閑話二-2
思えば、始まりはかなり慌ただしかったと思う。
読んでいる小説がアニメ化され、オンライン配信されたそれを見ていたところ、俺はいきなり、なんかよくわからない空間に飛ばされた。
ふわふわとした無重力感。プールの中で水圧を消すことができたなら、きっとあんな感覚を得られるのだと思う。
単色の色調定まらないもやが、どこまでも続く空間。
直後現れたちっちゃい天使たちの手によって、俺はまた別の空間に放り込まれた。
そこにいたのは、ぽよんぽよんとした腹の、尊大な顔の風船魔人。
魔王様とか言われていたが、俺にとってそいつは魔人だ。風船みたいに丸っこい体をしているので、風船魔人である。間違っても、魔神という顔ではなかった。
どうやらあれは、人間ではないらしい。神になり損ねたなにか、というのが、正直な印象だった。
喋り方は、それはそれは顔に負けない尊大なやつだ。名前を確かめられたときは、正気を疑ってやったさ。だって、知ってて呼びつけたんだろ? あいつ多分、首はね飛ばしても死なないぜ。魔法使いの直感。
なんだかんだ、結局魔力使用者の立場にあずかって、本来の形とは少々異なるようだが、魔術魔法を行使するようになった。
触手だか蔓だか分からないが手を増やすことができるようになり(銀魔力という名前がついている)、火と電気を手の上で発生させる。これが、最初に覚えた魔術だった。今でこそそれがなんだと思うんだが、できたときは結構楽しかった──と思う。その後は高所恐怖症のくせに飛行魔術を覚えるだとか、原子の構造を書き換える魔術(物質操作魔術と呼んでいる)だとかを習得し、結果、暇つぶしが高じて仮想空間に屋敷が建った。最初は天使の休息場として建てたはずなんだけどね。
ちなみにこの屋敷、三二部屋をあるのだが、うち一〇部屋は魔法実験の影響で爆破され、現在使用不可能になっている。春休みにでも修繕しようか。
秋には異世界に出かけて精霊と契約を結んだ。このとき契約を交わした精霊の一体が、今俺の隣に寝転がっている狸の見た目をした大精霊。とてもそうは見えないが、これで集落一の実力を持つのだそうだ。人間でなくとも、見かけによらないということらしい。
その後はこたつを壊して魔法的に修理改造したり、雨の中傘もささずに買い物に出たり、多分平均とは微妙にずれた生活を続けている。
そしてそう、忘がたいのが、幽霊と雪女の姉妹だ。雨のなか傘もささずに買い物に、と書いたが、年末のある日、夕方に出かけたところ、一人の幽霊少女に出会った。あれやこれや、いろいろと未練を残して死んでしまったということだが、変なお坊さん方に狙われているというので、助けてやることにした。今は仮想空間の屋敷に匿って、ときどき一緒に散歩をしたり勉強を教えたりしている。
姉の雪女とはその日のうちに出会った。屋敷に向かう途中で誘拐犯に間違われたので訂正しつつ、なんだかんだと言ううちに契約を結び、こちらは毎日襲撃を繰り返される日々だ。彼女が俺に勝てたことは、まだ一度もない。
「これは没だな」
ペンを置き、俺は即座に呟いた。
「文章が頭悪い。何だこの気持ちの悪い……」
「うーん、そうでしょうか。細かいところを割愛したからかと思いますが、それを含めると、確かにちょっと字数オーバーしちゃいますね」
難しいものだ。これ、何を書いたらいいんだ?
「なにか実体験を元に、脚色を加えて創作してみるとか」
「何度かやったことあるが、ネットに出したら評価は散々だったぞ。もう二度とやらないからな」
「難しいものなんですねえ、文章を書くのって」
「長編小説がいかに苦労の末に書かれたものなのか、よく分かった」
やっぱり無理かもしれない。クラスメイトたちが喚くのも、道理というものだ。
こっちは出そうとも思いませんでした。そもそも当時思いついてなかったので。でも思いついていたとしても、細川同様却下だったでしょうね。無駄に完璧主義だったから。
それとこれは本文に一切関係ないんですが、丸々一ヶ月間一日二回投稿を(一日を除き)毎日欠かさなかった私を誰か誉めてください。




