第82話 『ネズミ将軍』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第82話
『ネズミ将軍』
「チュ〜チュチュチュ。泥棒でありながら、民衆のヒーロー」
二足歩行のネズミはマントを揺らし、背後にいる二足歩行のドーベルマンを仲間に紹介する。
「彼はドーベルン。何メートル先の匂いも嗅ぎ分ける嗅覚と、鋭い爪で多くのヒーローを葬って来た」
ドーベルンはネズミに紹介されて、頭を下げて仲間達に挨拶をする。
「よろしくです」
仲間達はドーベルンに拍手を送る。
「さぁ、ドーベルンよ。今日の標的はイタッチだ。奴を仕留め、我々の恐ろしさを人々に知らしめるのだ!!」
「はい、了解です!!」
買い物のついでに喫茶店の修復状況を確認するため、少し遠回りをしながらアパートを目指す。
「チュチュチュ〜、お前がイタッチだな」
「ん?」
喫茶店を少し過ぎたところで、後ろから話しかけられる。後ろを見るとそこにはネズミの将軍と、ドーベルマンがいた。
「いえ、私はイタチですよ」
「え?」
違うと言われ、動揺して目をキョロキョロさせる二人。
「チュ……でも、このドーベルンがイタッチの匂いだって言ってるんです」
「はい! はいはい!! そうなんです。あなたからはイタッチの匂いがします」
イタチは頭を掻き、困った顔をする。
「イタッチの匂いと私の匂いが……。何かの間違えでは?」
「いえ、これを見てください!!」
ドーベルンが取り出したのは赤い布切れ。
「これはイタッチのマントの切れ端です。この前、イタッチが現れたっていう美術館に落ちてたんです」
「あ、それ……。私のですね」
「え!?」
イタチは証明するように、赤いハンカチを取り出した。
「ほら、同じものでしょ」
「ほ、本当だ……」
ドーベルンはイタチに赤い布を返す。そしてネズミと並ぶと深々く頭を下げた。
「人違いだったみたいで、ごめんなさい!!」
「いえいえ……。では、私はこれで」
イタチ違いだと分かり、ネズミ達はイタチと別れる。
「チュ〜、人違いだった」
「ドンマイです。次頑張りましょ!!」
ネズミと別れたイタチは折り紙で作ったハンカチを折り紙に戻す。
「なんだったんだ。アイツら……。俺を狙ってたのか……。変な奴らにも狙われるようになったんだな」
イタチはネズミ達のことを思い出しながら、散歩を続けた。
「ただいま」
イタチがアパートに着くと、コタツにアンとダッチが足を入れて、トランプをやっていた。
「なんだ、お前達帰ってたのか」
「イタチさん、お帰りなさいです」
イタチは手洗いをして、買って来たものを収納する。
「んで、ダッチはなんで自分の部屋に帰らないんだ」
「寒いしよ。今日はこっちで飯食おうとな。手伝うからよ」