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暖房がつかないから幼馴染とあたためあう

作者: 雲川ちら

「寒いね」


 冬も半ばあたりになってきてとにかく寒い。俺の幼馴染、三島加奈(みしまかな)のスマホを持っている手がぶるぶると震えていた。かくいう俺も手足が震えているのが確認できる。

 丸テーブルに座っている加奈の伸ばした足が俺の腹に乗っていてとても冷たい。

 

「なあ冷たいんだけど」

「いいじゃん別に」


 ちょっとイタズラをしてやろうと俺は加奈の足を掴む。そして足の裏を人差し指で優しく撫でた。加奈はびくっとしてくすぐったそうにしている。


「ねぇ。あはっ! やめてよっ! くすぐったいってば」

「足を乗せた罰だ」


 加奈は不満そうな顔をしてこちらを見ている。いや俺は悪くないだろ。足を乗せた加奈が悪い。


「じゃあ暖房付けてよ」


 加奈がそう言ったのは少なくとも3回以上だろう。そして俺は何回もこう言っている。

 

「さっきも言ったけど壊れた」

 

 昨日まで暖房ついていたのにいきなり付かなくなった。母が言うにはエアコンを修理に出さず新しいのを買うらしい。なので多分あと一週間くらいは寒さに耐えないといけない。

 

「じゃあこたつは?」

「なーい」

「ええー」


 加奈は残念がるがこたつがないことはそこまで珍しいことではないだろう。俺は少しでも体を温めるためリビングでホットミルクを作るため台所に行くことにした。


「どこ行くの?」

「ホットミルクを作りに行く。お前もいるか?」

「いいの? じゃあおねがい」


 俺は部屋を出た。台所の冷蔵庫から牛乳を取り出しレンジに入れる。一分半くらい温めて部屋に戻る。


「はい。作ってきたよ」

「ありがとう!」


 加奈にホットミルクを渡してから椅子に座った。ホットミルクを飲むと少し寒さが軽減する。最初はちびちび飲んでいるつもりだったがもうコップは空になっていた。


「もう一気に飲みすぎ」

「ゆっくり飲んだつもりだったんだがな」

「あたしのミルク飲む?」


 そう言った加奈はニヤニヤとした表情で俺の方を見ている。


「加奈のミルク? エッチだね」

「ちゃうわ! なんでそうなるの⁈」


 ニヤニヤと言っていたせいでそういうことかと思ったがどうも違ったようだ。

 

「ニヤニヤしてたからわざと言ってるのかと」

「それは間接キス恥ずかしがるかなと思って」


 加奈は恥ずかしそうにそんなことを言っている。幼馴染だしそんなこと考えたことがなかった。

 

「今更そんなん気にする仲じゃないだろ」

「……それもそうだね」


 加奈はどこか残念そうな顔をしている。


「ミルク貰っていいか?」

「いやあげないよ⁉」

 

 加奈は腕を組んで体の前を隠すようにしてそう言った。俺はその姿を見て恥ずかしくなる。


「違うって。牛乳だ」

「あーそっちね。どうぞ。でも全部飲まないでね」


 俺は加奈から差し出されたカップを手に取り二口ほど飲んでカップを置いた。残っているホットミルクは加奈が飲み切った。


「てかそろそろ帰ったら? 俺眠たいんだけど」

「今お昼だよ。ちゃんと寝てるの? だめだよ。冬休みだからって夜更かししたら」

「別に夜更かしはしてない。昼寝するだけだ」


 いや昨日は寝るの遅かったかもしれない。だが言うてもそこまでだ。


「そうだ!」

「どうした?」


 加奈は立ち上がり俺のベッドへ向かっていった。何かするつもりなんだろうか。

 ベッドに座った加奈はこちらに手招きしてくる。


「じゃあさ。子供の頃みたいに一緒に寝よ?」

「なんでだよ。お前は眠たくないんだろ」

「いいじゃん」


 ここでしょうもないことを話していたら寝られないため俺もベッドに行く。加奈は俺が近くに行くと布団に入った。


「勝手に入るなよ」

「今更だよ」

「それもそうだな」


 俺が布団に入ると加奈が抱き着いてきた。子供の頃もこんな感じに抱き着いてきたことを覚えている。

 

「お前小学生のころから全然成長してないな。どこがとは言わんが」

「うるさい! まだまだ成長の余地ありだよ!」

「へぇ。頑張れ」

「ちょっと何寝ようとしてるの?」


 目をつむっているとそう言われた。寝るために布団に入ったんだから当たり前だろと言おうかと思ったが面倒くさいのでやめた。


「ねぇなんか話してよ」

「これ子供の頃は考えていなかったけどあったかいな」

「そうだね。なんか色々変わってて不思議だよ」


 俺も不思議だ。どうして加奈といるとこんなにも胸が高鳴るのだろうか。俺は目を開けて加奈の方を見た。手を伸ばせば触れられる距離なのに出来ない。


「もう子供もじゃなくなった。変わってて当然だ」

「そーか、もう子供じゃないのか」


 加奈とは子供の頃、何度も一緒に寝たと思う。でもこのあたたかさは子供の頃にはなかった。俺の心臓が早鐘を打っているのも子供の頃にはなかった。今加奈はどういう気持ちなのか知りたい。


「好き」


 気づいたらそう口から出ていた。なるほど、やっとこの気持ちの正体が分かった。この他の誰にも思ったことがない気持ち。これが恋なのか。


「え? それほんとに言ってるの?」

「嘘なんてついてどうする」

「うれしい。あたしも好きだよ。君のことがずっと好きだった。言ってくれてありがとう」


 そう言われてさっきまで冷たかった体が熱を持っていて汗が出そうなほど熱い。

 

「あっつい。君、顔赤くなってるよ」

「加奈もだぞ」

「じゃあ両想いだし付き合う?」


 加奈は俺の目を見つめている。


「そうだな」


 俺は加奈に同じよう抱き着いてそう言った。


「これからよろしくね! あたしだけの彼氏として」


 加奈は耳元で囁いてくる。

 

「ああよろしく」


 そう言うと加奈は嬉しそうに俺を強く抱きしめてきた。同じように俺も強く抱きしめた。

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