できなかったので、立ち見になってしまうだろう。
「もちろん、メインはアカネさんのところじゃが、こちらの研究室も非常に興味深い」
「アカネ、地下に下りていくってことは、行くのはやっぱり……」
「そう、魔物研よ」
「げ!」
〝魔物研?〟
「魔物研とは?」
リッターが聞きなれぬ言葉に首を捻った。
「魔物研とは、研究室の愛称みたいなものです。魔法学校というだけあって、魔法に関する研究室も多いので、それぞれに呼び名があるんです。歴史民族学研究室なら魔王研、今から向かう生物進化学研究室なら魔物研、私のところは魔力研……」
愉快そうにリッターは笑った。
「それは言い得て妙じゃな。まさに、魔力研じゃ」
「アカネ、あたし魔物研は苦手なのよね」
「そう?」
「だって、恐いじゃない」
「なかなか可愛い子達よ」
「あたしはアカネみたいに、動物に好かれるタイプじゃないの」
〝そりゃそうだろうな〟
ミルの告白にキララは納得する。
「動物は人間よりも敏感なの。後ろめたい気持ちがあると、動物達は寄ってこないわ」
「うっ……」
エリュクフィル魔法学校の地下には大きな食堂がある。正確には、魔法学校は丘の斜面に建っているので、食堂が地下にあるのではなく、正面ゲートがやや高い位置にあるだけだ。そして、食堂を横目に廊下を通り過ぎ、更に狭い螺旋階段を下っていく。
「あたし、入学した時から、絶対こんな陰気臭い場所では研究したくないって思ってたんだけど」
「まぁ、それは同感かも」
アカネは野外観察をメインとしてフィールドで研究を行うタイプである。動物は好きでも、部屋に籠って研究するのは性に合わないだろう。
「若い頃はいろいろ経験しておくものじゃぞ。私も若い頃は、何日も実験室に籠って研究したものじゃ」
「やっぱあたし、勉強はダメだ」
たどり着いた地下通路は、思ったほどの淀んだ空気はなく、明るい照明機に照らされているため他の廊下とほとんど変わらない。機材や物資の搬入のために、学校の横の斜面から大きな出入り口が開けられているため、それほど空気が籠っているわけではない。しかし、とある香りが彼女達の鼻をくすぐる。
「……なに、これ?」
ミルは露骨に顔をしかめ鼻を抑える。アカネは慣れたものだが、都会育ちのミルには我慢ならないのだろう。研究室特有の古書の香りでもなく、化学実験室の薬品の臭いでもなく、これは生き物を飼育している場所の独特の匂い。
アカネは手近な部屋の扉をノックし、研究室の中の人を呼んだ。
「すみません、リッター博士をお連れしたのですが」
事務室のようになっている部屋からは、しばらくしてツナギのような作業着を着た中年の男性が出てきた。ミルには動物園の飼育員にしか見えないが、これでも教授である。
「これはこれは! ようこそお越しくださいました、リッター博士! 私はコーシー・クレイグと申します」
「学会前の忙しい時に、無理を言ってすまんかったな」
「いえいえ、博士に見てもらえるなんて光栄なことです。ぜひご意見などお聞かせください」
クレイグは部屋の奥へ「博士が来られたぞ!」と声をかける。すると、慌てたように一人の男性研究員が出てきた。アカネ達よりはやや年上の男性研究員、まだ学生助手のようで、リッターにあいさつを行った後、アカネ達にも同様に紹介を行った。
「クレイグくんの論文は読ませてもらったぞ。なかなかの成果じゃな。周りの評判も良い」
「ありがとうございます! では、さっそくご案内いたしましょう」
クレイグが先頭に立ち、皆を廊下の奥の方へと案内する。
ここの地下フロアは、かつてエリュクフィル城の牢屋があった場所。鉄柵や独房の厚い壁はそのほとんどが取り壊され改修されたが、一部を利用して大型生物などが飼育されている。
魔物研こと生物進化学研究室では、このエリュクフィル地域の現生生物や、生物化石による生命進化の研究が行われている。しかし、ただの生物の生態系を調べている研究室ではない。エリュクフィル特有の、『魔物』と呼ばれる生物の研究が行われている。
ここは、大陸で唯一、『魔物』の人工飼育に成功した研究室である。