1. 時々、出会い
初めての投稿になります。
誤字脱字、お見苦しい部分もあるかもしれませんがよろしくお願いします。
魔猫は、魔界領でも最弱といわれる魔物である。
故に巣は人の世界に造るのが常であった。この魔猫たちも例に漏れず、人の町に程近い森に巣喰っていた。
乱暴な魔物もおらず、それなりに快適に暮らしていた、そんなある日。
小さな人の気配に気付いた魔猫たち、恐る恐る様子を見に行った。人は、怖いモノだ。
見付かれば弱い自分たちは狩られるか、捕まってどこかへ連れていかれてしまう。…捕まった後のことは考えたくはない。酷い目に遭わされるに決まっている。
繫みからそうっとのぞき込む。…子供が倒れていた。
身体中傷だらけ。血も出ている。それでも黒髪の子供はまだ生きて、けれど動けないようだ。
魔猫たちは、困った。
見捨てるのは簡単だ。でも血の匂いにつられて沢山の魔物が寄ってきたら、折角の巣が潰されてしまうかもしれない。話し合い、悩みつつ、とにかく手当てしてやろう…となった。争いごとは嫌いなのだ。
幸い、この森には薬草が多く自生しているし、どれが怪我に効くかは知っている。魔猫も怪我はしょっちゅうなのだ。
薬草を擦り潰し怪我した部分に貼り付ける。それだけだったが、子供にはよく効いたらしい。
意識を取り戻した子供は、自分が薬草まみれになっているのに驚き、それを魔猫たちがやったことにも驚いていたが、大騒ぎせず頭を下げてきた。
“ありがとう”
魔猫たちは目をまんまるにして、顔を見合わせた。御礼を言われるなんて、露程も考えていなかったから。
子供はファスというらしい。
見ての通り、捨てられたと。行く当てもないと困り果てていた。
助けない方がよかっただろうか。こんな小さな子供、すぐに魔物に喰われてしまう。魔猫たちはまた話し合った。
悪い子ではない。人は恐いモノだが、この子はイイコだ。だって御礼を言ってくれたし、魔物なのに怖がってない。でも心配はあるから、しばらく見張ればいい。
そう決めた魔猫たちはファスという子供を巣に案内した。
巣は、森の奥にある。ファスは、巣を見上げた。
「…ここが、きみたちのおうちなの?」
古い小屋。
以前使っていた人間は引っ越したのか、見付けた時は気配もなく荒れていた。
中は埃まみれ。家財道具はそのまま。数冊残された本は劣化が酷く読めもしない。魔猫たちはその小屋の一角を寝床にしていた。古びた暖炉。中に入ってみんなで丸くなればあったかいのだ。
「……だれも、こない?かってして、おこられないかな」
振り返れば、ファスは隅に立ち、小さい体を更に縮こませていた。紅い目は不安の色。
なんだか似ている。自分たちに。
「にゃああ」
来ないよ。誰も怒らないよ。
魔猫たちは放っておけなくて、体を使ってぐいぐい押し込んだ。そして目の前でくつろいでみせる。
しばらくためらっていたファス。その姿を眺めて、ようやく安心したのか、うとうとと船を漕ぎ始めた。