表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

平和な日々

ボクの一日は、だいたい鶏の鳴き声で始まる。

目覚ましなんて便利な道具はこの村にはないけど、正直それで困ったことはない。鶏は毎朝きっちり仕事をする。


「……もう朝か」


寝ぼけたまま窓を開けると、冷たい空気が一気に流れ込んできた。畑の向こうには朝靄が広がっていて、村全体がまだ眠っているみたいだった。


ここは、小さな村だ。

そしてボクは、その村の村長の子――リオン。


「リオン、起きてるかー」


階下から聞こえてくる父の声。村長という肩書きのわりに、呼び方はいつも雑だ。


「起きてるってば!」


返事をしながら、ボクは髪を適当にまとめる。

もう少し身だしなみに気をつけなさい、なんて言われることもあるけど、正直よく分からない。

動きにくいより、楽な方がいい。


 朝食のパンを食べ終えると、ボクはすぐに自分の部屋へ戻った。

 机の上には木屑が少し散らばっていて、小刀と紙やすり、それから削りかけの木材が置かれている。


「……ここ、もう少し丸くしたほうがいいかな」


今日仕上げる予定なのは、小さな木製の置物だ。

動物を模したもので、手のひらに収まるくらいの大きさ。村の子供たちにあげるつもりで作っている。壊れやすいものより、多少乱暴に扱っても大丈夫なほうがいい。


小刀で余分な部分を削り、紙やすりで表面を整えていく。

指先に伝わる木の感触が心地いい。


「……よし」


最後に目と口の位置を少しだけ彫り込むと、無表情だった木の塊が、なんとなく生き物らしく見えてきた。


「完成、っと」


思わず小さく息を吐く。

自分の手で形を作り上げるこの瞬間は、何度経験しても嫌いじゃない。


完成した木製の置物を籠に入れて、ボクは広場へ向かった。


すでに子供たちは走り回っていて、ボクの姿に気づくと一斉に集まってくる。


「あ、リオン!」

「今日はなに?」

「ほら、スライムの置物。落としても大丈夫なやつ」


 籠の中身を見た子供たちの目が輝く。


「すごい!」

「これ、木でできてる!」

「角は丸くしてあるけど、振り回したらダメだからね」


そう言うと、みんな真剣な顔でうなずいてから、嬉しそうに走っていった。


――こういう反応を見ると、作ってよかったなって思う。


広場の端では、大人たちが世間話をしている。今年の収穫の話、物の値段の話。

魔物の噂も出るけど、この村ではどこか遠い世界の話のようで、もはやマスコットみたいになっている。


「今日も平和だなぁ」


ボクがそう呟くと、隣にいた父が小さく笑った。


「その平和を守るのが、大人の仕事だ」


「はいはい。お疲れさま、村長さん」


午後は倉庫の修理を手伝った。

木材を削って、釘を打って、隙間を埋める。こういう作業は昔から得意だ。


「本当に器用だな、リオン」

「でしょ。ボク、木を触るの好きだし」


夕方、空がオレンジ色に染まるころ、ボクは家の前で立ち止まった。


変わらない日常。

少し退屈で、でも確かに温かい毎日。


――このときのボクは、まだ知らなかった。

この平和な日々が、もうすぐ終わることを。

初投稿ですやったね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ