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「ばいばーい。」

作者: 倉沢トモエ

 血のような夕焼け空。


 ばいばーい!


 帰り道。

 駅の近くに差しかかると、肩車をされた男の子が、出発した電車に向かって手を振っている。


 ばいばーい!


 いつまでも手を振っている。


 ばいばーい!


 電車が見えなくなっても、乗り降りする客の流れが途切れても、いつまでもいつまでも、手を振り、声を張り上げているのだった。


「私はただ、その坊やが何を見ているのかと、思っただけなのです」


 坊やが見上げている先には。


 駅舎の屋根。

 高架線。

 血のような夕焼け空。

 そのときは烏のように見えた、烏にしては大きすぎる黒い鳥。


「夕焼け空に夜の帳が降りるのはまことに一瞬のことで、私が見たものも、すぐに夜の暗さに紛れてしまったものですから。だからあれは烏であったのか、違うのか、ほんとうはわかりません」


 黒い鳥が、駅舎の屋根高くに飛んで行ったのだという。


「黒い鳥は、何かをつかみ、運んでいました」


 ゆらゆらとゆれて。

 コンビニの袋かなにか、そのようなものに見えました。


「しかしその一瞬だけ、やけにはっきりと〈それ〉は見えたのです」


 鳥の鉤爪にぶら下がってギラギラと二つ、光って見えた。


「見開かれ、血走った目玉でした」


 確かに、そう見えました。


 ばいばーい!


 私の後ろで坊やはまだ、手を振り叫んでいます。


「どんな親子だろうと、何の気なしに振り返りました」


 ばいばーい!


「肩車をしているその人には」


 これまた確かに首がなかった。


 だが、すべては夜にかき消され、街灯が駅前通りを照らす頃には鳥も親子もどこかへ見えなくなった。

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