第57話 『人間の悪党』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第57話
『人間の悪党』
カバは片手で一人ずつ、イタッチとダッチを投げ飛ばす。
動物人間の一人を軽々しく投げ飛ばし、イタッチとダッチは勢いよく地下室の壁に背をぶつけた。
「大丈夫か? ダッチ」
「ああ、だが、なんて馬鹿力だ……それに」
カバの身体から無数の目玉が飛び出している。あれで左右から来る攻撃を見て受け止めたのだろう。
「気持ち悪いなぁ」
ダッチはカバの見た目を気味悪がる。
「イタッチ、あれをどう突破する?」
「目玉がいっぱいあるってことは、視覚に頼ってるってことだ。なら、それを使えなくすれば良い」
「だが、そしたら俺たちも……」
「そうだな。だが、お前ならやれるはずだ。ダッチ」
イタッチはダッチに折り紙で作った剣を投げ渡し、ダッチを二刀流にする。
「…………分かった。やれ」
最初は戸惑っていたダッチだが、武器を受け取ると覚悟を決めて両手に持つ武器を構えた。
イタッチは折り紙で爆弾を作り出すと、
「行くぞ」
爆弾を地面に叩きつけて、地下室を煙で覆った。
「煙幕……。どんな手段があるのか知らないが、悪魔であるこの俺に勝てるものか」
カバはさらに目の数を増やして、近づいてきたものをすぐに確認できるようにする。
煙で囲まれた空間。カバの近づいてくる折り紙の剣を視界の端に捉える。
カバは剣を掴み、その剣を持ち主であったウサギを攻撃しようとする。だが、剣の先にはウサギはいなかった。
「いない……まさか…………!?」
剣を受け止めたカバの背後にダッチが現れる。そして刀を振り下ろして、カバを切り倒した。
「ぐっ!? 剣は囮だと!?」
声からカバを倒したと判断したイタッチは、折り紙で掃除機を作り出すと、空中にある煙幕を掃除機で吸い上げて煙を無くした。
カバはショックを受けた様子で、地面に手をつく。
「なぜ、煙の中俺の居場所が分かった」
ダッチは質問に答えるように自身の細長い耳を触る。
「俺は耳が良いんだ。まぁ、普段はこの刀のせいで耳栓してるんだけどな」
「そんな特技が……。仕方がない。これ以上力を浪費するのは得策ではないか。一度戻って力を蓄えるとしよう」
悪魔は身体を小さくすると、落ちているリングの円の中に入る。そして姿を消してしまった。
「いなくなったか」
ダッチはリングを拾い上げるが、中央の穴は普通の穴であり、悪魔のいる気配はない。
「どうする、こいつを盗むのか? またアイツが出てくるじゃないか」
「その可能性はあるな。だが、その時はまた返り討ちにすれば良いだけのことだ」
お宝を盗み出し、イタッチ達は姿を消した。