第4話 さよなら、愛しの幽霊さん
その夜、ミカさんとマコが俺の部屋にやってきた。
「……やっぱり霊気を感じる。でも悪い霊ではないようだね」
ミカさんは手早く準備を始めた。
「え? ミカさんがやるの?」
「これでもあたしは神社の娘だぞ?」
「……そうだったんだ」
部屋に塩を撒き、お札を貼り、そしてミカさんが祝詞を唱え始める。
するといつものように幽霊が現れた。
マコ達には見えないようだが、俺にははっきりと見える。
幽霊は今まで見たことのない表情をしていた。
なんだか寂しそうで、でもどこか安堵したような表情をしていた。
「祓え給い、清め給え」
祝詞が続く中、幽霊の姿が徐々に薄くなっていく。
「あっ!」
思わず声が出そうになったが、マコの手が俺の腕を掴んだ。
「……大丈夫です」
その温かい手に励まされながら、俺は幽霊の最後の姿を見つめていた。
消える直前、幽霊が微かに微笑んだような気がした。
まるで『ありがとう』と言っているかのような気がした。
僕は心の中で女の幽霊に謝った。
僕は女の幽霊に失礼な事をいっぱいしたけど、そんな事よりも、ずっとツラい思いをしながらこの部屋を見ていたんだなと気付いた。
もっと早くこの霊を送ってあげれば良かったと思った。
そんな事を思いながら謝っていたら知らないうちに僕は涙を流して泣いていた。
そして僕の部屋に居た幽霊は、何も話す事もなく静かに消えていった。
「ふう、終わったよ」
「……ありがとうございました」
部屋から霊気が消えたのを俺も感じることができた。
同時になんだかもの凄く寂しい気持ちになった。
そして僕はマコやミカさんが居るのにもかかわらず、その場でずっと泣き続けた。
その時、二人の会話が聞こえて来た。
「あの顔とスタイルであんな格好だったら、男はみんな魅了されるわけだな」
「……悔しいけど、勝てる気がしません」
僕は二人も見えてたんだと思ったらなぜかもの凄く恥ずかしくなってさらに泣き続けた。
◆二人の新しい生活◆
お祓いから一週間も経つと体調は確実に良くなり、それから三ヶ月が経った。
それはそうだろう……だってただの寝不足だったのだから寝れば体調も戻る。
でも時々あの幽霊のことを思い出してしまう。
そんな俺を支えてくれたのがマコだった。
「体調はどうですか?」
「おかげさまですっかり良くなったよ」
「良かった!」
マコの笑顔は太陽のように明るくて、俺の心を温かくしてくれた。
「あの……マコ」
「はい?」
「ありがとう。君がいなかったら俺は……」
「もう! そんな他人行儀にしないでください!」
「そっかぁ、俺達付き合ってるんだったね」
「はい!」
そう照れながら答える俺を見て、マコは嬉しそうに笑っていた。
俺とマコの関係は順調に進展し、マコは俺の部屋に引っ越してきて同棲が始まった。
怒った時のマコは結構怖い。完全に俺は尻に敷かれている状態だった。
でも、そんなマコの世話焼きも愛おしく思えるし、生きている人と一緒にいる温かさを俺は心から実感していた。
これが本当の幸せなんだと実感した。
窓の外では月が静かに輝いている。
俺の部屋に居たあの幽霊も、空なのかあの世なのかは分からないが、笑って過ごしてくれていれば良いなと思った。
「なぁ マコ?」
「なに?」
「パンツ見せて!」
「変態!」
「『変なふるまい』と書いて変態と読むんです!」
時々だけど、あの幽霊が恋しくなる……。
(おしまい)




