第39話 『劇』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第39話
『劇』
サソリは地面に倒れるヤモリを蹴り飛ばす。
「俺はコイツに焼かれかけた。だが、コイツはその罪を背負うことなく、世界に糞をばら撒きまくっている! ……なぁ、覚えているよなぁ、イタッチ……」
時は10年ほど前……。イタッチは虹の欠片というお宝を盗むため、ある会社ビルに潜入していた。
そこはいくつもの黒い噂の絶えない会社。メディアを操作し、政治家と繋がり、法律の穴を抜けて違法なものを売り捌く。
イタッチが警備員に変装していると、会社の廊下で騒ぎが起きていた。
それは社長であるヤモリと、三人の警官。
フクロウとゴリラ、サソリの警官がヤモリの社長に質問をする。
しかし、社長は適当に質問をはぐらかし、警官から離れようとする。
ゴリラの警官は社長の腕を掴み引っ張るが、何人もの警備員が社長を守るように割って入り、止められてしまった。
「社長はこれから大事な会議なんです」
「時間は守ってもらいますよ」
結局遮られて社長に逃げられてしまった。警備員達はちょうどその場にやってきた警備員に警察をビルの外まで案内するように頼む。
イタッチは三人の警官を連れて、ビルの外への案内を始めた。
「社長に何かあったんですか?」
警備員に変装したイタッチが警官に聞く。すると、フクロウの警官が答えた。
「ヤモリ社長が武器の密入をしている情報を掴んだんだ。しかし、警視庁からの調査の許可が降りなくて」
「独断できたんですか」
ゴリラの警官は拳を握りしめると、壁を殴る。
「なんで上は許可しないんだ!! あいつは絶対黒だろ!!」
悔しそうなゴリラ。ゴリラの手は壁を殴ったことで赤くなっている。
警官達が掴んだヤモリの情報。それはイタッチも入手していた。
ヤモリが外国から仕入れた武器を、国内の暴力団に流している。警官達の調査の許可が降りなかったのは、警察組織の上にも繋がりを持っている人物がいるのだろう。
イタッチは警官達にある提案をする。
「私もここの警備員として働いておりますが、社長の悪行を許しているわけではありません……」
イタッチは三人の前に出ると、目を瞑った。
「あれ、皆さんどこに行きましたか? あーれー?」
そしてムカデに依頼して作ったセキュリティカードをわざと落として見せた。
「セキュリティカードも落として、皆さんを見失ってしまったー、このままでは上司に怒られるー」
警備員の不思議な動きに警官達は戸惑うが、三人顔を合わせて察した。
サソリの警官はセキュリティカードを拾うと、二人を連れて出口の反対側へと走り出した。
「行ったか……。さて俺もいるか」