第99話 『船のお宝』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第99話
『船のお宝』
「よく来た、諸君」
豪華客船アッフェット。その船の船内でワインを持ち、乗客に挨拶するコヨーテ。
「今日は私の誕生日。皆で存分に楽しもうじゃないか」
コヨーテは挨拶を終えると、ワインを片手に個別に挨拶に向かう。ワイングラスをぶつけ合って乾杯をする。
「おめでとう、コヨーテ……」
「ありがとう、ディッロ」
いくつかの知り合いに挨拶を終え、アルマジロの友人と乾杯をしたコヨーテ。
アルマジロのディッロは船内に飾られたある装飾品に目をやる。
「さっきから気になっていたんだが、あの銅像はなんだい?」
「ああ、あれはシークイーンだ。美しいだろう、自身の誕生祝いに5億ユーロで買ったのさ」
「ほほぉ……。確かに君に似合う美しさだ」
ディッロはワインを片手に銅像に近づく。イルカの銅像で、手には杖を持っている。
「……あまり近づかない方がいい」
ディッロを追ってコヨーテがやってくる。
「数日前、ある動物から手紙が届いてね」
コヨーテは白いスーツの中から自慢げにある予告状を取り出した。
「こ、コヨーテ!? その予告状は!!」
「そう、あの大怪盗イタッチからの予告状だ。ふ、しかし、イダイもこの予告状を出したのは失敗だったようだな……」
コヨーテは自慢げに予告状を銅像の中に投げる。すると、銅像の下にある床が開き、そこから銃のような機械が顔を出した。
そしてビームを放つと、手紙を焼き消してしまった。
「イタッチであってもこの装置を突破することは出来まい……」
フフフと笑い始めるコヨーテ。そんな時、突然船内の照明が落ちた。
「なんだ、何が起きたんだ!!」
しばらく経ち、電気が復旧して明るくなる。すると、肝斑につながる扉の前に赤いマントを羽織ったイタチが立っていた。
「来たか、イタッチ……」
コヨーテはイタッチの登場に喜び、自慢の装置を紹介しようとする。だが、イタッチはその紹介を聞かず、
「もうお宝はもらったんでな、その報告に来た」
「なんだと!? 銅像はまだ俺の後ろに!!」
コヨーテは後ろに銅像があるのを確認する。銅像があることにホッとしたコヨーテだった。が、しかし、
イタッチは指を鳴らすと、銅像は折り紙に変化して無くなってしまった。
「お宝は頂いた。ではさらばだ!!」
お宝が消えて動揺するコヨーテ。そんな中、イタッチは扉を開けて甲板に出ていく。
「追え……追って取り返すんだ!!」
落ち込んでいたコヨーテだが、すぐに近くにいた警備員に命令を出し、イダイを追わせた。
警備員はイタッチを追って甲板に出たが、イタッチは船の後方に移動しており、海に向かって飛んだ。
「なに!?」
警備員はイタッチを追って海に飛び込もうとする。しかし、イタッチは海に飛び込んだのではなく、船の後ろにつけていたボートに乗り込んだだけだった。
「出せ、ダッチ」
ボートを操縦しているダッチは、イタッチの指示に従ってボートを船から離す。警備員達は船から飛んでボートに飛び乗ろうとするが、ボートの発進の方が早く、海に落ちて逃げられてしまった。
ボートが海を進む中、ダッチはイタッチに尋ねる。
「なぁ、どうやってお宝を折り紙に変えたんだ?」
「お宝は船に積まれる時にすでに盗んでたんだ。船には折り紙で作った偽物を残してな」
「だから、お宝が折り紙になったのか」