第54話 『デーモンリング』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第54話
『デーモンリング』
予告の時間になるまで、イタッチとダッチは会場の向かいにあるビルで缶コーヒーを飲んでいた。
「今回のお宝。あんな噂があるのに、かなりの人が見にくるんだな」
屋上から下の客を見下ろしながら、ダッチはイタッチに話しかける。
「逆にそれが好きできてる客かもな」
「物好きもいるんだな……」
ダッチは缶コーヒーを持ちながら、手すりに寄りかかる。
「なぁ、イタッチ」
「ん?」
「お前はなんで怪盗なんてやってるんだ。お前の実力ならどんなことをやっても成功するだろ。それなのにこんなリスクを犯して、お宝も倉庫に保管してる。何が目的なんだ」
イタッチは缶コーヒーの飲み干して、夜空を見上げた。
空には星々がそれぞれの光を放ち、真っ暗なキャンパスを彩っている。
そんな夜空に手を伸ばしたイタッチは、
「そうだな。世界を変えてみたい。そう思ったからかな」
「世界を変える? 怪盗がか、政治家とかになった方が良いんじゃないか」
「そういうことじゃないんだよ」
時計台を見て時間を確認したイタッチは、ダッチに背を向ける。
「よし、そろそろ行くぞ」
「もう行くのか」
「悪魔の門だ。余裕を持って動いて、損はないだろ」
階段の方へ向かうイタッチ。ダッチも急いでコーヒーの飲み干して、イタッチを追って行った。
イタッチとダッチは折り紙で警備員に変装して、会場への侵入を試みる。
「お疲れ様です〜」
二人は入り口で警備している警備員にお辞儀をしながら中に入る。しかし、
「待て!」
後ろから呼び止められた。イタッチとダッチはゆっくりと振り向くと、声をかけてきた人物はフクロウ警部だった。
フクロウ警部はイタッチに近づくと、背中に手を伸ばす。そして、
「背中にゴミがついてましたよ」
ゴミを取ってくれた。
「あ、ありがとうございます〜。では私どもはこれで……」
礼を言ってどうにかこの場は切り抜ける。
流石にヒヤッとしたのか。警備員がいないところで、イタッチは汗を拭った。
「ちょっとビビったぜ」
汗を拭くイタッチは軽くダッチが笑う。
「あれはビビったな。フクロウ警部のやつ、なかなか感が良いんじゃないか」
「あいつは昔からそういうところがあるからな。ま、どうにかなったんだ。先を急ごう」
二人はエレベーターの前に着くと、アンに事前に作ってもらった偽のセキュリティーカードで、エレベーターを起動させる。
そしてエレベーターに乗り込んで、地下二階へと向かった。
「なんで地下なんだ。展覧会の会場は上の階だろ」
「展示はしているが映像越しだ。本物は地下に保管されていて、その映像を会場で上映してるんだ」