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一人百物語

UMA?(その2)

作者: 犬猫夜行
掲載日:2026/07/19


私の母の実家は今も熊や猪が出るという某県のとんでもない山奥にある。

その母の実家のある山村では、昔から

<裏山にはでっけえ蛇がいる>

と噂されていたという。


ある日、私の伯母(私の母の姉)が知り合いと二人で山菜取りに山へ入ろうとしていたら、やはり近所の知り合いの人が伯母たちを呼び止め

「山へ行きなさるんか?」

と言うので、伯母たちがそうだよ、と返事をすると

「山には……蛇が出るでぇ」

とその人が言ったので、そりゃ、山には蛇くらい出るで。何で?と聞くと

「いんやぁ、普通の蛇やのぉてさ。もっと大きな蛇がなぁ。最近またよく出て来とる、ゆうて。こないだ××さんとこのばあちゃんも見たとかでぇ。腰抜かして帰って来なさってぇ。

鶏の卵くらいもある大きな黄色い目ぇでな。鱗が榊の葉っぱくらいあるんやと。

しばらく山には行かん方がええで」

と怖々と話すので、伯母たちは顔を見合わせたものの。

せっかく山に入る用意をして楽しみにもしていたので、そんなまさか、とそのまま山に入った。

二人がいつもの山道を登り、あちこちで山菜を取っていると、山道の途中で、大人の腕でひとかかえ以上もある様な太さの木?が倒れて道をふさいでいたため、

「あれ、通れないよ、やだねぇ、またいで行くかね」と言っていたら。

その倒木?が


ずるっ

    ずるる

        ずずずっ


と動いた。

見れば

それは木などではなく、太い木の幹だと思っていたものには、榊の葉くらいの“鱗”がびっしりとおおっていて……

二人は悲鳴をあげる事も出来ず

その“鱗”にびっしりとおおわれたものが、山道の右端の藪から左端の藪へと、ずるりずるりと移動して行くのを見つめながらただ口をぱくぱくとさせ、ぺたん、と腰を抜かして座り込み……

しばらくは動く事も出来ず。

時々、大きな鱗が陽の光に反射して、ピカピカキラキラと光るのを見ているばかりだったという。

それからようやく、ガタガタと震えながらも腕が動いたので、まだ腰が抜けたまま、全く力の入らない足をボロ布の様に引きずって、二人とも山道を這って下り、やっと最初の人家が見えた時、文字通りこけつまろびつそのお宅の庭先に入り込み、まだ震えが止まらない声で半分泣き声の様な悲鳴をあげて家人を呼んだ。


「で、鶏の卵くらいの黄色い目っていうのは見たの?」

と私が聞くと、伯母は

「そんなもんは見とらん。見とったらその場で気絶して、呑まれとったかもしれん。

ほんに目の前に、ぴかぴか光る鱗がびっしりあってな。その大木みたいな胴体が、ずるずるいいながら山の中に消えてった」

と言った。

昼日中、知り合いとともに見たというのだから、うなずくほかない。

ちなみに、近所の人が山に入ったきり行方不明、といった事件は今まで起こってはいないらしい。




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