閑話 かきかきおえかき
今日も暑い。
庭で魔法練習をしていた、かきとくり。休憩しようと、木陰に移った。
時折風が吹いて、少し涼しい。ふたりはしばし、毛皮を泳がせる。
「にゃお」
「みにゃー」
戸を開けっ放しにしているので、巣の中がよく見える。トバリとクリームが本を読んで、レオは…、棚に上って何かしている。
そういえば、今朝庭で見つけたと、花を持って帰っていた。確か名前は、
「みにゃにゃ、み」
アオツキクサ、だ。調べたら、昼にはしぼんでしまう花だと分かって、レオは少し落ち込んでいた。
気に入っていたようだから、飾ってみんなで楽しみたかったのだろう。かきは空を見上げた。もうすぐお昼だ。もしかしたら、とふたりで顔を見合わせて、レオの動きを見守る。
棚から降りたレオの様子は、明らかにしゅんとしていて。しぼんでしまったのだ。気付いたトバリとクリームが、元気づけるように寄り添う。瓶をもらって、水につけて、少しでも長持ちさせようと頑張っていたのだが。
「なうー……」
かきは庭を見渡して、咲いてるのはないかと探し回る。くりも、繁みに潜り込んで鼻を動かす。
しかし、同じ葉っぱを見つけはしたものの、今朝目にした小さな青はしぼんでしまっていた。明日になれば、また咲くかもしれない。でもきっとレオは、これがいい、と選んで持ってきてくれたに違いないのだ。だから同じアオツキクサでも、違うもの。
どうしよう、とふたりは悩む。花や薬草といったら、魔猫仲間のパクたち。
「にゃお」
「みにゃ」
ソラだ。ソラなら、また咲かせられる。
「みぃー…、」
でも、今は居ない。みんなで涼しい土地に移動している。帰るのはまだ先なので、難しいだろう。
他に何か、とふたりは考える。
そういえば、押し花にもしていた!……でも肝心の花はしぼんでしまっている。
何で早く思い出さなかったんだ!……かきとくりはごろごろ転がって悔しがる。
ごろんごろん転がった先に、枝を見付けた。いい感じの枝だ。かきは、にぎにぎと感触を確かめる。ついでに、剝き出しの地面に線を描く。
「……みにゃ!!」
それだ!と、くりが目を見開いた。
てててん、てててん。
妙なノック音に、シドは顔を上げた。時計を見れば、昼過ぎ。
下の方から音がするので、恐らくは。と、開ければやはり。かきとくりがちょこんと見上げていた。
「どうしたんだい。お腹空いたとか?」
ファスのおやつはもう無い。戻ってくるまではおあずけだ。
それは知っている筈だが、一応シドは訊いてみた。ふたりは首を横に振る。
「にゃおにゃ、なう」
「みにゃ、みにゃにゃあ」
「?欲しいものでもあるのかい?」
しきりに訴えてくるふたりを、とりあえず中に入れた。キョロキョロと何か探している。
「!なぉう!」
「ん?書類?……いや、紙が欲しいのか。ペンも」
「みにゃ!」
何度も頷くふたり。合っているようだ。けれど……。
「ここにあるのは、必要なものなんだ。流石にお前達でも渡せない」
シドの部屋には、基本必要なものしかない。管理しやすいようにだ。
かきとくりは、分かりやすく落ち込んだ。何をする気か、今まで欲しがらなかったものを希望している。シドは興味が沸いた。
「少し待っていなさい。動くんじゃないよ」
そう言い置いて数分後、シドは手持ちサイズの黒板を持って帰ってきた。
目をまんまるにするふたりに、チョークと一緒に渡す。
「前に研究員達が使っていたモノだけどね、最近じゃ使わなくなって余ってるんだ。これでいいなら。使い方は……、」
教わるふたりの目は、輝いていた。
「みみ?」
「………にゃ、」
何処かへ行っていたかきとくりが、やっと帰ってきた。何やら黒い板を持って。それからすぐに、板と向き合い、ごそごそと。一体何をしているのか。
気になったクリームが寄って行く。すぐに参加した。続いてトバリもそっと覗く。すぐにチョークを手に取った。
「にゃい……」
そんな仲間たちを背に、レオはしぼんだアオツキクサを見つめる。
キレイだと思った。朝日の中できらきらしていて、みんなと一緒に見たいと採ってきてしまったが、採らずにいた方が良かったのかも。その方が、もっとみんなと楽しめたのかも。
「にぃ……」
大事に育てて、パクたちにも見せられたらと思っていたのに。
水替えをしても、ダメかなぁ。レオはじぃと、青々としたままの葉っぱを眺める。
「にゃお!」
「みにゃにゃ!」
「みみみっ!ににー!」
「………にゃ!」
呼ばれて振り向けば、仲間たちが黒い板を立てて。そこには、少し歪な、けれど大きな青い花の絵が。
アオツキクサだ。レオは目をまんまるにさせ、しげしげと見つめる。今朝見付けた、アオツキクサにそっくりだ。
みんなの記憶を出し合って、こうして絵にしてくれたのだ。
レオはみんなを見渡す。これはしぼまないぞ、と胸を張って渡される。
「にゃいいぃぃぃ……!!」
レオは嬉しさの余り、ゴロゴロと喉を鳴らす。
それがよくよく分かった仲間たちも、一緒に喉を鳴らした。
……アオツキクサの絵は、棚に大事にちょこんと飾られている。
その横には、毎日水替えされている本物が。その枝先には、小さな小さな、白い根っこが出てきていた。
消えかけてたら、手直しされてます




