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第11話 パーティーでのダンジョン攻略は素晴らしそうです

レイモンドの衝撃的な言葉でその場が一瞬だけ凍りつく。


「今、なんと言ったんだ?」

「いや、あの……初めて見た時から可愛いな、と」


可怪しい。


僕もそうなのかも知れないが、夢の記憶があるせいだと思っていた。


エルフはこの世界では醜い存在だと思われている。


それはほんの一部の理解しがたい趣味の者を除いて……。


だが、そいつらだって、エルフを美しいものと思っているわけではないだろう。


「それは本気で言っているのか?」

「私だって、不思議なんですよ。今まで、そんなこと感じたこともないし……」


やっぱり、変だ。


とはいえ、これはいい変化だ。


レイモンドにエルフを受け入れてもらえるとなれば、仕事も一層捗るはずだ。


それに頼みごともしやすい。


「だったら、シーラの事を頼んでもいいな? 美少女と一緒にダンジョンなんて最高じゃないか」


自分なら、絶対断るような場面だけどね。


「分かり……ました。仕事と思って、そこは割り切ります。ただし、報酬の件、忘れないでくださいね!」

「分かっている。一日、金貨1枚でどうだ?」


あれ? 高すぎたか?


「アルヴィンさんはやっぱり最高な人だ! 是非、その仕事、お受けします!」

「ああ、頼む。ただし、シーラに手を出すなよ。ちゃんと、合意を得て……」


「分かってますよ‼ アルヴィンさんにだけは言われたくないですよ‼ ちゃっかり、美女を部屋に連れ込んだりして」

「いや、それは……」


……返す言葉もない。


確かに仕事と言っても、同棲というのは少しやり過ぎだったかも知れない。


周りから見れば、そう……見えるんだよな?


ポーションの軌道が乗ったら、考えないとな。


「シーラちゃん。そういう訳だから」

「分かった……あの……よろしくお願いします」


「可愛すぎるぅぅぅぅ‼」


大丈夫なのか、こいつ?


それからは毎日のようにレイモンドが迎えに来て、シーラちゃんと一緒にダンジョンに向かっていった。


話ではシーラちゃんの実力は本物で、下層でも問題がないらしい。


むしろ、レイモンドの方が足を引っ張る様だ。


「私は自信をなくしそうです……」


なぜか、二人、バーで肩を並べて、酒を飲んでいた。


レイモンドに暗い顔で「相談があるんですが」……なんて言われたからだ。


「しかし、今まで行けなかった下層まで行っているんだろ? ドロップ品の回収でそこそこ稼げているし、何の問題があるんだ?」


シーラは3日に2日はダンジョンに行く。


レイモンドの仕事もある関係で、毎日は無理なのだ。


それでもダンジョンに潜った日は、金貨数枚は稼いでくる。


毎日のように豪勢な食事を食べては、ノーラさんに怒られるのが日常になっていた。


「私は『狩人』なんです。シーラちゃんはスキル無しじゃないですか。どうして、私が守られないといけないんですか‼」


そんなことを言われてもなぁ……。


「シーラちゃんは感謝していたぞ。前に助けてもらったって……お前だって、役に立っているじゃないか」

「そりゃあ、シーラちゃんに近寄る敵を遠くから狙撃できるのが私のスキルの特徴ですから……でも、ほとんど、シーラちゃんがモンスターを倒しているんですよ?」


ふむ……。


僕は別のことを考えていた。


確かにシーラちゃんの身体能力は素晴らしいものなのだろう。


だが、この短期間でそこまでの下層に挑めるものなのだろうか?


「レイモンド、例のポーションの効果はどうだ?」

「それは抜群ですよ。ダンジョン探索者の間で広まったら、革命的な物と思いますよ」


そうか……。


実際に使用しても、特に問題はなさそうだな。


だが、まだまだ試作品段階だ。


劣化の速度や副作用についても、もっと調査が必要になるだろう。


それはともかく……。


ポーションだけの恩恵というだけでは、やはり説明できないだろうな。


やっぱり……。


「レイモンドがいるから、安心してシーラちゃんが戦えているんじゃないか? 僕にはそう聞こえるが?」

「そうなんですかねぇ……」


近接戦闘のシーラ。


そして、遠距離攻撃のレイモンド……。


その組み合わせによって、『勇者』や『賢者』などの攻撃特化型のスキルに匹敵するほどのダンジョン攻略度があるのではないだろうか?


いままで、考えたこともないことだ。


いわゆる……パーティーでのダンジョン攻略‼


どうして、今まで思いつかなかった?


いや、無理もないか。


ダンジョン探索者には『勇者』や『聖女』、『剣豪』なんかが多い。


どれもが優秀なスキルで、高額の年給を王国から給付されている。


そして、彼らを雇うとなると、尋常じゃない額を請求される。


それも王国が定めたルールだ。


高額の報酬と年給……その謳い文句で王国中に『勇者』が溢れている。


夢見る若者はそれですぐに騙されてしまう。


だが、現実は甘くない。


高額の報酬が足かせとなって、『勇者』を雇う人なんて誰もいない。


ダンジョン攻略だって、声を掛けたほうが雇い主だ。


誰も声を掛けないから、単独でダンジョンを攻略する。


それが当たり前だ。


仲良く一緒に?


そんな芸当が出来るほど、『勇者』達は周りを信頼していない。


周りよりも少しでも利益が欲しい。


だから、揉める……。


やっぱり、一人がいい、と言うことになる。


だが、目の前で愚痴っているレイモンドはどうだろう?


『狩人』はたしかに、攻撃に特化したスキルだ。


しかし、武器は弓しか使えず、接近戦では無力だ。


魔法だって使えない。


そんな存在に王国は戦力としてカウントしていない。


つまり、年給も支給されない。


そして、雇用費がとても安い……。


僕は最初、そこに目をつけて、仕事を依頼したのだが……。


「レイモンド、薬草エキスの生産に支障がなければ、これからもシーラちゃんと一緒にダンジョンに行ってくれないか?」

「それはまぁ……仕事ですから、行きますけど……でも、私は本当にこのままでいいのでしょうか?」


今はもっとデータが欲しい。


違うスキル持ちを加えると、どうなるか……。


その辺りも試してみたいものだ……。


格安でパーティーを作り、それでダンジョンが攻略できれば……。


ものすごい莫大な利益が転がり込むのではないか?


「アルヴィンさん、顔が怖いですよ」

「そうか?」


だが、まずはポーションの販路だな……。


弱小がポーションを売り出しても、潰されるのがオチ。


強いバックをつけなくてはな……。

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