晴れた日の隣で
掲載日:2026/03/05
改札前の時計は、まだ約束の五分前を指している。
見上げた空は、嘘みたいに青かった。
午後の光が、駅のガラスに反射してちらちらと揺れる。
彼は、すでにそこにいた。
あの日と違って、今日は迷わず、まっすぐこちらを見ている。
私に気付くと、軽く手を挙げる。
あの日みたいに、ためらいはなかった。
少しだけ歩幅を早める。
それだけで、胸がちゃんと追いつく。
「今日は降らないな」
空を見上げたまま、そう言って笑う。
「……降っても、今度は困らないよ」
自分でも驚くくらい、素直な声だった。
彼が一瞬だけ目を細める。
あの日みたいに、距離を測ることはしない。
「そうだな」
どちらからともなく、歩き出す。
穏やかな風が頬を撫でる。
今日は、傘を持っていない。
それでも、不安はどこにもなかった。
改札の向こう、光の中へ。
並んだ影が、ひとつの方向に伸びていた。




