第1話 家賃が安い理由は『下着姿の美人幽霊』でした
事故物件と幽霊をテーマにした少し変わったラブコメを書いてみました。楽しんでいただければ幸いです!
家賃が安いのには必ず理由がある。そんな世の中の当たり前のことを、俺は身をもって知ることになった。
職場から電車で一時間、築二十五年の古いワンルームのアパート。不動産屋の説明では『訳あり物件』とのことだったが、最後まで詳しいことは教えてくれなかった。もっとも、家賃が相場の半分以下なら文句は言えるはずもない。
「よし。これで荷物の搬入は終わりだな」
額に滲んだ汗を拭いながら、段ボールに占拠された六畳一間を見回した。ユニットバスのついた部屋は決して広いとは言えないが、一人で暮らすには十分だ。会社の給料だけで都心に住むのは厳しいし、多少の不便は我慢するしかなかった。
夜の十時を回った頃、俺は床に腰を下ろして、片付けの合間にビールを飲んでいた。新生活への不安と期待が入り混じった、どこか落ち着かない気分をアルコールで流し込む。
そろそろ寝ようかと電気を消したその瞬間、部屋を充満させていた空気が、まるで別の場所へと入れ替わったかのように冷たく変質した。
「え……?」
ふと視界の端に違和感を覚え、そちらに顔を向けた。部屋の隅に、一人の女性が佇んでいた。年は俺と同じくらいだろうか。茶色のショートヘアから覗く整った顔立ちは、焦点の合わない虚ろな瞳でどこか一点をじっと見つめている。
すらりとした体型。そしてなぜか下半身は下着一枚という姿だった。
「うわあああああ!」
心臓が跳ね上がり、俺は反射的に壁際まで後ずさった。しかし、女性は微動だにせず、俺の存在など意識にも留めていない様子だ。
震える視線を足元に落とすと、彼女の爪先は床から数センチほど浮き上がっている。
「ゆ、幽霊……?」
声を絞り出した刹那、女性の姿は霧が晴れるようにスッと掻き消えた。最初から誰もいなかったかのように、引っ越したばかりの部屋には重苦しい静寂が戻っていた。
「夢……だよな?」
ビールを飲みすぎたせいだと自分に言い聞かせ、俺は慌てて布団に潜り込んだ。それでも瞼を閉じれば、あの美しい姿が……いや、幽霊のパンツの残像が頭から離れなかった。
◆美人幽霊の観察開始◆
翌日から、彼女は毎晩のように現れるようになった。
当初は恐怖で震えていた俺だったが、数日が過ぎる頃には、彼女が何もしてこないことを理解し、次第に興味の方が勝ってきた。
幽霊は話すことも俺の声に反応することもない。まるでそこにいることすら、彼女自身も気づいていないかのようだった。だが、彼女は確実にそこに存在している。
俺は意を決して、まずは話しかけることから試してみた。
「えーっと……僕の声、聞こえますか?」
「…………」
返事はない。彼女はただ窓際に立ち尽くし、夜の景色を眺めている。
「あの……何か、僕の部屋に用でもあるんですか?」
「…………」
やはり無反応だった。
「もしかして、この部屋の先住民様ですか?」
「…………」
やはり無反応だが、観察を続ける中で俺は一つの重大な事実に気づいてしまった。
彼女の容姿のすべてが、俺の好みドストライクだということに気づいてしまった!
切れ長の目が印象的な美人さん。もちろんドストライクだ!
上は丈の短いシャツに下は純白のパンツ。もちろんドストライクだ!
上品で清楚な佇まいでありながら、どこか毒のようなセクシーさが漂っている。生前はさぞかし気品のある美人だったのだろうと、勝手な想像が膨らんだ。
見ちゃダメだと思いながらも、磁石に引き寄せられるように目が離せない。俺だって一人の健康な男子だ。こんな美人の幽霊が下着姿で現れたら、見るなと言う方が無理な話だった。
そんな俺の邪な心を見透かしたのだろうか。彼女がふと顔を巡らせ、その瞬間、俺と彼女の目が真っ向から合った。
「うわっ!」
俺は慌てて視線を逸らした。だが彼女は相変わらず無表情のまま、俺のことなど眼中にないといった様子で部屋を眺めていた。
布団の中からこっそりとその姿を観察し続けていたが、やがて彼女はいつものように、音もなく闇の中へ溶けるように消えていった。
最後まで読んでいただきありがとうございました! 下着姿の幽霊さんと、この後どうなっていくのか……。 もし少しでも「続きが気になる!」「面白い」と思っていただけたら、評価やブックマークをいただけると、執筆の励みになります!




