閑話三 マナ・リボルバーのただの自慢
細川のマナ・リボルバーは、鉄製のフレームを使用しているが、その外側まで鉄をむき出しにしているわけではない。それは単なる見た目以上の問題ではなく、今後多用し長い付き合いになるであろう銃に必要な、化学的な側面もあった。さらにはそれだけではなく、魔導体と魔法力回路の兼ね合いでも、やはりただの鉄の塊ではあれなかった。
完成品のマナ・リボルバーは、外見はどこか神々しく、黄金色に輝いている。これは豪華な見た目の方が敵にインパクトを与え、一瞬目を奪うことで隙を作るため──そんな理由ではもちろんない。
構造から言えばマナ・リボルバーは、鉄製のフレームの上に、アルミニウムの層でコーティングされている。さらにその上には真鍮(実銃では薬莢に利用される)をコーティングしている。神々しく黄金色に輝いて見えるのは、実は金を使用しているためではなく、この真鍮がコーティングされているからなのだ。
真鍮は別名を黄銅といい、銅に亜鉛を添加した物質だ。正確には細川が使用しているのはα黄銅で、銅と亜鉛を約七対三の割合で含む。胴と亜鉛の比が約六対四のβ黄銅が黄白色とされるのに対し、α黄銅はやや赤みを帯びている特徴がある。実銃の薬莢に使用されているのもα黄銅であり、これによりカートリッジ黄銅と呼ばれることもあるようだ。
真鍮は耐腐食性が高い物質として知られている。これは金属の表面が薄い酸化被膜を形成して内部を保護する性質を持つためで、不動態と呼ぶ。真鍮の層の下にアルミニウムの層をコーティングしているのも、アルミニウムが真鍮同様に不動態を形成するためで、完全に隙間をなくすことができれば、中に入っている鉄のフレームを酸化させず、長持ちさせることができるという仕組みだ。
銃に丈夫さを求めれば鉄は材料から外せないが、鉄は酸化しやすい。コーティングに悩んでいたときに天啓のように思いついたこの案に、細川は柄にもなく、踊り出しそうなほど興奮したという。
実は、マナ・リボルバーの外装は、真鍮だけではない。照準器には別の素材が使われており、細川が素早く狙いを定める際に、視線が迷わないようにする工夫を施していた。
こちらは金を使用した材質であり、フロントサイトは金とアルミニウムの合金であるパープルゴールドを、リアサイト後部には金と銅の合金であるレッドゴールドを。これらを使用することで、射撃時に視線が迷う回数は大幅に減少した。
ちなみにこれは本当にどうでも良いことだが、細川はこの銃について、『アルレーヌM22A1』という名称を秘かに付けている。それこそ誰かに聞かれれば、「お前は何を言っているんだ」と言われるようなことであるし、本当に誰にとっても心底どうでもいいであろうことなのだが。A1という部分が何を意味するのか、それは今後になればおのずと分かるだろう。
ただの自慢というか、拘りポイントの紹介みたいなものです。文句なら細川にお願いします。




