第31話 『フクロウ警部』
怪盗イタッチ大作戦!!
著者:ピラフドリア
第31話
『フクロウ警部』
世界一の怪盗イタッチ。今日もまたお宝を求めて夜を駆ける。
「フクロウ警部!!」
フクロウ警部の元に猫の警官がやって来る。
「ネコ刑事どうした?」
「こちらを……」
ネコ刑事はフクロウ警部にある紙を渡した。
「これはイタッチからの予告状!?」
フクロウ警部は部下を連れて、予告状を送られたという本人の屋敷に向かった。
「あなたがイタッチから予告状を送られたというトイプーさんですね」
モフモフのコートを羽織ったトイプードルが、今回イタッチからの予告状を受け取ったという被害者だ。
「そうなのであーる。私のお宝であるトイプー像を盗むと言ってきたのであーる」
トイプードルはフクロウ警部を見れて窓から庭を見る。庭には巨大なトイプードルの銅像が置かれていた。
「あの銅像を盗むと……」
「そうなのであーる。あの銅像の両眼には数百万するダイヤを埋め込んであるであーる。イタッチの狙いはそれであーる。君達警察には銅像を守ってほしいであーる」
「お任せください。必ずやイタッチから銅像をお守りしましょう!!」
胸を張って答えるフクロウ警部。しかし、そんなフクロウ警部をトイプードルは疑いの目で
「あまり期待はしてないけど。せいぜい頑張るであーるよ」
トイプードルとの会話を終えたフクロウ警部は、部屋から出て部下達の元に戻った。
戻ると早速ネコ刑事が話しかけて来る。
「フクロウ警部。警備についてですけど、銅像が狙われているというよりも、あの目の宝石が狙われてるんですよね。一時的に取り出して安全なところで保管するのはダメなんですか?」
「それはすでに提案してある。だが、トイプーさんは威厳が大事だと却下されてしまった」
「金持ちの考え方は分かりませんね」
フクロウ警部は大いに笑う。
「そうだな。だが、市民に寄り添い、正義を守るのが俺達警察の仕事だ。どんな無茶な仕事だとしても、やってやろうじゃないか」
日も隠れ、月明かりが屋敷を照らす。
「もうすぐ予告の時間ですね」
ネコ刑事が銅像の前で見張りを行うフクロウ警部に缶コーヒーを持ってやって来る。
缶コーヒーをフクロウ警部に渡す。
「すまないな……」
見張りの数は20人。銅像を囲む様に10人の警備員を配置し、残りは屋敷の巡回をさせている。
フクロウ警部は受け取った缶コーヒーの蓋に手をかけて開けようとする。
しかし、開ける前に手を止めた。
「ネコ刑事……。今回のトイプーさんはおかしいと言ってたよな」
「そうな話しましたっけ、警部……?」
首を傾げるネコ刑事。そんなネコ刑事を無視してフクロウ警部は話を続ける。
「トイプーさんは警備会社の社長だ。だが、自分の会社の職員は使わずに、警察だけを頼った。それはどうしてなのか……」
「…………」
フクロウ警部はネコ刑事に渡された缶コーヒーを遠くに投げた。
すると缶コーヒーから煙が漏れて煙幕になった。
「お前、ネコ刑事じゃないな。何者だ!!」
ネコ刑事に化けていた人物は、何かを脱ぐ。するとその正体は!!
「イタッチ!! やはり来たか」
「よく見破った……。と言いたいところだが。さっきの話はどういうことだ?」
「言った通り。全てはトイプーさんの罠」
イタッチは溜息を吐きながら頭を掻く。
「出した覚えのない予告状。例え偽物だとしても、俺が逃げたと言われるのが嫌だから来てみれば……」
イタッチ達のいる場所に強い光が当てられる。フクロウ警部の部下達はイタッチの正体が分かるとイタッチを囲んでいたが、その光に目が眩む。
ライトアップされたのは屋敷の屋上から、庭を照らす巨大なライトだ。
そして窓からトイプードルが顔を出した。
「警察が捕まえられない犯人を、私の会社員が捕まえる。その計画を見破るとは残念であーるよ、フクロウくん」
「ネコ刑事の助言があったからな。それで俺達はどうしたら良いんですかな?」
「どっちにしろ関係ないのであーる。その宝は盗ませない。警察も社員も全力で捕まえるのであーる!」
フクロウ警部の部下が一斉にイタッチに飛びかかる。イタッチは警察の山に踏み潰されたかと思ったが……。
「折り紙……偽物か」
すでにそのイタッチは折り紙の入れ替わっていた。
フクロウ警部が銅像を見るとイタッチが銅像をよじ登っていた。
「あ!! 待て!! イタッチ!!」
フクロウ警部もイタッチを追って銅像を登る。その様子を見ながらトイプードルは社員達に命令する。
「お前達も追いかけるのであーる!!」
イタッチを追って大量の人間が銅像にしがみついた。
巨大な銅像を蟻の大群のように登る。
イタッチが銅像の顔をたどり着き、お宝を手に入れる。
だが、手に入れたと同時にイタッチの足をフクロウ警部が掴んだ。
「にーがーすーかー!!!!」
「フクロウ警部、根性あるなぁ」
「お前は俺が捕まえるんだぁ!!」
フクロウ警部がイタッチを引っ張って引き摺り下ろそうとするが、銅像が傾き始める。
「まさか、重量オーバーか!?」
上る人間の重さに耐えかねて銅像が倒れはじめた。
「こいつはまずい……」
イタッチは折り紙でグライダーを作ると、背中につけていつでも飛び立てる状態になる。だが、フクロウ警部に足を掴まれているため、まだ飛べない。
しかし、フクロウ警部はイタッチの足から手を離した。
「みんな逃げろ、銅像が倒れるぞ」
そしてイタッチを放置して下にいる部下や警備会社の社員達に叫んだ。
急いで銅像から離れようとする人達。だが、
「このままじゃ間に合わない」
銅像が倒れれば、登っていた人たちや下にいる人は下敷きになってしまう。
フクロウ警部が逃げるように叫ぶ中、屋敷の入り口からフクロウ警部を呼ぶ声が聞こえた。
「フクロウ警部、これを!!」
「ネコ刑事!!」
入り口から現れたネコ刑事はフクロウ警部に向けてあるものを投げつけた。キャッチしたフクロウ警部の手には少し大きめの銃が手に入る。
「試作品のやつか……。だが、やるしかないな」
フクロウ警部はそれでまずは銅像に撃ち、次に屋敷に向かって発砲する。だが、その銃から撃たれた弾は普通の弾ではない。
何発か撃ち終えると、銅像は倒れずに止まった。
「……鎖?」
銃から撃ち出されていたのは鎖だった。まず銅像に鎖を撃ち、その反対側の鎖を撃ち込むことで銅像を支えることに成功したのだ。
「た、助かったぁ」
下でホッとしている逃げ遅れた人たちだが、フクロウ警部はその人達に早く逃げるように促す。
「一時的に支えてるだけだ。また倒れる!! 急いで逃げろ」
フクロウ警部に従って離れている人たち。そして全員逃げられたことを確認してから、フクロウ警部も銅像から降りようとする。
だが、
「おおおおっ!?」
フクロウ警部が残っているというのに銅像が傾き始める。
「フクロウ警部!! 急いでください!!」
下は部下達が待っている。フクロウ警部は一度上を見て、
「イタッチは……いないよな。騒ぎの間に逃げたか……」
それから降りようとする。だが、フクロウ警部が撃った鎖が重さに耐えきれずに切れていく。
鎖で倒れる速度を抑えていたため、一気に銅像が崩れ出す。
「フクロウ警部!!」
「落ちるぅーーー!!!!」
フクロウ警部は銅像から振り下ろされて、地面に落下する。
「うわぁぁっ!?」
そんなフクロウ警部を空から滑空してきた、イタッチが受け止めた。
グライダーで滑空してそのままフクロウ警部をキャッチすると、銅像から離れたところで地面に下ろすと、イタッチは空へ飛んで逃げていった。
「フクロウ警部、無事でしたか!!」
フクロウ警部に部下や救われた社員達が集まって来る。
「ああ、だが、また逃げられたな……」
喫茶店で新聞を読んでいたウサギは店主のイタチに話しかける。
「なぁ、あの警部。意外とやるんだな」
その新聞の記事にはある屋敷での事故が書かれていた。
巨大な銅像の崩落。しかし、それによる被害はなく。怪我人は誰一人出ることはなかった。
屋敷の主人はその被害を最小限に減らした二人の刑事に賞を与え、今後の活動を支援することを表明したらしい。
「それはそうだろ。あいつは俺の天敵だからな」